カゼには葛根湯? ①
(2025/01/25更新)
「カゼに葛根湯」「漢方と言えば葛根湯」そんなイメージが根強くあると思います。
私も大学で最初に学んだ漢方は葛根湯ですし、葛根湯を飲めばカゼが治ると思っていました。
しかし、漢方を勉強していくと、葛根湯は発汗解表薬というものの一つで、
カゼの初期にうまく発汗できなければすばやくカゼを治すことができない
ということが分かってきました。
漢方では発汗療法というものがあり、たとえ発熱があっても寒気があれば
体の表面を温める作用のある薬物で体温を上げて、発汗を促して病気を治していきます。

発病し、体温が上昇し始めるとⓐ~ⓑの間では寒気や頭痛などの表証がありますが、汗はまだ出ません。
ⓑまでくるといくら体を温めても、もうそれ以上は体温が上がらなくなり、
寒気はなくなり、熱いと感じたり、発汗が始まります。
このⓐ~ⓑの間でしっかり体を温めることで、
寒気の期間を短くして速くⓑ点の体温まで上げることができ、汗をかくことができます
この場合の汗のかき方は、布団を覆ってしばらく温めて、体中から汗がジトッと汗ばむくらいがよいです。
下着を2~3回変える程度と言った方がわかりやすいでしょうか。
(流れるほど発汗してしまっては逆効果になりますのでご注意ください。)
この発汗状態を4~6時間くらい続けると、頭痛などの表証もなくなり熱も下がり、病が治っていきます。
また、発汗療法ですので
「葛根湯のエキスを1回1包 1日3回 食前または食間に」という服用ではなく
温服して布団をかぶってしっかり体を温めながら、
一服で汗が出て病気がよくなると、一服だけでもうそれでよいです。
必ず一日分全部を飲まなければいけないわけではない。
ただ、汗のない時は服用間隔を短くし、汗が出るまで服用していくことが大切になります。
病を治すには西洋医学も漢方もいいところ取りをすればよいと私は思います。
ではよりよい治療をするためにはどうすればいいか。
山本巌先生は
「処方を構成する生薬の薬効を知り、処方になった理由を知れば漢方を使いこなすことができる。
生薬のどの薬効の成分が、どう配合されているかを考えなければならない。」と言われています。
今回の例でいえば葛根湯を盲目的に使うのではなく、一つ一つの生薬を知らなければいけない。
今回はカゼに対する発汗療法についてご紹介しましたが、
次回は葛根湯を構成する生薬について見ていきましょう。
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カゼには葛根湯? ②
(2025/01/25更新)
今回は、葛根湯の中味とカゼに対する誠芳園のおすすめ処方を確認していきたいと思います。
早速ですが、葛根湯がどんな生薬で構成されているかを見てみます。
葛根湯は、葛根 麻黄 桂枝 芍薬 甘草 大棗 生姜 の7種類からできています。
麻黄 桂枝 ・・・・・・発汗解熱作用、鎮痛作用
生姜 ・・・・・・・・・発汗解熱作用
葛根 芍薬 甘草 ・・・鎮痛・鎮痙作用(筋肉の緊張を緩める)
生姜 大棗 甘草 ・・・健胃作用
|
こうしてみると、カゼの症状でよくある咳やタンに対する生薬が入っていないことがわかりますね。
成分の一つの麻黄は、大きいくくりでいうと咳止め薬ですが、正しくは鎮痙薬で気管支を拡げる薬です。
また、温める生薬の組み合わせなので寒気がない場合には使いにくい。
さらに麻黄は、胃に負担になることもあるので、食欲がない場合もできれば避けたい。
交感神経の興奮作用もあるためバセドウ病の方にも相性がよくないです。
そうすると、「カゼには葛根湯・・・?」となってきませんか?
そこで一般的なカゼに誠芳園でオススメしているのは参蘇飲(ジンソイン)です。
同じ様に参蘇飲の構成生薬を見ます。
参蘇飲は、紫蘇葉 前胡 葛根 半夏 桔梗 枳殻 木香 陳皮 茯苓 人参 甘草 生姜 大棗
の13種類からできています。
紫蘇葉 陳皮 葛根 生姜 ・・・・・・・・解表作用
半夏 前胡 ・・・・・・・・・・・・・・・鎮咳作用、ムカムカを抑える
桔梗 枳殻 ・・・・・・・・・・・・・・・去痰作用
陳皮 枳殻 人参 木香 生姜 大棗 ・・・健胃作用
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この薬は1年中を通して普通のカゼに使うために作られたものです。
山本巌流第三医学では普通のカゼには参蘇飲、胃腸型のカゼには藿香正気散が第一選択薬になります。
半夏と前胡で咳を抑えて、桔梗・枳殻でタンを抑えて、
紫蘇葉 陳皮 葛根 生姜で発熱や頭痛、肩こり、筋肉痛、関節痛などに対応しています。
葛根・前胡は胃にこたえる場合がありますが、
陳皮・枳殻・人参・生姜・大棗・甘草・木香などの胃腸薬も入っているので
胃腸を傷つけずに、むしろ状態を良くしてくれます。食欲もでます。
妊娠中でも安心して使えるカゼ薬です。
もちろん他の症状があれば
煎じ薬では生薬を加減したり、エキス剤では合方して使っていきます。
参蘇飲については錠剤タイプもありますので使いやすいのも特徴です。
「カゼには葛根湯」から「カゼには参蘇飲でしょ!」と広がればいいなと思っております。
もちろん保温と安静は大切です。
今、いろんなカゼやインフルエンザが大流行していますが、皆様すこやかにお過ごしください。
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甘草はどんな生薬?①
(2025/02/15更新)
今回は多くの漢方処方に含まれる甘草について書いてみます。
甘草は、漢方薬だけでなく医薬品(グリチルリチン製剤)、食品(醤油や味噌などの発酵食品)、
化粧品など、私たちの生活の中で広く利用されている生薬です。
青森県民おなじみの焼き肉のたれ「スタミナ源たれ」にもしっかり入っています。
その甘みや健康効果から、古くから重宝されています。
甘草はマメ科の植物で、薬用にはその根や地下茎が使われています。
砂糖の約50倍の甘みがあるというのですから驚きですよね。
早速、今回も生薬の『薬効を知る』をテーマに、甘草の効果を書き出してみます。
◎甘草の効能・効果
①胃腸の働きを良くし、体の元気を益す
気力や食欲が少ない、下痢しやすい、元気のない者に人参、白朮、茯苓などを配合して用います。
この場合には炙甘草を用いると効果がよいといわれます。
※炙甘草は、切断した甘草を鍋に入れ、数分間加熱(炒る)したもので、
(しみこむ程度のハチミツと少量の水を加えることもあります)
気力回復・食欲増進・鎮静効果が発現し、心悸亢進、不整脈などの症状に用います。
②心悸亢進を鎮める、潤燥・鎮静作用
発汗過多あるいはエネルギー代謝亢進などの原因で体内水分量が減少して
心悸亢進、脈結代(=急に脈が飛ぶ不整脈)を起こしたときに使用します。
人参、麦門冬、地黄、桂枝と併用 例)炙甘草湯
また大棗などと配合してヒステリー状態の神経症状を緩和します。大棗、小麦と併用 例)甘麦大棗湯
③筋肉の痙攣や痛みを止める
消化管のれん縮性疼痛、胆石症・尿路結石症などの疝痛発作や骨格筋の痙れんに用います。
芍薬と併用 例)芍薬甘草湯
④咽喉の腫痛、瘡瘍の腫脹などに用いる‥‥生甘草を用いる
甘草は生で用いるとよく熱を下し化膿を抑えるため、
金銀花、連翹、蒲公英などの清熱解毒の薬と配合して使用する。
咽の痛みや腫張には桔梗、薄荷、牛房子を配合して用います。桔梗と併用 例)桔梗湯
⑤咳嗽、喘息に用いる‥‥生甘草を用いる。
肺熱の咳嗽、粘稠で切れにくい痰を伴った咳嗽に用いる。
上気道炎、気管支炎に杏仁、貝母などと併用
⑥緩和、解毒に用いる
甘草は国老と呼ばれ、非常に多くの方剤中に他の薬物を配合して緩和と矯味薬として用いられています。
寒薬と用いると寒を緩くし、熱薬と用いれば熱を緩くする。行き過ぎないようにしてくれます。
また、百薬の毒を消すといわれ、
大黄服用による腹痛、炮附子の副作用、アルコールによる肝障害などを軽減します。
今回は甘草の主な効果についてご紹介しました。
次回は甘草の副作用とその考え方についてご紹介します。
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甘草はどんな生薬? ②
(2025/02/15更新)
今回は、前回に引き続き甘草について
副作用とその考え方についてご紹介していきます。
◎甘草の副作用について
まず初めに、漢方薬は副作用が無いと思われていることが多いように思います。
症状に対しての効果を目的にしたものが「主作用」で、それ以外に影響するものが「副作用」です。
どちらも薬が持っている性質ですので、副作用の全く無い薬はありません。
漢方薬は「副作用が無い」のではなく、「副作用が出ないように組み合わせる」のが漢方です。
例えば、今回の甘草でいうと潤燥作用という潤す効果があります。
これは「グリチルリチン酸」という成分に基づいていて、
用量によっては『偽アルドステロン症』という
顔や足が浮腫んだり、血圧が上がる場合があるとされます。
誠芳園では甘草の比率の多い処方は短期間しか使わず、
逆に長期間使う処方は甘草の比率を少なくします。
さらに利水作用のある生薬をたくさん組み合わせていきます。
新井先生は40年間漢方の道を歩まれていますが、
偽アルドステロン症のような血圧上昇やむくみなどを生じたご経験はないそうです。
それくらい気を付けて生薬を組み合わせています。
ただ注意すべきは、
頓服で使う芍薬甘草湯や短い日数で使うべき桔梗湯などを
1日3回、しかも長期間で使うようなあり得ない使い方をすることです。
水はけの悪い浮腫みがちな方では少量でも具合が悪いことがあります。
体質を考えずに自己判断で多く使うことも注意しましょう。
店頭ではよくぜんざいを例にお話をします。おもちとアンコが美味しいあのぜんざいです。
おもちは身体にとって良いことずくめですが、身体に水をたくわえる性質があるんですね。
それに合わせるアンコ(小豆)が利水作用を持っているので、いくら食べてもむくまない。
まさに組み合わせの妙と思います。
これと同じことを漢方薬でもしているんですね。
漢方薬のおよそ7割に含まれると言われる甘草、なじみのない効果もあるのではないでしょうか。
副作用があると聞くとどうしても怖い気持ちが大きくなると思います。
ですが、生薬一つ一つに役割があって組み合わせていることを知っていただき、
必要以上に怖がらずに、より親しみを感じていただけると嬉しいです。
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胃腸型のカゼ ①
(2025/03/04更新)
ちょっと前に『一般的なカゼには参蘇飲を!』と書きましたが、今回は「胃腸型のカゼ」についてです。
一般的なカゼというのは急性上気道炎や呼吸器に起こる急性炎症になります。
(呼吸器⇒鼻・口から始まり気道から肺まで、上気道⇒鼻腔・副鼻腔・咽頭・喉頭です)
症状でいうと発熱、頭痛、鼻水、鼻づまり、咳、喉の痛みなどですね。
それ以外にも腹痛や嘔吐、下痢などで体調が悪くなったことは
皆さん一度はご経験があるのではないでしょうか。
熱が出て風邪みたいな症状でしかもお腹の症状があるカゼ。
そのような症状のときは胃腸型のカゼや感染性胃腸炎が多いです。
感染性胃腸炎の流行シーズンについて調べてみると「一年中」と出てきます。
それは、国立感染症研究所のデータを見るとウイルスや細菌感染の流行時期がそれぞれ異なるので
丸々一年間注意しましょうねとしているのだと思います。
例年は冬の初めから増え始めて12月にノロウイルスがピークになり、
春になるとロタウイルスが増え始めます。
夏の暑い時期には腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクターなどの
細菌による胃腸炎が増えるサイクルとしてあるようです。
胃腸型のカゼの特徴は
①カゼとは気づきにくい。
②熱は出ない。出ても微熱程度。
③おなか全体がなんとなく重だるく、しんどい。
④人によっては下痢や嘔吐がある。
⑤幼稚園や家族間でうつりやすい。
⑥病院では中々治りにくい。
そこで漢方で何とかならないかと考えた時に、一般には五苓散を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、誠芳園では胃腸型のカゼや感染性胃腸炎に霍香正気散(かっこうしょうきさん)を考えます。
藿香正気散は第三医学会では別名“内科倒し”と言われます。
その所以は、病院では整腸剤や抗生剤などの対症療法しかないため10日前後かかることが多いのですが、
藿香正気散は早くて1服、遅くても2~3日で良くなってしまいます。
効果を実感される方も多いですし、私も服用してからその速効性に驚きました。スタッフ皆常備しています。
今回は胃腸型のカゼとはどんなものか、誠芳園では何を考えていくかをご紹介しました。
次回は藿香正気散についてご紹介します。
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胃腸型のカゼ ②
(2025/03/04更新)
今回は、胃腸型のカゼに誠芳園がおすすめする藿香正気散をご紹介していきます。
早速ですが、藿香正気散について分解して考えてみます。
蒼朮、厚朴、陳皮、生姜、大棗、甘草、半夏、藿香、大腹皮、紫蘇葉、桔梗、白芷、茯苓
の13種類の生薬から構成されています。
この中で主薬となるのは藿香ですので、まずはその効果を見てみましょう。
◎藿香の効能・効果
①胃腸症状を伴う感冒に用いる
胃腸症状を伴う感冒(頭痛、腹痛、嘔吐、下痢など)に対して、
消化管内の余分な水を吸収利尿すると同時に発汗解表する。
半夏、紫蘇葉、厚朴、白芷と併用 例)藿香正気散
②血行をよくして胃腸を温め嘔吐を止める
冷たい飲食物による胃障害や胃腸のれん縮性疼痛にも用いる。
陳皮、厚朴、蒼朮と併用 例)不換金正気散
③寒冷による胃腸の痙攣性疼痛を治す
④消化管内の水分を除いて下痢を止める
食欲を増進し、嘔吐、下痢、腹痛を止める。
全体を見ると
藿香正気散
藿香 紫蘇葉 白芷 ・・・・・・・・・・発汗解熱作用
陳皮 半夏 桔梗 厚朴 ・・・・・・・・鎮咳祛痰作用
藿香 陳皮 半夏 生姜 ・・・・・・・・健胃、嘔吐を止める作用
藿香 蒼朮 or 白朮 茯苓 大腹皮 ・・・下痢を止める作用
陳皮 大腹皮 厚朴 ・・・・・・・・・・蠕動を促進し、腹部膨満感を除く作用
厚朴 甘草 ・・・・・・・・・・・・・・鎮痙鎮痛作用
生姜 大棗 甘草 ・・・・・・・・・・・健胃作用
|
となります。
藿香正気散の元々の処方は平胃散という処方です。
この平胃散(蒼朮or白朮・厚朴・陳皮・生姜・大棗・甘草)は「胃」という文字が書いてありますが
胃薬ではなく、例えば大量に食べ過ぎて腹痛や下痢をするような時の腸の薬です。
この平胃散に半夏と藿香を加えます。
半夏は痰取り・咳止め・吐き気止めのお薬です。藿香は抗ウイルス効果があるとされています。
その上に大腹皮=非常に安全な利尿剤、紫蘇葉=軽い発汗剤、白芷=温め薬、
桔梗=排膿剤で組織にある不要なものを外に出す効果が出ます。茯苓=強心利尿剤です。
これらが入ると、藿香正気散に変わります
。
※端的な表現をしています。
胃腸型のカゼで病院にかかって抗生剤と整腸剤をもらったけどしばらく良くならな...トイレとお友達...
という経験を私は小さい頃から何度もしています。とても辛いですよね。
それが大体1服、遅くとも2~3日で下痢腹痛は止まり、食欲まで出てくるので驚きなのです。
最初にも書きましたが、
胃腸型のカゼは流行シーズンがあるとはいえ1年中起こる可能性があります。
普段はふつうの胃薬としても使えますので、錠剤は常備薬としてもおすすめです。
しかし何といってもカゼのときは保温と安静が大切です。
胃腸型のカゼが猛威を振るっていますので、皆様すこやかにお過ごしください。
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昔の夢と今の目標 (2025/03/17更新)
小学生の頃に書いた文集が出てきました。
タイトルは20年後の私。
開いてみると「20年後の私は薬剤師になって自分のお店を建てている」
と書いてありました。
小さいときに見た漫画やアニメで
薬を調合して患者さんをなんでも治してしまうカッコよさに
憧れたのだと思います。
在学中の病院実習や
大学卒業後の抗がん剤開発、街の調剤薬局に勤めていたときには
西洋薬の良さや悪さをたくさん目にしてきました。
人は欲張りなもので
身体への負担をなるべく少なくして良くしていく方法はないのか
もっと時間をかけて患者さんと接することはできないかと
調べるうちに漢方相談薬局にたどり着きました。
1人で勉強しているうちは、
漢方で本当に良くなるのか?という疑念がありました。
薬理学が一番好きで学んできたのもあるからか
”薬”と見ると、薬のどの成分が、体の中でどのように変化して、
どんな影響を与えるのかと考えてしまいます。
例えば、痛み止めが痛みを和らげる仕組みはどうなっているんだろう?などです。
結局、医薬品の痛み止めは病態の改善をしてはいないのです。
しかし、漢方を見ると、陰陽五行論や気血水が分かりづらい、
「体力がどの程度で~」などボンヤリしている、
など内容を理解するまでにいくつか壁がありました。
一方で、山本巌流では、理解に至る道筋もわかりやすく
生化学検査や画像などを利用した西洋医学的な病名・病態把握を第一とした上で
漢方医学的な身体観や病理観を通して病態を読み直すことで、
真の病態を明確にしていくこととしています。
西洋医学と漢方医学の短所を除き、長所を組み合わせるのです。
優れている診断学がありながら対症療法がほとんどである西洋医学と
すばらしい全体観と薬物がありながら病の認識や病態把握が現代に対応しづらい漢方医学、
その良いところを取り入れて、より良い医学にしようというのが『山本巌流漢方』です。
今の目標は山本巌流漢方(第三医学)で一人前になることです。
このコラムでも山本巌流についてご紹介していければと思っています。
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山本巌流①-西洋医学と東洋医学-(2025/03/31更新)
かつて大阪に20世紀を代表する名医、山本巌先生がいました。
誠芳園では、西洋医学・日本漢方・中医学などの垣根を越えて、
それぞれがもつ長所を融合した『山本巌流』漢方でお客様と向き合います。
前回のコラム中で山本巌流について少しだけ書きましたので
今回は、中々見えにくい西洋医学と東洋医学の長所と短所について書きたいと思います。
西洋医学と東洋医学の長所と短所
西洋医学は、人体のパーツごとの病態を正確にとらえる診断学としては、
東洋医学よりもはるかに優れています。
その正確で素早い診断は、救急救命や命に関わる病気の治療で日夜多くの命を救っています。
ところが西洋医学には、日常でも非常に多い漢方医学でいう気・血・水・寒などの病態認識がなく、
その治療法がないこともまた事実です。
そして、慢性疾患のおよそ8割に対してほぼ対症療法しかなく、さらには治療が原因の病気まであります。
例えば、皮膚病の治療もほぼすべてが対症療法で、ステロイドや抗アレルギー剤、免疫抑制剤も、
発疹や赤み、かゆみなどの症状は軽くしても皮膚病そのものを治しません。
副作用が出ていても、かゆみなどを抑えるためにずっと薬を使い続けなければならないのが現実です。
一方で、漢方薬は薬物の宝庫であり、西洋医学では限界のある様々な病態を改善できます。
基本を理解して使用すれば長期間の服用でも西洋薬のような副作用も出ません。
ただ、漢方のイロハを勉強しないで出されてしまっているケースには注意が必要です。
漢方医学は陰陽や気血水などによって捉える全体観は素晴らしいのですが、
病の認識や病態把握は昔から何も進歩していないのです。
今回は、西洋医学と東洋医学の長所と短所について書きました。
次回は漢方の流派について書きたいと思います。
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山本巌流②-漢方の流派-(2025/04/14更新)
漢方を勉強しようと思うといろんな流派があることに気付きます。
目指すところはどれも「患者さんをよりよく治すこと」だと思うのですが、
勉強する側も漢方薬でよくなりたい方も
どういう流派があるのかは興味があるのではないでしょうか。
そこで、今回は簡単にですが漢方の大きな流派の特徴を書いてみます。
日本漢方
日本漢方は、症状・症候の組み合わせに対して処方が決定するという特徴があります。
例えば、“寒気、首すじや肩こり、頭痛、汗が出ない”という“葛根湯証”には葛根湯
というように証と方剤を理屈抜きで対応させるため、病態がスッポリと抜け落ちています。
その病気の原因を問うことがないので、ブラックボックスに例えられます。
また意外なことに個々の生薬の薬能への関心が少なく、
なぜそれらの生薬を配合して方剤を創ったのかその追及が不十分です。
先人から受け継がれている経験(口訣)は玉石混交で、良いものは検証を重ねて使っていきます。 |
中医学
中医学は、解剖が禁止であったために古代中国の推論である陰陽五行論による臓腑や
相生相剋といった身体観と病気の認識法を受け継いで、
独自の理屈で発病の機序を考えて、病態生理で分析して証を決定します。
そのため、非現実的で事実に合わないことが多いのです。
例えば五臓の腎を西洋医学の腎臓と同じに考えて、腎臓が悪い人は驚き易いと考えたりします。
しかし、日本漢方とは違って非常に整然とした学問体系として作られている点が、
入り口として入りやすいのかもしれません。 |
両者に共通していることは、四診(望診・聞診・問診・切診)で診断していることです。
昔のように顕微鏡や血圧計、画像検査、血液検査などもない時代では仕方がないことかもしれません。
しかし、それだけでは名人でないかぎり正確な情報は得られないことは明らかです。
私は病気を治すことができるのであれば、西や東、流派などにこだわる必要はないと考えます。
そして、山本巌先生の漢方は日本漢方や中医学に偏ったものではなく
西洋医学と東洋医学の両者を統合した医療を、つまり病気をよりよく治す医療を真の医療だとしています。
自身の勉強のためにも、すこしずつ山本巌流について書いていきます。
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