誠芳園芳園とは花の咲き薫る名庭園




私と漢方

漢方西洋医学融合

中国文化と中国医学

日本文化と中国文化

私考「日本漢方史」

病の正しい認識

病態を正確に把握

病態に最適の方剤を

「証」と「病名治療」と

異病同治と同病異治



各論−はじめに−

従来の虚実論

山本巌の虚実論

虚実による治療

気 血 水

気 -1

気 -2

気 -3

血 -1

血 -2

血 -3

水 -1

水 -2

水 -3

発汗療法(汗法)

補益と補養剤

四君子湯の展開

四物湯の展開

四苓散の展開

生薬解説
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行
漢方処方解説
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

 匠の治療術ホメオパティ
漢方一貫堂医学
『漢方一貫堂医学@』
『漢方一貫堂医学A』
『漢方一貫堂医学B』
『漢方一貫堂医学C』
『漢方一貫堂医学D』
『漢方一貫堂医学E』
師語録
腹症について
漢方エキス剤の効かせ方
瘀血@
瘀血A
水@
水A
ヒバリ型とフクロー型
『漢方一貫堂医学F』
  『漢方一貫堂医学G』
『漢方一貫堂医学H』
『漢方一貫堂医学I』
『漢方一貫堂医学J』
『漢方一貫堂医学K』
『漢方一貫堂医学L』
『漢方一貫堂医学M』
『漢方一貫堂医学N』
『漢方一貫堂医学O』
病人の治し方

















































































































































































































































































































































































































































































































































    
  漢方革命 〜山本巌先生語録を中心に〜
                   −医療関係者の皆さんの建設的な意見をお待ちしていますー

  稀代の名医、故山本巌先生は漢方医で、大阪で山本内科を開院されていました。

  大学病院の専門分野で治らない患者さんを 教授や助教授からよく紹介されていましたが
  それらの壮絶な難病の患者さん達を、漢方でことごとく治していました。

  あらゆる難病を正確に治していくその治療は、
  西洋医学から見ても漢方から見ても、常識はずれともいえるすばらしい治療でした。

  うわさがうわさを呼び、山本巌先生の診療は見学する医師や薬剤師たちで溢れていました。

  一方で症状によっては、その場で漢方薬を服用した後 ストップウォッチで時間を計り、 
  20〜30分後に効果判定をしていました。 漢方薬には即効性もあるのです。

  山本流漢方は 従来の漢方とは根本的に異なっていて、
  西洋医学の長所である診断学や病態生理を重要視していました。

  そして、西洋医学の長所をとり入れ、漢方の短所を除いていたため
  漢方界でも西洋医学界でも主流派ではありませんでした。

  主流派ではないためにこのすばらしい山本流漢方医学が一般に知られないのは
  「医学界の大損失」だ と思うのは私だけではないと思います。


  漢方は 決して代替医療とされる程度のレベルではなく
  西洋医学との融合によって 第一の医学になるはずの治療医学です。

  それほど漢方の治療学としての効果は素晴らしく、
  それほど西洋医学の診断学や緊急医療の進歩はめざましい。

  ところが、
  近年 漢方薬のエキス化や保険適用によって 漢方薬が広く普及される一方で、
  漢方本来の的確な治療効果を発揮できていない。 何故なのでしょうか。

  現在、漢方を投与する医師や薬剤師は大きく分けて3つのパターンに分類されるといわれます。

  1つ目は漢方のスペシャリストを目指し、漢方一筋で頑張る人、

  2つ目は西洋医学を基本として西洋医学の限界の部分を漢方で補おうとする人達、

  3つ目は残念なことに一番多いだろうと言われますが、
       最初から 漢方なんて効くとは思っていない医師や薬剤師達。
       病院でも薬局、薬店でも、他にだすものがないし、患者さんも喜ぶから という理由。

  3番目の人たちは真面目に漢方を勉強しないでしょうから問題外だし、
  1番目と2番目の人達も残念ながらすこし違う。

  西洋医学と漢方を分けて考えるのではなくて、
  それぞれの長所を融合して一つの医学にすればいい。

  日本漢方も中国漢方もその治療効果に対してある程度の評価はできるものの、
  医学と言うにはまだ稚拙で改善されるべき点は多く、
  漢方本来の素晴らしい効果を充分に発揮していない。

  私はまだまだ浅学なため、どこまで上手く説明できるかわかりませんが、
  ここで山本巌先生の治療医学を紹介したいと思います。

  それは「漢方革命」という大それた題名を付けるに値することかも知れませんし、
  医学の発展にとっても、多くの患者さんにとっても大変有意義なことだと考えます。

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私と漢方

漢方の道を志して、あっという間に25年の年月が流れました。
多くの人がそうであるように、まず日本漢方、中国漢方を徹底して学びました。

日本漢方といっても、統一されたものではなく、
古方派、後世方派そのほか多様な流派があります。

当時は血気盛んな頃でしたから、
古方や後世方の大家とされる漢方医の著名な先生方に
積極的に(図々しく)アプローチし,問いかけたものです。

漢方専門薬局として 一人一人の大切な生命の相談にあずかるのですから、
もっとより良い治療、良い手法を と研究し続けるのは当然です。

大型書店や専門書店で関連の書物をすべて精読するのに10年もかかりません。
そうなると 漢方の主流派とはいえない書物にも目はとまります。

その中に、故山本巌医師の「東医雑録」や漢方一貫堂流の書物がありました。

古今東西の範疇にいれても天下の名医と思える山本巌先生の漢方医学は
従来の漢方とは土台の部分から異なり 「目からウロコ」 という言葉がピッタリで
「ナルホド そりゃあそうだ」と万人が思えるほどの治療医学なのです。

だからこそ10年弱もかけて目につけたウロコをクリーニングするのは
容易ではなく、山本巌流の漢方医学に切り替えるのに数年の歳月を要しました。

そして今、
そのころから10年ほどで、
私の漢方は自分でも信じられないほどの変わり方をしました。


あの時に 山本巌先生の書物に巡り会っていなければ、

あの日に 山本巌先生の薫陶を享けられる僥倖を得ることがなければ

と思うと、私は10数年前の私の探求心と幸運に百万べんの礼を言いたい。


私はまだまだ未熟で、学ばなければならないことが沢山ありますが、
山本巌先生の漢方医学を1人でも多くの人に知っていただくためにも
また自分の精進のためにも、すこしずつでも綴っていきたいと思います。

1人でも多くの人が本物の漢方医学に触れることができれば、

1人でも多くの人が私と同じ幸運に巡り会えれば、という一念が

私のつたない文章、未熟な見識を露呈する勇気を与えてくれます。

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漢方と西洋医学の融合

私が東洋医学に惹かれるのは、病人を悪い部分や現象だけでなく
その環境や人間関係をも含めた丸ごとの小宇宙として見つめるからです。

外因だけでなく、内因も見つめます。

「外因は 変化の条件であり、
 内因は 変化の根拠である。  外因は内因をとおして作用を起こす」

漢方医学は 治療学としては非常に優れていて、
西洋医学では考えられないような優れた手法がたくさんあります。

「気」「血」「水」や「冷え」などに対しての手法です。

西洋医学は 診断学としては非常に優れていて、
一つの疾病を検査によって診断し、病因を知り、病態生理を明らかにします。

そこで西洋医学の病態生理を診断の主体とし、東洋医学の病理観を加える、
そして東洋医学を治療の主体とし、緊急の処置を西洋医学で補う
という柔軟な手法を講じれば理想的な治療になるでしょう。

そのためには、
長年にわたって複雑化されてしまっている東洋医学の余分な部分を排除し、
合理的でシンプルにすべきだと考えます。


中国漢方にも日本漢方(のさまざまの流派)にも長所もあれば短所もあります。

それぞれが術を伝承するという長い年月の伝統と強固な姿勢により、
短所(欠点)までも含めてその流派の基本骨格の一つになっているかと考えます。

ところがその欠点を指摘し否定することは、流派の根幹を揺るがすことになり、
許され得ない不文律になっているのではないでしょうか。

漢方は本来、簡単シンプルであるべきなのに、
それらの欠点を正当化するため複雑になり「再現性」「客観性」のある効果を示していない。

この状況は 本来の目的である「治療」にとっては足枷になり、
これから漢方を学ぶ人達にとって非常に理解しにくくなり
漢方医学の進歩をさまたげる結果になります。

そこで、それぞれの流派の欠点である手枷、足枷を解き放てば
漢方はわかりやすくなり、非常に有用な治療医学になる、と確信しています。

そして、漢方がそのような医学になって初めて
東洋医学と西洋医学の融合も可能になり
病気に悩む万人の利益につながるのではないかと考えます。

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中国文化と中国医学

漢方を語るとき、中国文化に触れないと『画竜点睛を欠く』ことになります。
中国医学は、中国古代の天文歴法や宇宙人生観に大きな影響を受けているからです。

16世紀以前の中国はヨーロッパよりも高度の科学文明が栄えていて
紙をつくる技術・印刷術・火薬・磁針の発明も中国がはやく、世界一の先進国だった。

中国とヨーロッパとの大きく異なる点は、中国人の合理思想が
神や悪魔による自然現象の説明を否定してきたことにあります。

中国の(紙、印刷、火薬、磁針などの)文化が発達したのもそのためと考えられる。

ヨーロッパでは迷信的暗黒時代が中世を支配したが
中国では古い時代から合理的思想があって文化が進歩した。


  ヨーロッパでは迷信的暗黒時代が中世を支配したといわれ、
  古典がキリスト教の観念に適合するよう歪曲されていた。

  それは権威の文化で、この地上の世界は悪魔が支配し、
  いろんな現象はそれによってつくられるものが多く、
  これに惑わされると地獄に落ちねばならない。

  そして自然現象に関してもその解釈は全く誤った具体的説明をしていた。

  ルネッサンスを経て、
  コペルニクス、ガリレイ、ブルノー、ヴェサリウス、セルヴェトウス等の人達と
  宗教権威との間の長年の闘争を通して近代化が行なわれてきた。

  中国文明が何故、16世紀以降にヨーロッパに逆転されなければならなかったのか。

  それには中国が外部から遮断されていたこと、
  科挙の制度が科学の進歩をさまたげる原因になったこと。などが挙げられている。

  もし中国で役人となって立身出世をしようと思えば、
  古典を学ぶ以外に方法はなく、そして科挙の試験に合格しなければならなかった。

  試験に合格するためには古典の知識を習うことが必修条件だった。

  自然科学や技術の研究をしても、古典を批判して合格しなければ
  それを社会に生かす道は殆どなかった。

  中国には陰陽五行説などの思弁的だけど合理主義があって、いろんな文化が発展し、
  これをたち切って新しい経験的合理主義への移行がなされにくかったのだろうか。

  ヨーロッパの科学は観測実験を重視し、実証的、経験的に知識を確実にしていった。
  経験的合理主義をおしすすめていったために中国と逆転したのだと思う。

  中国の合理主義は近代科学に見られるような強力な実験の裏付けをもたず、
  その文化を充分に発展させる基礎となることができなった。

  中医学は中国では祖国医学であり、
  陰陽五行思想を中心に、臓腑論、経絡説等がまだ主体です。

  外来文化である西洋医学をどう利用して新しい中西結合の医学をつくるのか
  どのように進歩発展させていくか、非常な期待をもって注目していきたい。

  過去の陰陽五行思想を現在にどのように生かしゆくか、
  時間が必要かもしれない。でも悠久の歴史からみればほんのわずかのことです。



漢民族は黄河流域に定住し、農耕をするようになってから
季節の変動を知る必要性がおきた。

時の進行や季節の変化は日月をはじめ、天体の運行と規則的にあらわれる。
各王朝の帝王は日月星辰を観察させ、人民に暦を作って時節を知らせた。

天文の知識は支配者の大切な仕事だった。

太陽による昼夜の区別そして、天体の観測から
季節の変動が恒星の運動と密接に関係のあることを知った。

春秋の時代には、一年が365日あまり、
恒星は一定の順序で整然と循環してとどまらないことを知っていた。

それには土圭の発明が大きな貢献をした。土圭は日時計のことで、
はじめは三角形の盛り土で日影を測った。後に木の柱に換えた。

土圭を用いて夏至と冬至を正確に定め、その中間をとれば秋分と春分がはっきりわかる。

冬至から冬至まで一年とし、その間に月は十二回の満ち欠けを繰り返す。
十二という数は太陽と月の運行のかねあいから生じた暦法上のものです。

各王朝の帝王は、春耕、播種の時、収穫の時を広く人民に知らせねばならない。
そのためこの十二の数が農歴と深い関係ができた。

一年を十二に分けたため十二支と呼ぶ。
後漢の時代では子は一月、丑は二月・・・というようにわりあてている。

支は木の枝や川の支流のようにわかれることを意味している。
太陽に10個の種類があり、それにつけられた名前が甲乙丙丁・・・で十種類。

毎日ちがった太陽がのぼり10日で一巡する。従って10日を一旬という。
一ヶ月を三分し、十日までが上旬、二十日までが中旬、以下を下旬とした。

子丑寅・・・甲乙丙・・・を組み合わせて日次を記し、60日の順序を表すようにした。
これが記日法でさらに年を表示する記年法にも用いられ60年で一巡し、還暦という。

子をネズミ、丑をウシ、寅をトラ・・・のように
動物に割り当てたのは前漢の頃といわれる。

もともと十二支は直接動物と関係はなかったが、
文字を知らない農民たちに「絵とき暦」を与え、身近な動物でもって十二支を憶えさせた。

地球からみれば、恒星の規則正しい運行に反して、太陽系の木星、土星、金星などは
順行、逆行、停留など遅速のあるみせかけの運行をすることが発見された。

恒星の運動が季節の移り変わりとあまりにも密接な関係があるため、
この不規則な運動を示す五惑星が、天変地異、疫病の流行、戦乱、
はては人間の性質や運命、体の病理現象にまで深い関係をもつのではないか、
と考えたのだろう。つまり、天人感応説です。

このような発想から後世「運気論」や「推命法」を考えるようになったのだろう。


中国に発生し発展した医学の初期は、薬物も神農が百草を嘗めて薬能を知り、
鍼灸も皮膚の刺激による反応から病状と治療点を経験的に知った。

内経系の医学ももともとは純粋な経験による現象論から出発したが、
これを学問的に組み立て、理論体系をつくる段階で、人間を小宇宙と見立てて
天人感応、天地五行説等の考え方を人体に当てはめてつくられた。

人体に十二の経絡があり、気血が循環している、一呼吸に何寸進む・・・、
人体に三六五個の経穴がある、・・・・・・・宇宙は木火土金水の五行から構成された。

時令(気節)、生長化収蔵の発展過程、五気、五色、五味から
人体の構成の五臓、五腑、五官、五行、精神現象の喜怒憂悲恐の五分類法で分類した。

人体と自然現象まで相応関係を、相生、相尅、相乗、相侮的な形而上学的な考え方で
総てを五行に帰属させ分類した。

また後世には人体内臓、精神活動や薬物の性質も
五行比類的な類推法によって推論してきた。

鍼灸の物理治療だけでなく、薬物療法の学問においても、
経方と呼ばれる古い《傷寒論》《金匱要略》にもその影響を少しは受けているが、
以後の時方にはこの内経系の思想が次第に支配的となった。

ことに李東垣、朱丹渓等の金元大家からこの傾向は非常に強い。

自然現象から人体の生理、病理、薬物の作用まで
陰陽五行説的な帰類、比類による帰納的、又類推による理論が非常に多い。

たとえ形而上学的な発想から組み立てられた学説によって把えた現象でも、
因果関係が明瞭で再現可能性があれば、それを利用することはできるが。。。

そして、この内経系の世界観における学問の精華とも言うべき運気論も、
ここまでくれば足が地から離れて空理空論となる。

最近の中国医学界では、内部からも次のような否定的見解がみられる。

「陰陽五行説は古代の自然観で、素朴な唯物論と自然発生的な弁証法の思想を備え、
それは鬼神の逆信思想を受け容れないため、医学を向上発展させる原動力となった。

しかしこの種の理論はまた不完全なもので、
はなはだ唯心論と形而上学の影響を受けやすかった」



古代より、中国において自然現象の説明に役立った陰陽五行説も
一種の合理的な解釈法で、中国文化の発展に非常に大きな貢献をしてきた。

そして現時点でも、日本漢方が中国医学に学ぶべきことは非常に多い。

しかし、その根底にある思弁的形而上学的な五行説などは
医学として受け容れるには現実的とはいえないし、一考すべきかと私は思う。

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日本文化と中国文化

中国の人は、形式を重んじ原則を立てる、しかし事にあたっては実利的で
「大義名分」をたてながらも個々の現象に対応をするという気質があると思う。

古典や文献をみても、日本人と中国人では見方や理解の仕方が異がなることがある。

多少の誤りや事実とあわないことがあるときも、中国人は気にしない。
日本は非常に厳密にする傾向がある。

中国人には建前と本音があって、建前はあくまでも原則論としておいて、
実際にはそれに応じたやり方をする。
日本人にも建前と本音はあるが、その間の融通性は乏しい。

こんな話があります。
ある樹の下で二人の子供が争っている。
一人は日本人の子供で、一人は中国人の子供です。
日本の子供はその樹に梨の実があると言い、中国の子供はもう無いといっている。

成程、この樹には以前果実が沢山なっていたが、
今は殆ど無くなって、わずか1〜2個が残っているに過ぎない。

中国では、これは例外的な存在であり、現在ではもう「無い」と考える。
日本人は一個でも二個でもなっていれば「ある」という。

このように観点が異なるのですから、運気論や内経のような書は
日本人には全く現実と異なる空理空論を書いた書物に見えたのでしょう。

こうした性格の差異が医学の面においても
中医学と日本漢方の違いとなってくる。


中国の医学は陰陽五行論という眼を通して
自然の現象や生理、病態現象を把えて学問をつくる。これが原則です。

五行論で内臓を分類すれば、五臓や五腑になり、
あくまで五行が先で実体が後になる。六経的に分類すれば六臓と六腑になる。

また脳は五臓になく、脳の働きである精神現象も五つに分類して五臓に配当する。
融通性があるといえば、たしかに融通性がある。おおらかと言えば実におおらかです。

日本人の性格からすれば、
事実に忠実であろうとすればするほど、内経系の医学は空理空論に見える。

同じ《傷寒論》をみても
日本人のみるのと中国人のみるのとでは《傷寒論》がちがうのです。


杉田玄白にしても西洋の解剖学を勉強し、死体解剖を実施し、
「古人の諸説みな空言にて、信じがたきことのみなり」といった。

人体解剖を通して腎臓の実体をみれば、腎臓はあくまで泌尿器であって、
生殖器でもなければ先天の精(生命力)を臓するものでもない。

中国には昔から宦官というものがあっから、睾丸のこともよく知っていたはずです。


再現可能性のある学をつくるためには、
無数の個々の中から、普遍性を取り出して法則をつくるのですが、
個々の特殊性にとらわれると普遍性の法則はつくりにくい。

日本にいまだ漢方の学問体系がつくられないのは、
正直で融通性のききにくい性格の面が影響したのかもしれない。



古来より明治に至るまで、日本は中国文明の恩恵を受けてきた。
日本は地理的に最も極東に位置し、中国の文化圏にあった。

文字をはじめ、仏教・儒教・医学そして衣食住のほとんどの技術を中国から得た。
それが何故最も早く西欧文化を吸収して近代化をなし得たのだろうか。

日本は島国であり、常に外来の文化を輸入して、同化しつづけてきた歴史がある。

従って西欧文化の輸入にもあまり抵抗がなかった。
むしろ外来文化の輸入を尊ぶ気風がある。

漢方医学と称しても、もともと中国から輸入した医学であって、
独自に創造したものではなく、それが次第に同化したものです。

ところが日本人はもともと中国医学の根幹である陰陽五行思想をもたないし、
またこの思想は日本に深く根をおろさなかった。


福沢諭吉は「陰陽五行の惑溺を払わざれば窮理の道に入る可らず」と述べて、
「陰陽五行説」がながく日本の知識学問の発展をおくらせたとしている。

医学も中国から輸入したそのままの医学から、
次第に陰陽五行思想を省いて日本化をやって来た。

なかには中国の陰陽五行思想の医学を解説することに勉めた人もいたが・・・・・
「やはり蟹は甲に似せた穴を掘り」で自分に似たようになるものです。

日本漢方、とくに古方派漢方には、歴史の流れと文化の違いのなかで
中国から輸入した医学に対してどう対処してきたか、という一面があります。

中国文化と日本文化、さらには西洋医学と東洋医学の差はあるにしても、
病をもつ人にとっては、病気が治る医療が良い医療であって、
病気を治せる医学が良い医学である、ことを忘れないでいたい。

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私考「日本漢方史」

漢方を学び始めるとき、 どの漢方の流派を学ぶのか、
また、すでに漢方治療に携わっている人は、 ご自分の漢方の再評価のためにも、

日本漢方がなぜ現在のような形になったのか、 その長所が何で その欠点がどこにあるのか。

そして 「漢方は医学として今後どうあるべきか」 ということを考え構築するためにも
日本漢方の歴史を見つめることは たいへん有意義です。

また、江戸時代における 革命と復古を軸とした現在に至る流れを知れば、
現代の日本漢方を理解し易いのではないかと思います。


日本漢方医学の始祖、曲直瀬道三

漢方とは江戸時代の医療・医学のことで、明治になって名づけられたものです。

昔、長崎経由で輸入されたヨーロッパ式の医学を「蘭方」といったのに対して
「中国風の、とか中国流の」といった意味で「漢方」と名付けられました。


現存する日本最古の医書は、平安時代の「医心方」30巻(丹波康頼 984年)です。

この「医心方」は中国の医書「諸病源候論」(隋の時代610年)に準じて疾病を分類し
唐以前の医書200部以上から引用しているため、文献的価値が高いとされる。

「医心方」をまとめた丹波康頼の祖先は、
中国から移住した後漢の霊帝の子孫・高貴王だとされる。

丹波康頼の子孫は代々、官位の最高位御典医になり、江戸時代からは徳川家に仕え
多紀の姓を名乗り、幕府医官として一大勢力を奮った。

時代をさかのぼると、
414年に新羅国の金武が来日し天皇の病を治した。 とある。

538年の仏教伝来以後、そして飛鳥時代以後も急速に
朝鮮や中国の文化、そして医学も日本に輸入された。

623年、僧医恵日らが隋唐の医学を学んで帰国。

平安時代になると外国との交流は絶えたが、室町時代に(1487年〜)
田代三喜が12年間、明に滞在して金元医学(李朱医学)を学んで帰国した。

 金元の四大家

 宋の時代(金・元の時代と重なる)は、中国は世界一の大国であり
 世界中で最も文化も栄え、医学にとっても宋の時代は歴史的な爛熟期だった。

 金元の四大家のうち、李東垣と朱丹渓の二人の医学を合わせて李朱医学といわれる。

 李東垣は脾胃の補養を重んじ、朱丹渓は不足しがちな陰の滋陰、養陰を重要視した。

 李東垣は、病には「外感の病」と「内傷の病」があることを提唱し「補中益気湯」を作製した。

 張従正(子和)と劉完素(河間)も金元四大家といわれている。

 張子和は攻下派とされ、病は風・寒・暑・湿・燥・火および飲食物などの邪気が体内に停留することであり、
 発汗法・吐法・下法によって治療するべきだと考えた。

 劉河間は、病因として、外因のなかで火熱が最も重要だと考え、熱病には多く寒涼の剤を使用した。
 とくに防風通聖散により三焦の実熱、表裏の熱証を双解した。


曲直瀬道三(1507〜1594年)は、関東で田代三喜に10年以上師事し、
京都に帰ってから、すぐれた医療を発揮し、豊臣秀吉や徳川家康の2氏にも重んじられた。

曲直瀬道三は後進の育成にもつとめ、自身の豊かな臨床経験を加味して(「医心方」以来)
日本の歴史上初めて、中国医学理論を日本流に再編し実践的な医学体系を創始した。

そしてついに道三は「啓迪集」(1574年)「衆方規矩」(1769年)を完成した。
「啓迪集」は医学教科書として名高く「衆方規矩」は実践的な処方集として広く利用された。

これらの書は実践的な内容だったため、全国から弟子が集まり
道三の医学は日本医学の主流の位置を占めた。

道三は「啓迪集」の序文に「日本には察証弁治の書がない」と述べている。
それまでの日本医療は、「和剤局方」という処方集を主体にして
「こんなときはこの処方を与える」とした民間薬療法の延長のような(口訣漢方)程度だった。

「察証弁治」とは証を察して治療をする、すなわち患者を診て、病気の原因となりたち、
そして病態を判断して、その病態に最適の方剤を与える。ということで、
日本で始めて医学と呼ぶにふさわしい体系づけをした。

察証弁治とは中国医学の「弁証論治」と同じようなもので、
日本の「随証治之(証に随って治療する)」に病因と機序の追求を加えたものです。

反対から見ると随証治療を主とする現代の日本漢方には、
病気の原因と病気の発生機序、そして病態生理の認識が欠けている。

随証治療だけで対応できることも多いけれども、病因や機序そして病態を知らなければ
現代の新しい慢性病や難病に対しては応用できないことも多い。

  曲直瀬道三は医学教育も20数年行い、名声も高まった。
  御所や権力者たちから侍医として請われても誘いにのらなかった。

  正親町天皇から「翠竹院」の称号をもらったが
  御所付の医師として出仕することは辞退し、日常の診療に従事した。


ところが道三の派も三代、四代と時代を経るにつれて、
保身主義で温補療法にかたよった治療しかしなくなった

「啓迪集」の医学理論に束縛された門下生の理解度は下がり、保身だけで発展もなく
安易な治療マニュアルとして扱われるようになり、医学的価値も次第にうすれていった。

これは道三を始めとする後世医学の罪ではなく、
この時代の後世派医師のせいであると考えられる。

そして、江戸中期ごろに発生する古方派の台頭を許すことになる。

医と巫

 江戸時代までは、お祓いや加持祈祷のほうが医療よりも重視されていた。

 日本では流行病(はやりやまい)や疫病の「病因」を
 神道では、「死霊」や疫病神だとし、仏教では疫鬼、魑魅魍魎の仕業だとした。

 それほど、赤痢やコレラなどの流行病に、当時の医療は無力だった。

 というわけで、疫病がはやれば人々は神仏のたたりだと考えた。
 京都の「祇園祭り」も疫病追放の祈願だったといわれている。

 一方、中国では「山海経」や「西遊記」以後、化け物の類はあまり出てこない。
 中国では張仲景の「傷寒論」が、「医」を「巫」から切り離したとして評価される。

 疫病も傷寒とか中風、風寒暑湿燥火を病因として症候に応じて治療をし
 中国ではお祓いや加持祈祷のでる幕はなかった。

 ところが日本に中国の医学をもってきたのは主に僧侶、仏教家だった。

 江戸時代には中国の医療も入ってきて治療の研究もなされたが
 医療よりも僧侶による加持祈祷の方が利用されることが多かったと思う。

 昔、奥州の殿様が病気になり、
 祈祷師と医師がその治療の権利を争ったという。 そのとき、医師が
  「おまえは私を祈り殺せ、私はおまえに薬を与える。
  その結果、勝ったほうが殿様の治療をすることにしよう」 と提案した。

 医師は、祈祷師に下剤を与えた。 祈祷師は必死に祈った。
 しかし祈祷師は、途中で腹痛と下痢をして敗れたという。

 これは江戸末期の話ですが、示唆するものは大きい。


近年、漢方の流派は「後世派、古方派、折衷派」の3つに分けられている。

後世派とは
中国の歴史のうちの比較的新しい時代(宋から清のころ)の医学を重視する流派で、
曲直瀬道三がその代表的な人物とされる、古方派が台頭してから後世派と呼ばれた。

古方派とは
中国の歴史のうちの比較的古い漢代の医学(とくに張仲景の傷寒論)を重視する流派、

折衷派とは 両者の良いところを併せて用いる流派とされている。

ところで、後世派といっても道三の時代には決して(古方の聖典とされる)「傷寒論」を
否定するものでなく、治験録をみても傷寒の治療は「傷寒論」に法って行っていた。

曲直瀬道三を継いだ二代目玄朔は「外感は張仲景(傷寒論の作者)に則り、
内傷は李東垣に法り、熱病は劉河間に則り、雑病は朱丹渓に法る」と言っている。

一方で、古方派は難病痼疾には補法だけでは治せないといって、
あまりに極端に瀉法を強調しすぎたし補法の悪口を言いすぎた。

したがって結核を上手く治療できない者が多かった。
世の中にも私たち人間の身体にも純(100%の)陽もなければ、純陰も存在しない。
何事も長所は欠点であり、欠点はまた長所であります。

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御典医と町医者

また、ときおり折衷派と混同される「考証派」という派もあります。
中国の医書を整理し体系化したことにより考証学派とも呼ばれた。

考証学派の代表は多紀一門です。
多紀家は「医心方」をまとめた丹波康頼の子孫で、代々官位の最高位になり勢力を奮った。

多紀元考は神田・佐久間町に塾を開き(1765)、医生を養成した。(後の官立の医学館)
教育内容は「本草経」「素問」「霊枢」「難経」「傷寒論」「金匱要略」を主とした。

古来の名家としての地位を保持するため、曲直瀬道三の後世派に対抗したと考える。

江戸時代、幕府や藩に仕えるには官位がないと身分の高いものを診ることができない。
そこで幕府は位のない医師に僧位を与え、身分の高いものを診療できるようにした。

十万石以上の大名に仕える医者は、お経を読めなくてもかならず坊主頭にした。

坊主頭は大家医者のシンボルだったが、
大名以外では、裕福な金持ちの診療はしても一般の町人は相手にしなかった。

往診のときは、衣服を華美にして4人駕籠に乗り侍を供回りにして、
薬箱持ち、挟箱持ち、長柄持ち、草履持ちなどを連れて歩き、高額の謝礼を受けた。

ところが身分や身なり、肩書きはりっぱで理屈は達者でも、肝心の治療術は稚拙で
ほとんどの病は治せなかった。 治る人は自然治癒力で自然に治る人くらいだった。

学問を積んだ御典医が、何故ほとんどの病気を治せなかったのかは
中国医学の理論が事実から離れている、ということと実践不足の2点が考えられます。

中国の医学は虚偽や想像でつくっている部分が多く、例えば五行の相生相克理論なども、
事実と離れて立派につくりすぎていて実際は学問通りにはいかない。

また治療は 書物を読むだけでは決して上達しない。

いくら医学を学び、文献を考証し、著書を出しても、実践や経験がなければ
机上の空論、畳の上の水練と同じで実際の役には立たなかった。

それでも理屈を並べないと、殿様や高貴な身分の者は有難がらないため、
理論で武装して、医界に君臨しようとしたようです。

昔の中国医学のような再現性の低い学問では、
多くの成功・失敗の経験を重ねて腕を磨く実践による修練が重要です。

ところが、高貴な病人を診療する御典医は
もしも病人が死亡した時、治療の失敗や誤診とされることを最も怖れた。

この治療をすれば治るかもしれないと思っても、高貴な人になにかあれば、
どう処分されるかもしれないため、診るような恰好をするだけで治療はしない。

そのため多くの医師の会議による、あたり障りのない高貴薬の温補療法で責任を回避した。
人の口に戸は立てられず、坊主医者の治療は「大名の病は行き倒れも同然」
「死にたければ御典医にかかれ」と揶揄されるほど治せなかったようです。

実際の診療では、修練や経験のない医者の学は絵に書いた餅と同じで役に立たない。
はたして、幕府のかかえた医師で、役に立つ医師はどれだけいたのだろうか。

老中松平定信は、著書の中で
「幕府が抱えている医師達に支払っている諸費用を合算すると、
優に大藩の禄高と同じくらいの巨額に達するが、しかし役に立つ医師は1人もいない」
と述べている(大熊房太郎「漢方古昔物語」より)

また、徳川12代将軍家慶には側室が15人と20数人の子供がいたが
成人したのは13代将軍になった家定1人で、その他はみんな幼児の頃に死亡した。

御典医の中でも当代一の医師が将軍家に付くし、
将軍の子女には1人ずつ医師が付くはずですから、この事実も軽視できません。

一方で、御典医自身や、自分の家族、孫娘が病気したときには
片倉鶴陵(1751〜1822年)などの町医者の実力者に治してもらっていたこともある。

皮肉なことに特権のある将軍家や大名、裕福な金持ちは、御典医に診せて病気が治らず
御典医に診てもらえない町人や百姓が、町医者の治療により治っていたことも多い。

 ある時、水戸侯が江戸で中暑を患った。
 そこで江戸の名医大家を呼んで、手を尽くしたが万事無効で非常に危険な状態になった。
 万策尽きた時、某侍医が原南陽を推薦した。
 
 南陽は按摩を業として不本意の日日をすごしていたが、酒好きの彼の行きつけの酒屋で
 水戸藩の役人と飲み友達になっていた関係から推薦されたといわれる。
 
 南陽は水戸侯を診断して漢方薬を差し上げた
 「今、この漢方の名を申し上げるわけにはいかないが、服用半刻位で吐瀉される。
 すれば御病は平癒されるであろう。殿のお傍では窮屈である。
 御台所の片隅なと拝借して、お酒一升ばかり頂戴したい」と言った。
 
 はたして南陽の言の如く、吐瀉し、水戸侯はたちまち意識を回復し、やがて治った。
 水戸侯は命を救ってくれた南陽を徳として、侍医に抜擢し新地五百石を与えられたという。

 
 同じように、のちの大正天皇がご幼少のおり高熱で痙攣をおこし、
 その診療を依頼された浅田宗伯は診療するにあたって短刀を内着し、
 事成らざればその場を去らず切腹の覚悟で漢方薬の瀉剤を使用し、効を得た。
 
 当時の多くの御典医の中に、同じ漢方薬を考えた医者もいたとすれば、
 瀉剤を使用してまで万が一効がない場合の自分の立場を恐れ
 患者の命よりも保身を重視した。といえる。
 
 それとも本当に医の実力がなかったのだろうか。

町医者のほうが御典医よりも病人をよく治すことができたのは
実践の多さと中国医学の事実と離れた空理空論に束縛されなかったことが考えられます。

生涯、町医者でとおした後藤艮山は、他の医者に見放された患者もことごとく治療したため
常に患者は門前に溢れ、弟子も200人を超えたとされる。(1659〜1733年)

彼の医法は実証的なもので、効果のある理論や方法だけをとり入れた。

当時絶対視されていた曲直瀬道三流の医学理論でも、効果のあると思うものは使用し、
事実に即しない臓腑経絡や陰陽五行説などの思弁的理論は捨て、「傷寒論」治療でも、
灸や温泉、ヤツメウナギや卵などの栄養療法でも実用的なものはすすめた。

彼は従来の医師が坊主にし僧衣をつけて位を誇ったのに抗し
後頭部で髪を束ねる「くわい頭」にし平服を着た。門人達もこれにならい後藤流といわれた。

今、テレビでも江戸時代の医師といえば「くわい頭」の後藤流ですが、
江戸時代の医師は「くわい頭」だけではなく、官位をもつ坊主医者もいたのでお間違えなく。

後藤艮山は、病人の貧富の差別をする金儲け医者、坊主医者を嫌って言った。
「上は天子から下は庶民に至るまで患者を選んだり、医を金儲けの手段にしてはいけない」

後藤艮山の門下生からは、
香川修徳・松原一閑斎・山脇東洋らが育ち古方派が台頭する原動力となった。


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儒医出現の背景

「箱根山、かごにのる人、かつぐ人、そのまたわらじをつくる人」
・・・落語では「切れたわらじを拾う人」と言って笑わせる。

それほど江戸時代、徳川幕府の身分制度は厳しかった。

士農工商とともに、将軍や大名の子は生まれながらにして将軍大名であり
足軽の子は足軽、町人の子は一生涯町人であった。

いつの世も支配者は自分の地位を死守せんとする。
幕府は、中世以来日本人の精神面における支配者であった寺社の存在を怖れた。

織田信長による比叡山の焼き討ち、また豊臣秀吉も関与した長島・石山本願寺の死闘、
徳川家康や各大名と一向衆との間の闘争などは寺社との激突だった。

現世より来世が大切な宗教勢力は、死んでも降伏しないため凄惨を極めた。
このような経験はやがて、島原の乱にみるキリシタン弾圧や鎖国政策にもつながる。

幕府は長期間この封建国家を維持し、下克上や一揆、反乱を起こさないために
仏教などの宗教に代えて儒教による思想統制を強いた。

封建の階級制を維持するため、儒教の忠・孝・仁・義・礼・智などの思想は好都合で
(清)貧に甘んじさせ、下級武士の反乱も予防することになるため各藩もこれにならった。

中国や朝鮮でも、儒は治国の大道、聖賢の道として貴ばれていて、
徳川幕府でも綱吉の極端な儒教奨励によって儒者の地位が高まった。

身分制度が固定された封建社会では、儒は例外的な出世の門になった。
戦争のない時代、仕官の道もない下級武士、ことに浪人の中から著名な儒者が生まれた。

儒は人倫の大道を説く者として貴ばれたが、著名になっても生活手段がなく貧困にあえいだ。
「武士は食わねど高楊枝」と同じように「儒者も食わねど高楊枝」だった。

 伊藤仁斎(1627〜1705)は江戸時代を通じて第一の大儒だった。
 
 その名声は天下にとどろき、門人も一千人を数えるほど盛況になったが、
 貧乏から開放されることはなかった。
 
 ある年の暮、モチをつくモチ米を買う金がなく、子供にモチをせがまれたことを
 妻が夫の仁斎に訴えると、机に向かっていた仁斎は黙って羽織をぬいで渡したという。
 
 また、門人に対する熟心な講義や談論で夜おそくなると
 勝手から「もう油が切れます、明朝にしてください」 といわれるのが再々だったという。


太平の時代が長くなると、町人は経済的に豊かになり人口も増えた。

いままで病気になっても医者を呼ぶ余裕はなかった町人が、
診療を受けるようになったため町医者の需要が増えた。

 徳川幕府になって230年の間は全く戦乱がなく平和な時代が続いた。
 農業を始め各種産業の生産が増加し、経済のめざましい発展とともに人口が増加した。
 
 職人と商人は農村に住むことを許されず、藩主のいる城下に移され都市化が進んだ。
 これら職人と商人をあわせて町人といった。
 
 1721年江戸の人口は町人だけで50万人余り、
 参勤交代制で移動していた武士を加えると、100万人に達したと推定される。

 天下の台所といわれた大阪の人口は1703年、町人だけで35万人余り。
 京都は1681年武家を除いても57万人余りだった。
 
 ロンドンの人口を見てみると1661年に46万人、パリは50万人だった。
 したがって当時の江戸の人口は世界でも最大だったかもしれない。

当時医者の地位は低く、医療政策もなかったため、
誰でも簡単に医者になり収入を得ることができた。

漢字の読み書きができなくても医者になってしまう町人まで出現した。

また、貧困にあえいでいた儒者のなかで、医者を兼ねる者(儒医)も増えた。

中国や朝鮮では、儒者たる者が生活のために医師を兼ねるなどはあり得なかった。
この特殊な医と儒の関係が古方の出現に大きな影響を及ぼした。

一方で良医になるには中国医学の古典を読む必要があり、
漢文を習得する目的で儒学を勉強する医者もあった。

地位の低い医者より、大きな顔ができる儒者の社会的地位が欲しい者もいた。
香川修庵は「儒医一本論」を唱え、社会的に低い医の地位を高めようとした。

医者が儒を兼ねる者と、儒者が医を兼ねる者との気質の異なる2種類の儒医があった。


古方派出現の背景

当時、町人をはじめとする民衆の経済的発展は
享楽的だが合理主義で実証主義の民衆文化を育てた。

そして同じように、学問の世界にも新しい変化が生まれた。

徳川幕府は儒学の中でも、教学体系として整備されていた朱子学を奨励、利用したが、
伊藤仁斎は朱子学が重視した「大学」を孔子の著書でなく偽作であるとし、
より古い「論語」「孟子」から再出発すべきだと主張した。

中国にも日本にも尚古という思想がある。
あらゆる文化は古代に聖賢がつくったものであり、昔は完全なものだったが、
後世になるに従って人心が悪くなり、ゆがんできたという思想です。

また荻生徂徠はこのような古学を実用の学と位置づけた。

儒学の復古説がでれば医学に復古説がでても不思議ではないほど儒と医は近かった。

そして儒学の復古説に誘発された儒医たちによる医学の復古気運が生じた。

古方派が台頭した背景としては、儒学における復古主義による影響のほかに、
当時の人口集中化、交通の発展などによる、コレラの流行や梅毒の蔓延、
そして陰陽五行説などの中国思想に対する疑問、医師の質の低下などを挙げられる。

 古方派と後世派の疾患の考え方。 診断法、治療法の原則。
 
 @ 後世派の原則
   陰陽論、五行論、運気論といった中国自然哲学的思想によって組み立てられた医学で
   健康とは調和のとれた状態、 疾病は片寄りがあり調和のくずれた状態としている。

   調和のとれた状態が中庸だとして傾向分類法をとっている。
   
   二分類法では 陰陽論により、陰に偏しても陽に片寄っても病であるとして
   陰陽をさらに表裏、寒熱、虚実、気血、燥湿などの物差しで見つめる。

   五分類法では 五臓分類を行なってその相互関係を五行説の相生相克的に組立て、
   これを陰陽と組み合わせて弁証を細分化する。

   十二分類の経絡説が加わって
   経絡と臓腑の関係を結び、さらに病態の把握を細分化している。

   病因論は三因方による内因、外因、不内外因とし、人体を個々の局所に切り離さず、
   全体と局所、局所と局所の相関で把え、局所を通して全体を把える。

   また環境から切り離すことなく 環境条件も含めて把える。
   家庭、社会の中で人間がどう適応していくか、心身一如という全人間的な把え方をする。
  
   治療は 調和のくずれ、偏移を調和のとれた中庸の状態にもどすこととする。
   
   具体的には望聞問切という五感による四診で病態を診断し、
   汗、吐、下、和、清、消、温、補の各法で治療する。

 A 古方派の原則
   親試実験による実証の医学で、 想像や臆測でものを言わない。
   中国の思弁的哲学の陰陽五行論、臓腑経絡説、運気論などを捨てる。

   古代の傷寒論が 方と証を相対的に記載した経験的・実証の医学であったために
   傷寒論を範とした。  このため 革命が復古という形で行なわれた。

   吉益東洞は万病一毒論をとったが
   万病一毒・方証相対ではいろんな疾病を把握することはできない。

   吉益東洞のあと 帰納的分類法を知らなかったために
   そこで再び傷寒論の分類法である
   三陰三陽病、陰陽、虚実、表裏、寒熱、気血水などをとり入れて漢方概論をつくった。
   
   診断は 四診によって病態を症候群「証」として把える。
   その症候群「証」に応ずる方剤を与えて治療する。 即ち方証相対の診療を行なう。

   同じ陰陽虚実の言葉を使っていても、 中医学や後世派とは意味が異なるし、
   病因や病態の追求はなく、 そして方剤学もない。


@
日本人は、学問上では単純明快を好み
「イエスかノーか」「勝つか負けるか」「陰か陽」などと割り切ることを好む。
映画やお芝居でも善玉はあくまで善玉、悪玉はあくまで悪玉です。

中国では平素日常的に、陰陽五行の考え方が浸透していて形式を重んじ複雑を好む。

この日本と中国の文化の違いは、本当にビックリするくらいのもので
例えば日本とインド算数の違いくらいはあるかと思う。

日本では9×9までは暗記するが、インドの人は99×99まで暗記している。

これらの文化の違いが、日本人にとって、中国思想を理解しにくく
さらには後世派の五行論や臓腑経絡説をわかりにくくした大きな原因であると思う。

そして、町人たちの合理的で実証主義の気質は、思弁的で架空の理論を嫌った。


A
当時は町人文化が盛んになり、医療も貴族社会だけのものでなくなり、
その需要も増えて、漢字も読めない医者が出現するくらいだった。

また、当時の病気治療では傷寒のような急性熱病のウエイトが多かった。

町人や漢字も読めない医者は、学問や理論より実際の治療効果を望み
指示の書といわれるほど思弁的理論の少ない傷寒論を好んだ。

傷寒論は非常に簡潔な文章(名文)で、必要なこと以外は全く書かれていない。
症状と薬方の相対という形式で書かれ、あまり中国流の思想が介入されていない。

理論の多い中国の書の中で理論を書いていないのは、その出発点が非常に古く
木簡や竹簡に刻まれていたものを、紙の発明後、紙に写されたからと考えられる。

そのため簡潔な表現の中にあふれる内容をつめて、必要最小限度の文章にしている。
この単純明快さが、町人や漢字を読めない者には受けた。

傷寒論に従って治療すれば、病名や病因、臓腑などを考えなくても治療が可能で
想像や憶測の入ったものは不要だという立場を古方派はとった。


B
外感病による急性熱性病、すなわち傷寒は傷寒論によって治療し、
慢性病、すなわち雑病は金匱要略によって治療する。

傷寒を縦の病気とすれば、雑病は横の病気です。
この傷寒論と金匱要略を合わせて「傷寒雑病論」という一書だったという説もある。

しかし日本の古方派は五行五臓の思想が入っている「金匱要略」を好まなかった。

古方とは「傷寒論」「金匱要略」の薬方を使用する一派とされることもある。
しかし、古方派といっても三派に分けることができる。

永富独嘯庵(1732〜1766年)のように傷寒論一点張りで、
ときに金匱要略の処方をチョコッと使う派

浅田宗伯(1815〜1895年)を代表とする
傷寒の治療には傷寒論、雑病には金匱要略によって治療する派。(五行分類はしないで)

それから吉益東洞(1702〜1773年)のように、傷寒論の処方を少しは使ったにしても
実際の治療は傷寒論でもなければ金匱要略でもない「方証相対」派もある。

共通しているのは、思弁的医学から経験的、実証的な医学をめざし、
中国医学のなかで最も思弁的考えの少ない「傷寒論」を範としたことです。


C
世相が変われば病相も変わる。人口の増加と集中化、
交通の発達、海外との交流があり、1512年頃、梅毒が日本に侵入し大流行した。

今では顕性の梅毒を診た医師も少ないが、昭和の中頃までは蔓延していた。

「解体新書」で有名な杉田玄白(1733〜1817年)は、
著書「形影夜話」のなかでこう述べている。

「医は生涯の業で、とても上手、名人には達しないものらしい。
 自分は上手だぞと思ったら、もう下手になるきざしだ。

 これから言うことは、私のざんげ物語である。 どうか聞いてほしい。

 梅毒ほど世に多くて、しかも難治で、人の苦しみ悩むものはない。
 
 とかくするうちに、年々私の名ばかりむなしく高くなり、患者は日日月月に多くなり、
 毎年千人あまり治療するがそのうち7〜8百は梅毒患者である。
 
 もう4〜50年の月日がたったから、私が診た梅毒患者の数は数万にもなろう。
 それなのに、今年77才になるが完全な治療法がわからない」

当時の金瘡医は今でいう外科・皮膚科・婦人科であり、内科とは区別されていた。
杉田玄白が金瘡医だったにしても患者の約8割が梅毒というのには驚かされる。

梅毒はヨーロッパから入った新しい疾患で、従来の医学ではなんの役にも立たなかった。

吉益東洞は 後世派の医学が役に立たない理由は、陰陽五行説、運気論などの
中国の思弁的な空理空論が原因だと考え、後世派医学を正面から批判した。

「黄帝内経」由来の陰陽五行説や臓腑経絡説に基づく観念的・思弁的な医学から、
実証的合理主義の医学への革命を目指したとも言える。

疾病を治療するには昔の傷寒論の張仲景のように四診によって病の所在をつきつめ、
対応する薬剤を与える。治療は経験的、実証的なものでなければならない。とした。

   四診(漢方独特の次の4種の診断法の総称)

      望診:患者の全身や局所の状態を観察。
 
      聞診:患者の音声、咳嗽、胃部振水音などを聞く。
          口臭、大便臭などの排泄物の臭気をかぐ。
 
      問診:患者の愁訴、病状を細大漏らさずに聴く。
 
      切診:患者の身体の一定部位に触れたり、圧したりして病状を把握する。 
          脈診と腹診などがある。


吉益東洞は患者の症候群「証」と
それに対する薬剤「方」を与える「方証相対」の医学へと革命をおこした。
すなわち革命が復古という形をとった。

ただ「傷寒論」がそのまま梅毒の診療に役立ったのでは決してなかった。

思弁的な理論を排除し、実践的な医学をめざす医学革命の流れとは別に、
儒を主とする儒医たちは 臨床家としてというより、文学の徒として
尚古、崇古の意味から傷寒論を主とする古医学をとり、文章の解釈を優先した。

現在でもこの革命と尚古が混同されて、おかしな古方派が出現している。

そして昭和の漢方を指導した中で、次のように述べている者がいる
「漢方には進歩という思想はなく、尚古の思想がある。漢方医学の最高の古典が、
 すでに漢代に成立していたことを想うとき、そこに進歩を考える余地はない」

ここに儒医の影響による尚古思想がみられ、医学の進歩をさまたげていると思える。

儒医による尚古思想は、医学の進歩より傷寒論の名文そのものを高く評価し、
傷寒論医学に復古し、後退した。 進歩しようとする気もないように見える。

現代日本の漢方は、傷寒論至上主義の古方派が主流で
漢方とは 傷寒論を体得し修練を積んで熟達してゆくものであり
陰陽、虚実などの尺度により、傷寒論の処方を使用するものと考えられている。

そこには病因や病態の追求はなく、
方剤学もないため、医学としては稚拙で進歩もない。

「傷寒のなかに万病があり、万病のなかに傷寒がある」と言える名人は別として
私たち凡人が急性病に対する「傷寒論」を慢性病に応用するのは、かなりの無理がある。

また、傷寒論を主張していても、実際は傷寒論ではなく過去の経験的口訣によって
「〜〜のときは−−を使う」式の民間療法とあまりかわりない手法の人も多い。


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現代日本漢方の潮流

吉益東洞(1702〜1773)は現在の日本漢方に非常に大きな影響を与えた。

吉益東洞は、実践と観察という実証主義の立場を貫き、
傷寒論から陰陽も虚実も寒熱も表裏も病名も
みんな架空の理論として排除し、ただ症状と方剤だけを採った。

そして四診から得られる情報と方剤との方証相対の医学をつくろうとし
証からではなく、方剤から分析していった。

同じ薬物を含んだ類似の処方を分別し「類聚方」という書をつくり、
その中からさらに症状以外のものを削って「方極」「方機」を著述した。

そして次に方剤を分解して薬能を導き出そうとして「薬徴」をつくった。
ただ、個々の薬物を知って方剤を組んでいくまでには至らなかった。

吉益東洞はこれだけの仕事をしながら、何故、病人の証の追及をしなかったのだろう。

 方証相対と随証治療

  方剤と証を相対させる治療が「方証相対」であり、
  病人の証に合わせて処方し治療することを「随証治療」「随証治之」という。

  医療は本来、方に合わせて病人をさがす(方証相対)のではなく、
  病人の証に合わせて方を処す(随証治療)ものです。

  現代日本の古方派のなかには、漢方は証を診断し、
  方証相対によって「病名なき治療」ができるという人もいる。

  漢方は診断そのものが治療法だから、証を診断すれば病名がわからなくても
  治療できる。と書いたものもある。 たしかに漢方にはそういった利点もあります。

  しかし現代慢性病の証を四診だけで正確にとらえるには無理があります。

  万病を相手に、しかも限られた古方の方剤だけで、その病名もわからず、
  ただ四診で得た情報だけで その「証」だと診断し治療するのは無謀です。

  「敵を知り、己を知れば・・・・」 と言われるように
  「敵を知ること」 すなわち病の正確な情報は多ければ多いほど戦いに有利ですから
  病名診断による病態生理や、病の認識は重要です。

  また「己を知れば・・・」 すなわち生薬の薬能や方剤学の知識も必要です。

  ところが日本漢方では 「漢方は随証治療であり、病名治療ではない」という。

  「随証・・・」すなわち「証に随って」というのだから 「証」はより正確にとらえたい。
  証は自他覚症状だけでなく、諸検査による病名診断や病態生理の把握もしたい。

  たしかに西洋医学では、病名は診断されても治療法はないこともありますが、
  いつまでも現代の諸検査や病名、病態を軽視して
  四診だけにこだわっているようでは、日本漢方にはチョンマゲ時代からの発展はない。

東洞は上記の書を世に出しながら、実際の治療については門外不出とした。
そのために「たてまえ」は伝えられたが 「本音」の部分が知られることは少なかった。

吉益東洞といえば当時も現在でも古方の旗頭であり
その診療は「傷寒論」一辺倒だと思われ、またそのように記されてもいる。

方証相対による随証治之という方法論は同じでも、傷寒論とは
その内容は全く異なり「傷寒論」の方剤も少し併用しただけだった。

同じ時代を生きた杉田玄白と同じように東洞の診た患者の大部分が
梅毒患者だったことは、日本漢方界でも意外と知られていない。

東洞は広島で金瘡医として、当時流行していた梅毒に取り組み
水銀剤を主とする排毒療法を行なって優秀な治療効果を挙げた。

 @水銀剤を中心に、口中がただれ水銀中毒になるまで駆梅療法をする。
 A一旦、水銀剤を休薬し、その間に水銀中毒を解毒する吐剤や下剤を与える。
 B対症療法を併用する。       おおむねこのような治療法です。

一般に梅毒患者の多くは5年10年と長期にわずらい廃人となり死亡した。

梅毒は過去の歴史にはなかった疾患であるため、治療法もなかった。
それで陰陽、五行で組み立てている中国医学を空理空論であると排撃した。

従来の医学に革命をおこし医学そのものを変えなければ多くの病人は治らない
と考えて(人生50年といわれる時代に40才ちかくで)京都にのぼった。

全身のいたる所に症状がでる梅毒のただ中にあった東洞からみると、万病が一毒だった。
これが東洞のいう「万病一毒説」です。

梅毒だから外から見て知ることができる、「病の応は大表にあらわれる」 とし
現実の見証をもとに方剤を与える方剤中心の実証的医学への革命を目指した。

また、駆梅療法では水銀中毒近くにまでなるため
「薬、瞑眩せずんばその病、癒えず」 といった。

食道癌や胃癌、肝硬変、肺結核などと、梅毒とを鑑別できないこともあり
その場合、東洞の排毒療法を受けた患者は即死だった。ゆえに東洞は「天命説」を唱えた。

当時、東洞の破天荒な医説に対する評価は賛否両論があったが、
これらのことから、東洞が、証から病名も陰陽も排除した理由が分かります。

それでも証をできるだけ正確に把握し、病名(病気)を識別できていれば、
肝硬変末期の人を梅毒と間違え、水銀剤を与えて、死期を早めなかったろうし、
同じ病気でも進行度合いや病態差を知れば、より的確な治療ができたはずです。

「医の学や方のみ」と東洞は述べている。しかし医の学は方のみではなく、
むしろ病態が先です。方は証に随って処するものなので、処方は後にあるべきです。

また、個々の病状ではなく、その症状を呈する病態こそ大切です。
出来る限り正確に病態を把握し、処方する薬物の薬理作用を明確にしたい。

事実から遠ざかる架空の理論を除くのはよかったが、
中国医学の事実に基ずく分類法を取り入れるともっとよかったのではないかと思う。

一方で薬理作用(薬能)を求めた点では
東洞の革命は医学の革新であり、単なる復古ではないと評価できる。

東洞も排毒療法で治る病、治らない病を分類し、さらに治らない病の研究をし、
一方で、個々の薬物の薬能を知って方剤を組んでいくまでになればよかった。

しかし東洞1人の力で、また未開の江戸時代では無理からぬことだったのでしょう。
ところが、現在でも日本漢方の中には東洞の唱えた方剤中心主義の人もいる。

吉益東洞の二代目南涯は、
東洞の病名をとらず陰陽、虚実まで除くやり方は行きすぎだとし、
気血水分類を加え「傷寒論」「金匱要略」主義となり、医学革命が復古へと後退した。

南涯には儒医や考証学派の影響が大きかったと思う。
儒を主とする儒医や考証学派は臨床の実践家というより本読み学者です。
そのため医学の革命よりも儒家の復古説に従って「傷寒」「金匱」そのものを高く評価した。



吉益東洞の出現以後、江戸時代中・後期の漢方界は大きく変わった。

古方派は、吉益東洞に代表される現象論派と
山脇東洋に始まる実体論派の二つに分かれていった。

山脇東洋は内経系の臓腑経絡説に疑問を持ち、
観念的でない実際の人体構造を解明するため死体解剖を行なった。

東洋は解剖所見から「蔵志」2巻をつくったが、
これは後の前野良沢、杉田玄白、中川淳庵らによる「解体新書」の翻訳、出版につながる。

曲直瀬道三流の後世派も陰陽五行説などの中国思想を次第に嫌って、
実際の臨床経験に基づく口訣書を著し、日本化の傾向を示すようになった。

理論後世派はほぼ消滅し、東洞の極端な医説に反発する医家は
古方派医学と後世派医学又はオランダ医学とを折衷するといった展開を見せた。

古方後世折衷派には、望月三英、福井楓亭、和田東郭など、
漢蘭折衷派には、片倉鶴陵、華岡青洲、本間棗軒など、
考証派には多紀元簡、多紀元堅などがそれぞれ属する。

幕末の名医といわれた浅田宗伯は一般に古方後世折衷派とされているが、
古方流に後世派の処方も運用したので、むしろ古方派というべきでしょう。

1849年、長崎で天然痘予防の牛痘接種法が成功し、急速に各藩に広まり、
江戸時代末期にはオランダ医学の有用性はもはや無視できない状況だった。

明治政府は1870年佐賀藩医の相良知安らの進言に基づき、
医学教育はドイツ医学に範をとることを決定した。

江戸時代に権力の座にあった後典医達は古方やオランダ医学を圧迫してきた。

その圧迫されてきた蘭医を支持する者たちが明治政府の医政を指導し漢方を排した。
「江戸の仇を長崎で討った」ようなものだともいわれる。

「これは政治的に葬られたものであって、
漢方が医術医学として簡単に西洋医学におとるかは疑問だ」 という大学教授もいる。

漢方存続運動はさまざまな形で行なわれたが、1895年第8議会において、
漢方を医師開業試験科目に加えるとした医師免許規則改正法律案が否決されて、
公的には終止符を打った。

このような状態で漢方がなぜ生き残ることができたのだろうか。

西洋医学は病を病変という形態的変化で据えることは得意でも、
東洋医学のように機能的変化を重視し、人間の身体まるごとをみつめる全体観がなく、
それに対応する処方をもたなかった。

そのため婦人科その他の疾患で西洋医学に見放され漢方治療を求める患者が多く存在し、
生薬を取り扱う薬局や薬店のなかで漢方が存続していた。

明治30年代は漢方が最も衰退したころですが
こうした沈黙を破ったのが和田啓十郎(1872〜1916)の著書「医界の鉄椎」です。

この書によって、西洋医学の限界と漢方医学の優秀性が認識され、
西洋医学の限界を認識した多くの医師たちが、陸続と漢方を志した。

昭和初期、これらの医師たちによって漢方医学を復興しようという機運が生まれ、
多くの派閥を越えて一つにまとまろうという動きがでた。

終戦後、昭和25年には東洋医学会が作られた。
有力者同士で漢方は学であるか術であるかの『学術論争』が起き、
『術派』が勝って『学派』が会を去った。

かくして日本漢方は古方派が主体となり、学よりも術を重んじる風潮となった。

しかし日本漢方は「傷寒論」「金匱要略」の処方を中心に口訣で応用面を発展させたが、
西洋医学のように病態把握のために理科学や工学をとり入れることもなく、
生薬の薬能や方剤学などもほとんど顧みられることがなかった。

1960年台の半ば、漢方製剤の近代化をめざして漢方エキス製剤が開発され、
1976年9月薬価基準に収載されて、全国の病院、医院にも普及するに至った。

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病の正しい認識

病人を治すためには、次の3つのことが重要です。
 @病に対する正しい認識をもつ。
 A患者の病態を出来る限り正確に把握する。
 Bその病態に最も適合した方剤を与える。

誰が見ても当然のことなのですが、現実にはその当然のことがなされていません。
1つ1つを検証すると、漢方の修正すべき点が明らかになります。

@病に対する認識

病人を治療する上で最も大切なことは、
その病をどう認識するかということです。

病そのものを正しく理解しなければ治療の方針も立たないし、
ともすると、その治療によって身体に害を及ぼす医原病さえも生じてしまう。

相手を知らなければ、どう戦うべきかも分からない。
孫子も曰く 「彼を知り、己を知れば百戦百勝す」と。

例えば高血圧なら、血圧というものをどう考えるか、
「血圧が高いなら下げれば良い」 というのは稚拙で短絡的すぎて危ない。

例えば老人で 脳動脈が硬化している場合でも、心筋梗塞を起こしそうな時でも、
血流量がすくないと困るため、身体は圧力をかけて血液を流そうとします。

その結果として血圧が上がる。

このような病に対する認識があれば、
血圧は無理に下げないで 血流を良くしてあげればよいことがわかります。

血流がよくなれば、上がる必要がなくなった血圧は 自然に下がる。

血流が悪いため 血圧が上がっているときに、
悪い血流を改善しないまま 血圧を無理矢理下げると、、、、、

本来、必要な血液の拍出力を下げるため、血の巡りはもっと悪くなり
脳梗塞になり得るし、ボケにつながりかねませんね。

風邪に対する 解熱剤を含むカゼ薬も 抗生物質もおかしい。

身体が カゼウィルスをやっつけるために頑張って出す熱を、
むやみに解熱剤で下げてはいけない。

カゼの初期は 身体が熱を上げようとする力を助けて熱を上げてやれば
カゼウィルスをやっつけ、熱は上がる必要がなくなって下がるのです。

婦人病や肝臓病、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピーに対する認識も
また 癌や抗がん剤に対する認識も少々洗い直すべきかと感じます。

すこし話がそれてしまいました。 話を漢方に戻したいと思います。


中国では 思弁による学問が発達し、
その医学は 陰陽五行説によって組み立てられている。

客観的事実よりも 想像による理論が進歩しすぎたため
想像による推論や、事実とは異なる理論に注意が必要であります。

中国医学の基礎理論の一つに五味五行説があり、生薬や食物の味を五つに分類して、
どの味がどの臓器に対して効果がある、として理論を展開しています。

ところが今の中国の本草学(日本で言う薬物学)で通用している味と、
実際に噛んでみた味とは ほぼ30%は一致していないと言われます。

肝臓に効くみたいだから本当は苦くても、味は酸、
ということにして、薬効から強引に生薬の味を歪曲している。
これではまるで土台のない高層ビルのように思えます。

五臓六腑にしても、現実の内臓ではなく、
五行の相生相剋によるもので、想像の世界で空理空論だといわれます。

顕微鏡や血圧計、CT、MRなどもなかった時代では、
やむを得ないことかもしれません。

ところが、空理空論であってもその全体観・大局観、そしてすぐれた治療法ゆえに
慢性病や難病が、あざやかに治ったりすることも少なからずありますから
漢方は治療医学として脈々と現代にまで伝えられてきたのでしょう。

それでも、現在も昔の時代に固執して、
人体構造・生理・病理も無視していては医学の進歩も発展もありえない。

やはり より正確な真実の情報に基づいて、
その上につくられた理論や学問でなければならない。

昭和の漢方の大家は、
「漢方の道を志すなら、漢方一筋に研究すべし」と教えた。
山本巌先生は
「漢方の道を志すなら、西洋医学も研究すべし」と教えた。

病人をより良く治す医学を築くためには、
優れた診断学である西洋医学の 病の認識を土台にして、
優れた治療学である漢方医学の「気・血・水」「陰陽・虚実・寒熱」の認識を融合したい。

まずは、病に対する認識を洗いなおす必要があるようです。

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病態を正確に把握

病人をより良く治すためには、病に対する正しい認識をもち、
患者の病態を出来る限り正確に把握することが重要です。

病態の把握が明確であればあるほど、より良い治療法を施しやすい。
そのための情報は客観的・定量的で正確なものが多いほどよい。

そこで西洋医学の病態生理を診断の主体とし、東洋医学の病理観を加えたい。

漢方(や中国医学)の原始的な五感に頼る四診(望診・聞診・問診・切診)だけでは
情報が主観的・定性的であるため病態を正確に把握できないことも多い。

腹証ひとつをとっても、
古来、数ある腹診書の腹証はみな異なり、ひとつとして同じものはない。

胸脇苦満というのは、腹診でとらえるのではなく
胸や脇が膨って(膨満感)苦しいという自覚症状とすればよいでしょう。

また腹診で少腹急結がなければ桃核承気湯が使えない。というのもおかしい。
これでは、せっかくの桃核承気湯の応用がきかなくなってしまう。

外から腹を診て、それで病気がわかり薬方が決まれば便利ですが、
現実はそうはいかないことが多い。

当たることはあるけれども、当たらないことが多くなると、
その診断法は採用しにくい。

また脈診でも、妊娠中であるとか、出産1ヶ月以内ということもわかります。
そして外感病の表証や、寒証、熱証の鑑別もできるけれども
脈を診て病気の全部が判断できるとなれば、それは妄想です。


胸脇苦満や少腹急結などの腹診や妙な脈診などにこだわっていては
方剤は自由自在に使えないし、様々の疾患に対して応用もきかない。


   中神琴渓はある人が方証相対の説を否定する理由を質問した時、

   「例えば、ここに涙を流して泣く者がいたとしよう。
   これを見て、いつでも悲しいから泣いているのだと思ったら、それは見当違いになる。

   その理由は、田舎の人が本願寺を詣でて泣くのは『ありがたくて』だし、
   芝居を見て泣くのは『面白くて泣く』のだし、
   腫物があって泣くのは『うずいて痛む』からだし、
   昔話を読んで泣くのは『感ずることがある』からで、
   また『神経過敏で泣く』人があり、『酒に酔って泣く』人もある。

   これらを、親を失ったり、あるいは子と別れて泣く者と同じように
   悲しんでいるといったらおかしなことになる。

   方証相対にこだわり、前後も考えずに病人を診察したならば、
   芝居を見て泣くものにも その背中を撫でて慰め
   『生者必滅、会者定離はこの世のならいだから、あきらめなさい』
   というような間違いをしてしまう。

   また、楠木正行は幼い頃の遊びにも、
   木の枝をもって剣術の練習をして父の志を受け継ごうとした、と昔話でもほめている。

   近ごろ、私が町を歩いていると、木の枝を持って遊んでいる子供がたくさんいる。
   これは芝居を見て真似しているのであろう。
   それを見て楠木正行と同じ志のある子供だとほめたらおかしなことになる」
                                            と言っている。    
                                  (中神琴渓・小田慶一編訳より転載)


昭和の漢方をリードした人たちは
「証」とは証拠・確証などという意味があることから、
「証」を症状や症候群の意味から漢方的診断に昇格させた。

患者の愁訴を中心に漢方的診察をして、腹証や脈証より得た所見から
実証とか虚証、陰証、陽証といった「証」を診断している。

その「証」の診断さえ誤らなければ
証という鍵穴に対して鍵ともいうべき「方」があり、
その方剤を与えると病は治る と考えられている。

ところが「証の診断さえ誤らなければ」であって
漢方のような古代の病態把握のままで「証の診断を誤らない」のは至難の業です。

昔は 結核も癌も梅毒も正確には鑑別できなかった。
実際のお腹の中を知らなければ 胃潰瘍か胆石かも分からない。

漢方や中国の医学がチョンマゲ時代も現在もあまり進歩しないのは、
いつまでたっても誤った理論を捨てないからだと思える。

この誤った理論のために、病に対する認識も病態把握も難しくなり
そのために優れた漢方の治療法が生かされないのはもったいない。


まずは長年にわたって複雑化されている東洋医学の余分なぜい肉を排除し、
初学者でも理解しやすいように合理的でシンプルにして

そして西洋医学の病態生理や、進歩した診断学も取り入れたい。

病態の把握が明確であればあるほど、より良い治療法を選択しやすいのです。

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病態に最適の方剤を

B病態に最も適応した方剤

病人を診て、得られた情報(証)を基に病態を把握して、
その病態に最も適合した方剤をつくるためには、薬物の薬能を熟知して(薬物学)、
どのように組み合わせて方剤をつくるか(方剤学)を理解しなければならない。

「随証治之」とは 病人の証に随って、最適の方剤を組み立てて治すということです。
「方証相対」とは 方剤を固定し、その方剤に相対応する病人をさがすことになります。

現在の(エキス方剤による)漢方は方剤を固定しているため、
方証相対ではあっても、随証治之にはなっていない。
これでは、人に合う服をつくるのではなく、服に合う人をさがすレディメイドです。

たとえ病名は同じでも、病態は多様で個人差もあり薬物に対する反応も異なる。

「随証治之」とは既製の方剤を与えることではなく、
その病人の証に随って最適の方剤をつくるオーダーメイド治療のことなのです。

たとえ既製の方剤を使用するにしても、
薬物の薬能や方剤の内容を熟知して 証に随って自在に応用して欲しい。

しかも現在の固定されたエキス漢方方剤のほとんどは
伝染病である急性熱性病の「症候群」に相対応する「方剤」
という条文形式で書かれた古代の書物『傷寒論』の漢方方剤なのです。


 中国では、紙が作られる以前は 竹簡や木簡に記載していた。
 だから『傷寒論』も長い文章を書く余裕がなかったのでしょう。
 竹簡などに記載した『傷寒論』を漢の時代になって紙に書き写したと思える。

 『傷寒論』には、薬物の薬能(薬物学)や、その薬物をどのように組み合わせて
 配合して方剤をつくったか(方剤学)が書かれていない。

 たとえ記載はされていなくても、薬物の薬能や、
 その方剤を組み立てた方意がなかったわけではない、と思う。

 薬能や方意がわからなくても病態の変化をよく診て、その証を正しくとらえれば、
 傷寒という感染症には ある程度は治療できるようにつくっている。
 そして、その全過程に百方に余る方剤を用意している。

    『傷寒論』の著者は、本の冒頭に次のように記入している。
      『私の一族はもと二百人に余るほどいたが、十年もしない間に
       その2/3が死亡した。傷寒で死んだのはその70%だった。
       苦しんで病死した惨状や横死を助けられなかった悔しい思いから、
       発奮努力してこの書をつくった』

 多くの医師が今すぐに薬能や方意を理解できはしないし、病は待ってくれない。
 そして、医師は能力がなくても、病に立ち向かわなければならない。

 本当は、病態に応じて処方をつくれるような実力を持ってほしいのだが。
 その時、最小限これだけの知識があれば、と著者は思ったのではなかろうか。

 『傷寒論』が指示の書となったのは、紙に余裕がなかったことと
 自ら処方する能力のない医師にも、傷寒を治療しなければならないこと
 が最大の急務だったためだろうと考える。

昭和の漢方家たちの多くが『傷寒論』そのものを尊信し、
その著者とされる「張仲景」を医界の孔子のように尊び、
仲景の言葉は一字一句がみな金科玉条、厳密で絶対的なものだとした。

こうした傾向がまだ現在にまで残っていて、本当に残念に思う。
現代でも『傷寒論』を信仰する愚かさがまだ抜けていない。

日本では、傷寒論をそのまま鵜呑みにして
その中にある方剤を 傷寒のみならず万病に用いる。

傷寒という疾病に対して『傷寒論』の指示どおりにその方剤を用いるなら、
方剤の中味が分からなくても、効果はあるように『傷寒論』は作られています。

しかし、伝染病である急性熱性病の『傷寒論』を万病に応用するのは無理がある。


  和田東郭は『傷寒論』を万病に応用することを
  「すり鉢を踏み台にも使える」と例えたが、
  それは すり鉢本来の使用法でなく、あくまで便法でありましょう。

  たとえば、ミカン箱を拾ってきて 机や下駄箱の代用にするのではなく
  机や下駄箱は、本来の機能と使用する人の意図に応じて設計して作りたい。


そのため今でも、薬物の薬能や方剤の内容を熟知している漢方家は多くはないし
随証治之(オーダーメイドの方剤をつくること)ができる医師・薬剤師は少ない。

また個々の生薬の薬能を知らず、何故それらの生薬を配合して方剤を作ったか、
という研究が未だ充分なされていない。要するに方剤もその中味も分かっていない。

方剤そのものの中味が分からないまま、
既製の方剤を単位として、病人の証から方剤を推測して用いる。
ちょうどクイズ問題や当て推量のようなもので、どうしても無理がある。


漢方にはどうして立派な医学がつくられないのだろうか。

その一つには、昭和の漢方を指導されたリーダーに、
漢方を科学化すべきだという一派と、いやあくまで術として残そう
と主張する人たちの間に対立が起き、学・術論争があって、
後者が勝利をおさめたことにもある。

だから『傷寒論』のような古代の原始的医学から一歩も踏み出せない。
現在でも、口訣や秘伝の類から進歩していない。

丸太の木材や、かつらでつくる吊り橋などは技や術でもよいが、
明石海峡にかける橋になるとそうはいかない。

学と術は両輪のように大切です。
術はその一人一代かぎりですが、学は積み重ねもできるし改革もできる。

漢方も常により良い医学をつくっていかなければならないと思う。

近年いろいろな書や文に、漢方とは、本来「証」を診断して、
その病人に(既製の)方剤を与えるものだ、
とか言われているのを見る。 果たしてそうであろうか。

「証」とは病人から得られる情報の全てであり、
情報は古来の四診によるものだけでなく、近代的技術も利用して正確に把握したい。

その病態を出来る限り正確に把握し、その病を認識し、判断して
それに応じて最適の方剤をつくって与えることが大切です。

方剤を固定すれば、レディーメイドと同じで必ずしも病態と一致しないが
既製方剤の合方や加減により、イージーオーダーのような方剤に近づく。

そのためにも私たちは薬物の薬能と方意を熟知しなければならない。

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「証」と「病名治療」と

漢方は「病名分類・病名診断をせず、証(症候群)を診断して治療する」としています。
「証」を症候群から漢方的診断へと昇格させたのは、昭和の漢方家たちでした。

漢方を西洋医学と対比させて、西洋医学が病名診断・病名分類であるのに対し、
漢方は証を診断するのが特徴で、そしてそれが漢方のすぐれた特性だと主張した。  

ところが中国の医学も、もともとは病名分類だったのです。

『傷寒論』の傷寒とは急性熱性疾患で、腸チフスに似た疾病に付けた病名です。
太陽病から厥陰病までも病名であり、そして『金匱要略』もすべて病名分類です。

病名分類を行なってその病の中でさらに証による細分化をやっている。

太陽病の中でも病人の正気や病邪の強弱また外環境によっても病態は刻々と変化します。
『傷寒論』では、太陽病をさらに中風と傷寒に分け、
詳細な分類を行ない、症候群と相対する方剤を記載している。

西洋医学と対比して漢方の特性を主張するために、本来あるべき病名診断を否定すると
病を正確に把握することが困難になり、ひいては治る確率まで下げてしまう。

目の前に病人がいるにもかかわらず
西洋医学や漢方医学が、その優劣を主張しているヒマはないと思う。

ただ「病を治す」ために、よい手法があるのなら、
それらを集積、統合して、より良い医学を作れば良いと思う。

やはり、病名分類も重要視して病態生理をできるだけ正確に把握する。
その上で漢方の病理観を加えれば、漢方のすぐれた手法を縦横無尽に発揮でき
その病に最適の方剤を処方し治療できる。

たとえば自己免疫疾患でも癌や乾癬、喘息、アトピー、アレルギー性鼻炎でも
病気の正しい認識をもち、病態をより正確に把握できれば最適の治療を施しやすい。


「証」を強調したもう一つの理由は、民間薬(療法)との区別化のためかもしれません。

民間薬とは、民間の言い伝えによって「〇〇、××といった症状の者には、この薬がよい」
というように使用し、効果も根拠もあいまいで、薬物も単味か2〜3味を配合したものです。

漢方は医学書の原典に法り、方剤を証に随って用いる。
即ち漢方では証を診断して方剤を用いるから、民間療法より高等なのだといった。

しかし、漢方も元々は中国での経験の集積から作られたものです。

薬物個々の薬能(薬理作用)を知り、どのように配合して方剤を作ったのか、
ということを理解しなければ民間薬も漢方も医学的には同じで、
簡単な薬物の組み合わせか、方剤という薬物の混合体か、だけの違いに過ぎない。

漢方的診断である「証」も大切だけれども
薬物個々の薬能や、生薬の組み合わせの方剤学をおろそかにしていては
漢方を医学と主張するにはおこがましい気がします。

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異病同治と同病異治

異病同治とは、異なる病気にも同じ処方で治療するということです。
たとえば大柴胡湯は高血圧症にも用い、胆石症や胃潰瘍にも用いる。
病人を大柴胡湯の証だと診断したなら、病名に関わらず大柴胡湯によって治療する。

同病異治とは、病気は同じでも証が違えば治療法が異なる。
たとえば同じ喘息でも、証によって
六君子湯、麻杏甘石湯、小青竜湯、半夏厚朴湯などを使い分ける。

それが漢方の特徴であり特性であると言う。

ところが西洋医学の抗生物質による治療一つ取り上げても異病同治で、
肺炎でも膿痂疹や腎盂炎でも同治のこともある。

また同じ病の膀胱炎であっても画一的に全く同じ治療はしない。はずです。

一つの生薬には多種類の成分が含まれていて、種々の異なった作用を持ちます。

たとえば半夏には鎮静作用もあり、鎮咳作用もあれば、止嘔作用もある。
従って、半夏は鎮咳薬にも配合され、嘔吐を止める胃薬にも使用される。

地竜は一般に解熱作用があり、発熱患者に用いる。
また筋肉の痙攣を緩める作用があるため、高熱時の痙攣に用いる。
脳出血のあとの痙攣性麻痺にも、パーキンソンにも、喘息の気管支痙攣にも用いられる。

檳?子には駆虫作用があり、中医薬学では多くは駆虫薬に分類され、
条虫の治療に用いられる。消化管の蠕動を亢めるため瀉下薬にも用いられ、
逐水作用もあるため、水腫浮腫にも用いられる。

麻黄には発汗作用・利水作用・気管支の痙攣を緩める作用もある。
小青竜湯は麻黄を配合していて、熱病のときには発汗解表剤であり、
浮腫に対しては利尿剤でもあり、また痙攣性咳嗽に対しては鎮咳剤でもあります。

ところで、麻黄は脉を速くし、発汗過多や心悸亢進、不眠を訴えることもある。
これらが病人の体質や、量の多い時にあらわれる。ということ知って前もって対応すれば
漢方には副作用は発現しないし、
反対に麻黄は眠くなると困る受験勉強や仕事中の風邪に便利に使えます。

ともあれ、生薬は一味でもいろんな作用があり
それらを組み合わせた方剤では、さらに複雑な作用をもつものです。

結局、異病同治や同病異治を漢方の特性であり不思議に思うなどというのは、
薬物や方剤の作用、そして病態生理をよく分かっていないためではないのだかろうか。

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各論−はじめに−

       病人をより良く治すためには

病の認識、正確な病態把握、そして最適の方剤を知りたい。

そのためには西洋医学の病態生理、病の認識と、その手法を充分に理解した上で
漢方のすぐれた病理観、病態の把握、そして治療方剤を活用したい。

病気について考える場合
 
 @病邪が外から正気を侵して発生する「外感病」
 
 A栄養失調、栄養過多、ストレス、不摂生などの「内傷の病」
 
 B身体内部の病邪によって発生する「雑病」

などに分けて考える。

正気と邪気の抗争である外感病は「正気の虚実」と「邪気の虚実」を見つめる。

内傷の病は正気の虚が問題で、「気虚」、「血虚」、「陽虚」、「陰虚」に分類する。

雑病は「血」、「水毒」、「気滞」なども含み、正気を助け邪を除く。

邪を除く方法として、汗、吐、下、和、清、消、温などがある。

そして疾病の性質を示す分類として「寒熱」は重要であり
疾病の状態を「陰陽」にて分類する。

漢方を学ぶとき、そこには日本漢方と中国漢方があり
そのどちらにも一長一短がある。けれども、できれば統一したものをつくり上げたい。

ここでは空論となりかねない五行説などを極力除いた上で
整然とした中国医学の類別法を活用したい。

以下に
「外感病」、「内傷の病」、「雑病」
「虚実」、「瘀血」、「水毒」、「気滞」、「寒熱」
「気虚」、「血虚」、「陽虚」、「陰虚」についてすこしずつ記していきます。

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従来の虚実論

虚実の判定は漢方の診断治療の根本をなすものです。
ところが漢方を医学と言うにしては虚実についての認識が統一されていません。

以下、千差万別ですが代表的な書物から虚実をみつめてみましょう。

    『漢方診療の実際』
 病情(病の状態)を明らかにするために、寒熱・虚実を分ける。

 陰陽という概念は、時には病位を現し、時には病情を示すために用いられる。

 虚とは病に抵抗していく体力の虚乏している状態をいう。
 実とは病に抵抗する体力の充実している状態をいう。

 一般に頑強な体質の人を実とし、
 虚弱な筋骨薄弱な人を虚とする説が行われているが、
 平素の体質は病気になった時の虚実に必ずしも一致しない。

 しかし、虚実も陰陽も同じく段階があり、
 かつ虚中に実があり、実中に虚があるから、
 これを看破するには多年の経験を必要とするのは言うまでもない。

    
『傷寒論梗概』(奥田謙蔵著)
 虚とは内容空虚の義で、生体に於いては、精気の異常に衰憊せる状態である。
 故に病に在りては、精気の挽回を図りつつ
 緩和に邪毒を排除しなければならぬのである。

 実とは内容充実の義で、生体に於いては、邪毒の体内に充満せる状態である。
 故に病に在りでは、発汗、吐下等の方法に因って、
 速やかに其の邪毒を排除しなければならぬのである。

 病が若し身体の欠陥に乗じて起こる時は、或いは陽病となり、或いは陰病となる。
 けれども、邪毒は一で、固より陰陽があるわけではない。
 唯だ人の体型、気質に随って寒と熱とに分かれるのである。

    『皇漢医学』(湯本求真著)
 虚実の虚即ち虚証とは空虚の意にして
 病毒未だ去らざるに精力既に虚乏せるものなれば
 脉は細、小、微、弱となり腹部も亦軟弱無力にして恰も綿花を按ずるが如く
 弾力消失せし護謨球を撫するが如し

 故に勿論吐下すべからず発汗も亦丈に戒慎すべく
 主として和法を施すべきものなり乏に反して実即ち実証とは
 充実の義にして病毒体内に充実するも体力猶是れと対抗しつつあるものなれば
 一般に壮実の観あり実、長、大、滑等の脉状を呈し腹部は緊満して力あり
 或いは堅硬にして抵抗強きものなれば汗吐下を徹底的に
 行わざるべからざるものなり。

    求真医談(漢方と漢薬誌)
 陰陽虚実は要するに一つの素質であって
 此の素質に応じて相違があり従って治療は異なる。

    荒木正胤
 虚とは病に抵抗する体力が弱い状態をいい、
 実とは病に対する抵抗力の充実している状態。病邪が体内に充満し、
 これを汗吐下の瀉法ですみやかに排除できる状態をいう。

 一般に頑強な人を実とし、虚弱な人を虚とする説があるが、
 平素の体質は病気になった時の虚実とは必ずしも一致しない。

 平素実証体質のものも虚証型の病情を呈することがある。
 また体の一部が虚し、他の部分が実していることもある。

     『臨床薬物証療学大系』
 虚とは空虚を言い。実とは充実を言う。
 しかし、充実した状態が健康というわけではない。

 健康は虚実のいずれの方向にも偏せず、ほどよく緊張が保たれた状態をいう。
 太りすぎていても、痩せすぎていても健康とはいえないのと同じである。

    『臨床医の漢方治療指針』
 「実とは邪気の充実するを云う」と説明され、
 体力気力がいまだ衰えず、生体反応の強い状態をさすのである。

 虚とは「精気虚するなり」と説明され、老人などの生体反応の弱いものをさす。

 往々にして生来虚弱な人の病を虚と解釈する向きもあるが、
 生来虚弱でも病気になると高熱を発することがある。
 この状態は実というべきである。


 「傷寒論」では
 このような解釈(「傷寒論弁正」「傷寒論述義」「傷寒論織」など)であるが、
 他方、先天性の虚弱な体質を虚と講する場合があることも事実である。
 他方、虚はまた空虚の意味にも使用される。

    『漢方保険診療指針』
 漢方治療はまず病人を陰と陽に分け、
 さらに防御反応を行っている生体の状態より虚と実に分けて治療する。

 虚は疾患に対する抵抗力の衰えている状態で、
 声が小さくて弱々しく、息切れして
 長く話せない、おとなしくじっとしていることが多く、すぐ疲れる、顔色が悪く
 食欲がない。動悸がうったり、自汗、盗汗があり、
 時々膨満感が起こり喜按(おさえると気持ちが良い)、
 脉に力がないなどの症状があるのを虚証という。

 実はまだ防御反応の強い状態で、声が大きく張りがあり体力もある。
 また症状も激しい。煩燥、高熱、激しい疼痛、
 膨満感があり拒按(おさえられるのを嫌がる)、便秘傾向、
 脉に力がある、時には譫言するものもある。
 これ等の症状のあるものを実証という。

 このうち、自汗、盗汗の有無、膨満感の経時的な変化、
 喜按か拒按か、脉の力の有無などが虚実の判定に役立つ。

 また虚証は発病後の時間の経った疾患に多く、
 実証は急性の疾患に多いこと、もともと体質が虚弱であるかどうかも参考になる。

 治療は虚証では温め補う補法を行い、
 実証は汗吐下などの攻撃的な療法を行う。


以上に述べているように、千差万別、支離滅裂で
「虚実については、いろいろの説があって定説はないが・・・」
と大塚敬節先生の言ったように漢方には定説がない。

定説や定義が明確でないのは何も虚実に限ったことではないけれども、
漢方を医学とするには定義を定めていかなければならない。

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山本巌の虚実論

ここで、山本巌先生の虚実論を紹介します。

従来の漢方を勉強している人には カルチャーショックで
それこそ「目からウロコ」状態になるかと思います。


大略
虚とは足りない、不足している。
実は満ちている、充満している、溢れる。
といった意味に使う。

日本の漢方では虚実について定説がなく、
多くの人が虚実は正気(体力、気力、免疫力)の虚実をさしている。

病人を虚証と実証に分類していて、
正気が虚している病人は虚証であるとし、
正気が充実している病人を実証として治療する。としている。

ところが、よく考えてみるとこの理論はおかしいことに気がつく。

治療法は、虚は補い実は瀉すという。
虚証なら正気が虚しているので、正気を補うのは当然である。

ところが実証に対する治法は瀉で、汗、吐、下を行う。
もし正気の実なら、なぜその正気をワザワザ瀉さないといけないのだろうか。
という疑問が生じる。

日本漢方では虚実は正気の虚実だけをさしていて、
中国漢方では、虚は正気について実は邪気について、だけを述べている。

虚実は 正気にもあれば邪気にもある と考えるほうが良い。

正気に虚実があるように、病邪(の毒力)にも虚実はある。
そして、傷寒のような外感病・感染症などでは正気と病邪の抗争として捉える。

陰陽について

陰とは、日陰・日の当たらない所・寒い・消極的な意味がある。
陽とは、日当たりのよい場所・温かい・積極的な意味がある。

疾病の時は、闘病反応が強くて熱は高く、症状が激しいのが陽証で、
正気と病邪の戦闘が熾盛です。

同じく疾病で、正気の病邪に対する闘病反応が弱く、
病状が静かである時は陰証です。

陰陽は 病状を指している と考えたほうがよい。

外感病の陰陽と虚実
       (病邪が外から正気を侵して発生する病を外感病といいます。)

傷寒のような外感病は、病を正邪の抗争として捉えると、
正気(闘病力、体力)にも虚実があれば、病邪にも虚実がある。



@正気が実している時、病邪が弱く虚であれば、発病しない。
 
 正気の実している人でも、コンディションが悪い時は、
 正気が一時おとろえて病邪に乗じられて発病することがあります。

 食べすぎ、飲みすぎで胃腸を痛める。風呂に入ってうたた寝する。
 寝不足。また、手術や放射線、抗がん剤などによっても虚します。

 この場合、正気が 恢復、充実してくると病邪を圧倒して治癒する。

Aもし、正気が実していても病邪が実の場合は、
 発病すると正と邪の抗争反応は強く、症状は陽証を呈し陽病に分類される。
 
 傷寒論では病位によりさらに太陽・陽明・少陽の三陽病に分類している。

Bもし、正気が虚の場合、病邪が実であれば
 病邪に蹂躙され闘病反応は弱く、症状は陰証で陰病となり死亡する。
 
 陰病ではまず正気を補い陽病とし、そこで病邪を瀉す。と言う手段をとります。

C癌や糖尿病の患者・老人・免疫不全や免疫力の低下した者のように、
 正気が虚している時、病邪の弱い弱毒病原体の感染の時は、日和見感染のようになる。
 細菌に侵されても、闘う力がないため、病態は静かで症状をあまり呈さない。
 
 現在の感染症は、
 昔の伝染病(古典的なチフス、麻痺、コレラ、痘瘡、赤痢など)よりも、
 MRSA(院内感染)や緑膿菌・日和見感染症などの
 正気の虚による弱毒性の感染などが治りにくく、問題になっています。

 このときには、虚した正気を補って正気を実にするだけで、
 正気が邪気を叩くため病はよくなる。

 問題になっているMRSAは、邪気を叩く抗生物質では良くならなくても、
 正気を補う漢方薬で治るのです。これは西洋医学にはできない手法です。

D正・邪ともに実の場合は陽病となり、最盛期は陽明病でAの状態になる。
 この時もし正気が急激に失墜すれば(ショックを起こして)厥陰になる。
 (抗がん剤などは正気を急激に弱めるので、注意が必要です)
 この場合はまず正気を補って陽明病とした後、病邪の実を瀉す。という手段をとります。

内傷の虚実

内傷は正邪の抗争ではなく、自分の体が弱って病気になる。

正気が充実していれば問題がなく、正気が虚している時が問題です。
正気の虚は補わなければならない。

この正気の虚を分類して気虚、血虚、陽虚、陰虚とし、
それぞれ補気、補血、補陽、補陰して治療します。


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虚実による治療

日本の漢方家たちのほとんどは
正気(人間の体力・闘病力、免疫力)の虚実をもって虚証・実証としている。
虚証とは正気の虚しているもの、実証とは正気の充実しているものを指しています。

これは昭和の漢方家たちが、
陰陽・虚実・寒熱・表裏といった中国の八網分類の虚実から思いついて、
たとえば大柴胡湯は実証の病人に用いる方剤、というような分類をしたことに始まります。

しかし正気にも虚実があれば、病邪(例えば最近やウィルスの毒力)にも虚実はある、
と考えるべきではないでしょうか。

今の漢方家のように正気の虚実だけをみて体力の実している者にだけ
麻黄湯とか大柴胡湯を用いるというのはどうでしょうか。

正気が虚していて邪気が実している場合、正気を補うだけでは治らなくて
病邪の実を瀉して初めて治ることがあります。

「日本医師会雑誌」の「古医書における漢方の使い方No.5」から古人の治験例で、
体力・正気の虚の病人に実証に用いる大柴胡湯を使用した3例をあげました。


症例@:古方便覧/六角重任(年代末詳、本書の序文に1781年の年記あり)
 
 50歳余りの酒客が、長らく左脇下が盤の大きさに硬満し、
 腹皮(腹直筋)が攣急して時々痛み、煩熱、喘逆してとこの臥することができない。
 顔色は痿黄で、身体もやせ衰えた。
 その後、春になっても潮熱を発するようになり五十日ほど経過した。
 私が大柴胡湯を与えると、およそ五十剤ばかりでその熱はやや下がり、
 また時々、紫円を与えて治療した。患者は私の指示どおり服用を続け、
 一年ばかりで宿痾は全治した。

  ┌患者の顔色は痿黄で、身体も痩せ衰えた。
  |・・・これでは正気(体力)が実しているとは思えない。
  |だが左脇下が盤の大きさに硬満し・・・即ち、左の脇下に病邪が実している。
  |そしてこの病邪を瀉す目的で大柴胡湯を与え、更にまた紫円で下している。
  |正気は虚しているが、病邪の実を除く目的で大柴胡湯を与えている・・・
  └のではないだろうか。


症例A:「続建珠録」の大柴胡湯治験/吉益南涯(1750〜1813年)

 浪華島之内の買人・伊丹屋某の治験
 腹痛し、腹中に一小塊があり、圧痛がある。
 身体がやせて、顔色が青く、便秘しているが食欲は変わりない。
 大柴胡湯を服用すること一年余りでやや軽快した。
 そこで患者が服用を怠って七〜八ヶ月経つと再発した。
 腫瘍は前回の倍くらいの大きさとなって水瓜のようである。
 煩悸して、木戸が劇しい時はまるで狂人のようである。
 諸医が治療したが効なく、南涯が再び診て、大柴胡湯に当帰芍薬散を兼用した。
 服用一ヵ月後に、クラゲ状のもの、その他を大量に下すこと九日ほどで完癒した。

  ┌身体が痩せて顔色が青く・・・
  |従ってこの患者も体力や正気が実しているとはいえない。
  |しかし腹中に一小塊があり圧通がある。
  |〜腫瘍は前回の倍くらいの大きさとなって水瓜のようである。
  |〜大柴胡湯に当芍を兼用してクラゲ状のものを大量に下す。
  |・・・即ち腹中にある病邪(の実)を下している。
  |正気は虚し、体力が実しているとは思えないが、病邪の実を瀉している。
  |大柴胡湯は病邪の実を瀉すのであって、正気の虚を補うものではないが、
  └正気が虚していても病邪を瀉さねばならない時は、以上の如く用いている。


症例B:橘窓書影/浅田宗伯(1815〜1894年)

 芝門前羽村屋重蔵六十余の例
 嘔吐下痢日々数十行、元気なく疲れる。
 大柴胡湯で下すこと二日で熱は大いに減じたが、
 千金断利湯と赤石脂丸を兼用して膿血は止んだ。
 さらに橘皮竹茹湯、真武湯などを用いて治療した。

  ┌嘔吐、下痢日々数十行、元気なく疲れている。
  |・・・即ち、これも正気(体力)が実しているとは思えない。
  |嘔吐・発熱は、腹中に病邪が実していると診断して
  |大柴胡湯で先ず病邪を瀉し、
  └その後に真武湯などで正気の虚を補っている。


以上の症例では先ず病邪を瀉しています。
たとえ正気(体力)が衰えていても、病邪の実は瀉さねばなりません。

最後の症例では先ず病邪を瀉し、後に正気(体力)を補っています。

しかし、先ず正気を補って後に病邪を瀉さねばならない場合もあり、
病邪を瀉すと同時に正気を補うなど
補・瀉を同時にやらねばならないこともあります。

いずれにしても、大柴胡湯は体力の充実とは関係なく、
病邪の実を瀉すものでした。一昔前までは・・・。

しかし、瀉剤には正気をも瀉す作用がある点に注意が必要です。

虚・実は正気にもあれば、邪気にもあると考えた方がよいと思います。

今の漢方では虚実は正気(体力)についてのみ考える学者が多いのですが、
虚実は正気の虚実だけでなく、病邪にも虚実があるとすべきでしょう。

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 気 血 水

病む人を、より良く治す為の第一歩は、
病を正しく認識する事、病態生理を正確に把握する事が重要です。   
そして最適の方剤を与える。

現実には、これらの当然のことがナカナカ出来ていないようです。

医学は、西洋医学だけでも東洋医学だけでもないし、
お互いに優れたものがあるんだから、 相互に研究し合えばよいと思う。

それぞれの組織の中枢の人には、
他者を受け容れるということが難しいのだろうか?

病む人をより良く治すことを、第一優先にするなら、
組織を守る事や、自分の流派にこだわることなどちっぽけだし、わびしい。

まずは西洋医学の優れた病の認識、病態生理を知る。
そして生化学検査や免疫学を知る方がより良い。

ところがそれだけでは残念ながら、治らない病気はあまりにも多い。
現代医学では慢性病の8割は治せていない、とも言われる。

病む人をより良く治すためには
東洋医学の病理観や病態のとらえかた、陰陽、虚実、寒暖、気血水、
そしてそれらに対する手法を縦横無尽に活用したい。

ここでは気血水について述べて行きたいと思います。

ただ注意していただきたいことは、
中国医学の五行理論を始めとした相乗相克などは、
実態とはかけ離れている事が少なからずあること、
一方、日本漢方の気血水理論も実際の病態とは
異なったりすることが多々ある、ということです。

     なお、昔は血は‘血液’ではなかった。
     その後、体液の赤い色をしたもの血とし、色のない水様の液体と区別するようになり、
     中国でも、中医学では「気・血・津」というように分類した。
     日本でも、南涯などのいう「気・血・水」説が出た。

     〜南涯の気血水説〜

     吉益南涯は、病人の病態は「気血水の変動によって発生する」と考えた。
     気・血・水を勝手にいろんな症状、
     例えば嘔吐でも、これは気による嘔吐、これは血の嘔吐、水の嘔吐というふうに分類して、
     薬も気・血・水に分類しようとしたんです。

     彼の気血水は、南涯自身の考えたものであり、ある証(症状)を「気が逆する証」だとか、
     「血気急するもの」「水気迫るの証」などと述べている。 これでは治療に役立ちにくい。

しかし、その実態・内容に関する認識はまだ非現実的なことが多い。
私たちは、これらを明確にして、病を治すために応用していかなければならない。


   次回は『気の医学』です。
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気 -1

漢方において‘気’という言葉はいろんな意味に用いられ、
それが一体何を意味しているのか混乱されていることが多い。

あるときは気体、ガスを意味し、あるときは精神作用を意味し、
時代により人によってその指している内容が異なる。

気の性質として、気は目にみえない、働きだけがある、即ち機能をさしている。

そして、人間を全体として把えるとき、
眼にみえる肉体という物質と、その機能。という把え方は非常によいと思う。

物質である肉体、即ち「体」を‘血’とし、
その機能である「用」を‘気’とし、 陰陽を‘血気’として把える。

生きた人間を生きたまま、
大きく 気と血、機能と物質として、気血の調和を健康、不和を失調(病気)とする。

現代の医学が病理解剖学を出発点としてきたため、
正常に対する異常が病変であるということから、形態学的変化が先ず主流となった。

現代の医学は、そのためどうしても機能的な異常よりも形態学的変化を優先してきた。

しかし病人も生きている。
形態と機能を同時に把えなければならない。 病人は屍体ではないのです。



「気」は形がない、目にも見えない。  その「気」というなかに、2通りあります。

その一つは 機能的な面の気で、
胃の働きが悪いとかの機能低下は「気虚」
機能の障碍を「気滞」「気閉」「気逆」というふうに言います。

機能的な面が損なわれると
過敏性大腸、痙攣性便秘、下部の消化管のジスキネジー、
過敏性腸症候群、胆道ジスキネジー、上部消化管のジスキネジーになります。

気管支喘息は、気道のジスキネジーということになりますでしょうか。

まあ大目に見て、機能の障碍ですね。 これらを「気滞」「気閉」「気逆」と言います。
胃の働きが悪いとかの機能低下は「気虚」と言います。


もう一つは 「精神・神経的な面の気」で、
機能障碍や、胃・十二指腸潰瘍など 機能以外にも、
眼で見える器質的な障碍を起こしてくる根元・・・・・といいますか、

漢方で「七情」などと言いますが、
精神的ストレス、‘うつ’などなど、一括して精神・神経的な作用も「気」といいます。

日本漢方では
これらの「機能的な面の気」と「精神・神経的な面の気」とを、あまり区別していません。


<気と血>

  人間を全体的に大きくとらえてみると、
  人体を構成する有形で物質的(肉体)なもの「血」と、
  機能的(無形)な面「気」とに大別できる。

  「血」とは、肉体の総称で物をさしている。 気はその機能、働きとして把える。

  気と血が合して生きた生体であり、血を離れて機能はあり得ない。
  「気」と血の解離は死、 なのです。

<気の病的変化>      気の病的変化には、主に気虚と気滞がある。

 〜気虚〜
   元気の不足によって引きおこされた状態。
   気は、機能をさしていて、気虚は機能低下の状態。

   先天的に元気が足りないとき、老化や疾病、過労、栄養失調などによっておきる。

 〜気滞〜
   気滞とは機能失調のうち、機能停滞を意味する。  

   その原因として精神的感情の抑鬱など心因性のもの、
   性格、飲食の失調、外邪などによっておきる、とされる。

<気滞の症状>

  脹った痛み、膨満感、苦悶感などであり、
  消化管、気道、膀胱、子宮などの平滑筋の緊張異常、痙攣によるものが主です。

<気滞の種類>

@ 脾胃の気滞   消化管の機能異常。
    食べた物が口から食道、胃、腸を経て肛門側へ送られる。
    これを‘胃気’といい降が順(正常)。
    ゲップ、嘔吐など逆蠕動は気逆、胃部膨満、痞塞感・・・・などは‘気滞’。

A 肺気壅滞       呼吸器及び心臓の機能失調。
    ‘肺気壅滞’は、息苦しい、呼吸困難の状態をさす。

B 肝気欝結   情動や、心因性のストレスが原因で自律神経、内分泌の異常をおこし、
    不安、緊張、抑鬱、怒り、ヒステリーなど情緒反応があり、脇胸膨張感、肩背痛、
    脇痛。  悪心、嘔吐、苦酸水を吐出する、心窩部の膨満などをおこしてくる。
    月経不順、乳房腫痛がおきる、
    胆道ジスキネージス、胃潰瘍、過敏性大腸症候群など。



         気虚 ―― 補気   気虚の治療は、補気で機能をよくする。
 気の病  {
         気滞 ―― 理気   気滞には、気閉には行気、気逆には降気を用いる。
                       この行気と降気を併せて‘理気’という。


  1.上部消化管機能異常

  2.胆嚢、胆道の機能異常

  3.過敏性腸症候群

  4.呼吸困難を主とする症候群

  5.下部尿路の機能異常     現在では、このような分類法もよいかもしれない。

 
行気薬には、陳皮、枳殻、青皮、香附子、厚朴、木香、烏薬などがあり、  

不安・抑うつには、香附子・紫蘇・薄荷、 

怒り・易怒には、黄連・山梔子・竜胆・宇金、 

イライラ・緊張には、柴胡・芍薬、 

ヒステリーには、甘草・大棗、 

鎮静・不眠には、黄連・釣藤鈎・酸棗仁・半夏等があります。

                                             このページのトップへ

気 -2

 理気

理気とは気を通じることにより気滞を改善することを言う。

気滞は、七情と呼ばれる喜、怒、憂、思、悲、恐、驚などの
さまざまな精神、感情の昂揚を引起こす外界からのストレスや
飲食の失調、外邪の侵襲また先天的な虚症体質が原因となる。

現代医学的には心身症、
中医学的には内傷とも呼ばれる諸症状を起こしてくる。

気滞により現れてくる諸症状は、自律神経系の緊張や昂進にともなう
消化管、気管支、血管壁、膀胱、子宮などの平滑筋の緊張や痙攣が
原因と考えられる。

気滞は痰湿、食積、お血、気鬱などのさまざまな病態と付随して
現れる事が多く、独立した症侯として現れる事の方が少ない。
また重症疾患であるほど、他の病態と複雑に関係しているので、
症例に応じて薬の加減が必要になってくる。


 気滞による諸疾患と症状による漢方の使い方

 A 脾胃系の生理的機能の失調により生じてくる疾患と症状

  1) 上部消化器官機能異常

   食道神経症
   逆流性食道炎
   食道、噴門痙攣
   胃炎、胃、十二指腸潰瘍
   呑気症

   症状  のどの閉塞感、食欲不振、胸やけ、胸痛
        心窩部膨満感、痛み、悪心、嘔吐嚥下困難

<のどの閉塞感>

 半夏厚朴湯 (半夏、厚朴、紫蘇、茯苓、生姜)

  半夏、厚朴、紫蘇  ---  向精神薬作用
  半夏          ---  中枢性及び末梢性の制吐作用
  厚朴          ---  鎮痙作用

<悪心、嘔吐>

気逆によるもの

 小半夏加茯苓湯   (半夏、茯苓、生姜)
 半夏厚朴湯      (半夏、厚朴、紫蘇、茯苓、生姜)
 茯苓飲         (枳実、陳皮、白朮、茯苓、生姜、人参)

冷えによるもの

 呉茱萸湯        (呉茱萸、人参、生姜、大棗)

炎症によるもの

 半夏瀉心湯       (半夏、黄今、甘草、黄連、乾姜、大棗)
 黄連湯          (半夏、桂枝、甘草、黄連、乾姜、大棗、人参)

湿痰によるもの

 カッ香正気散      (半夏、陳皮、白朮、茯苓、生姜、カッ香、紫蘇
                厚朴、白止、大腹皮、桔梗、大棗)

  半夏、生姜        ---  中枢性及び末梢性の制吐作用
  陳皮、枳実、大腹皮   ---  蠕動の促進作用
  茯苓、白朮        ---  胃内停水の利水作用
  黄連、黄ゴン、山梔子  ---  粘膜の抗炎症作用
  呉茱萸           ---  温裏して制吐、鎮痛作用
  カッ香           ---  芳香、化湿作用

<嚥下困難>

 利膈湯         (半夏、附子、山梔子)
 半夏厚朴湯      (半夏、厚朴、紫蘇、茯苓、生姜)

 利膈湯は食道の炎症、癌などによる嚥下困難を改善

<胸やけ、胸痛>

食道疾患によるもの

 順気和中湯     (半夏、陳皮、甘草、黄連、縮砂、香附子
              枳実、神麹、白朮、茯苓、生姜、山梔子)
 清熱解鬱湯     (枳実、陳皮、甘草、黄連、乾姜、生姜
              蒼朮、川キュウ、山梔子)
 小陥胸湯      (半夏、黄連、括楼根)

胃疾患によるもの

 半夏瀉心湯      (半夏、黄ゴン、甘草、黄連、乾姜、大棗)
 黄連湯         (半夏、桂枝、甘草、黄連、乾姜、大棗、人参)
 枳縮二陳湯      (半夏、陳皮、厚朴、香附子、枳実、縮砂
               木香、延胡索、茴香、草豆蒄)

  黄連、黄ゴン、山梔子   ---  粘膜の抗炎症作用
  木香、縮砂(香砂)     ---  健胃、鎮痛効果増強
  香附子            ---  解鬱して鎮痛効果

<心窩部膨満感、痛み>

 平胃散        (蒼朮、陳皮、甘草、厚朴、生姜、大棗)
 半夏瀉心湯     (半夏、黄ゴン、甘草、黄連、乾姜、大棗)
 黄連湯        (半夏、桂枝、甘草、黄連、乾姜、大棗、人参)
 越麹丸        (蒼朮、香附子、川キュウ、神麹、山梔子)
 延年半夏湯     (半夏、柴胡、別甲、人参、呉茱萸、枳実、檳椰子)
 枳実導滞丸     (枳実、大黄、神曲、白朮、茯苓、沢瀉、黄連、黄ゴン)
 保和丸        (半夏、陳皮、神曲、山査子、莢箙子、茯苓、連翹)

  陳皮、生姜、縮砂、木香     ---  健胃、鎮痛、蠕動を促進作用
  檳椰子、枳実、大腹皮      ---  蠕動を促進させ脹満の改善作用
  神麹、麦芽、山査子、莢箙子  ---  消化を助ける消導滞作用


 2) 過敏性大腸症候群

症状による漢方の使い方

<便秘型>

 桂枝加芍薬湯      (桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草)
 四逆散          (柴胡、芍薬、枳穀、甘草)
 九味檳椰子湯      (檳椰子、陳皮、厚朴、紫蘇葉、桂枝、木香
                 生姜、甘草、大黄)
 枳実導滞丸       (枳実、大黄、神曲、白朮、茯苓、沢瀉、黄連、黄ゴン)
 厚朴三物湯変方    (檳椰子、厚朴、枳穀)

  芍薬、甘草         ---  強い鎮痙、鎮痛作用
  芍薬、枳実         ---  鎮痙
  厚朴、木香、烏薬     ---  腸の鎮痙作用
  檳椰子、枳実、大腹皮  ---  蠕動を促進させ脹満の改善作用
  柴胡、芍薬         ---  疎肝解鬱
  黄連、黄ゴン        ---  抗炎症作用

<下痢型>

 甘草瀉心湯加茯苓    (甘草、大棗、黄連、黄ゴン、半夏、人参、生姜、茯苓)
 大建中湯          (蜀椒、乾姜、人参、膠飴)
 真武湯            (茯苓、芍薬、白朮、生姜、附子)
 参苓白朮散         (人参、白朮、茯苓、陳皮、縮砂、白扁豆
                  山薬、ヨク苡仁、蓮子、桔梗、甘草)

  甘草、大棗          ---  抗ヒステリー作用
  白朮、茯苓、陳皮、縮砂  ---  健胃、利水作用

<気滞によるもの>

 四逆散          (柴胡、芍薬、枳穀、甘草)
 九味檳椰子湯      (檳椰子、陳皮、厚朴、紫蘇葉、桂枝、木香
                 生姜、甘草、大黄)
 厚朴三物湯変方    (檳椰子、厚朴、枳穀)


<冷えによるもの>

 大建中湯      (蜀椒、乾姜、人参、膠飴)
 真武湯       (茯苓、芍薬、白朮、生姜、附子)

<炎症によるもの>

 枳実導滞丸       (枳実、大黄、神曲、白朮、茯苓、沢瀉、黄連、黄ゴン)
 甘草瀉心湯加茯苓  (甘草、大棗、黄連、黄ゴン、半夏、人参、生姜、茯苓)

<脾虚によるもの>

 参苓白朮散      (人参、白朮、茯苓、陳皮、縮砂、白扁豆
               山薬、ヨク苡仁、蓮子、桔梗、甘草)

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気 -3

  B 肝気鬱結により生じてくる疾患と症状

情動や心因性ストレスが原因で、
自律神経や内分泌の異常からおこってくる諸症状。

 1 肝、胆道系の機能異常

慢性肝炎
膵炎
胆嚢ジスキネジー

使用される漢方

 四逆散       (柴胡、芍薬、枳穀、甘草)
 柴胡疎肝湯    (柴胡、芍薬、枳穀、甘草、香附子、川キュウ)
 左金丸       (黄連、呉茱萸)
 小柴胡湯     (柴胡、半夏、黄ゴン、人参、生姜、大棗)
 柴胡桂枝湯    (柴胡、半夏、黄ゴン、人参、生姜、大棗、桂枝、芍薬)

  柴胡、芍薬、香附子        ---  疎肝解鬱
  芍薬、甘草または芍薬、枳実  ---  鎮痙、鎮痛


  2 自立神経系の諸症状

心臓神経症 動悸、呼吸困難、胸痛
更年期障害  → のぼせ、頭痛、肩凝り
ノイローゼ 不安、いらいら
不眠症


<動悸>

 柴胡加竜骨牡蠣湯
 炙甘草
 甘麦大棗湯

<のぼせ、いらいら>
 加味逍遥散
 黄連解毒湯
 三黄瀉心湯
 女神散

<不安、いらいら>
 柴胡加竜骨牡蠣湯
 加味逍遥散
 加味帰脾湯


  C 肺気壅滞により生じてくる疾患と症状

呼吸器、心臓の機能失調により生じてくる呼吸困難、胸痛などの諸症状

気管支喘息 呼吸困難
慢性気管支炎 → 咳嗽
肺気腫 胸痛
心不全
虚血性心疾患


使用される漢方

 七味降気湯    (紫蘇、半夏、香附子、茯苓、木通、桑白皮、白壇生姜、甘草)
 沈香降気湯    (紫蘇、沈香、香附子、茯苓、縮砂、甘草)
 蘇子降気湯    (蘇子、半夏、前胡、陳皮、厚朴、生姜、桂枝当帰、甘草)
 九味檳椰湯    (紫蘇、檳椰子、木香、陳皮、厚朴、生姜、桂枝、甘草、大黄)
              +呉茱萸、茯苓[浅田方]


症状による漢方の使い方

<呼吸困難>

呼吸器疾患によるもの

 蘇子降気湯      (蘇子、半夏、前胡、陳皮、厚朴、生姜、桂枝
               当帰、甘草)
 半夏厚朴湯      (半夏、厚朴、紫蘇、茯苓、生姜)

  厚朴、蘇子          ---  降気、平喘作用
  半夏、厚朴、紫蘇、前胡  ---  鎮静作用
  半夏、紫蘇、陳皮      ---  化痰、制吐作用
  半夏、前胡          ---  鎮咳、化痰作用
  桂枝、甘草          ---  強心、利尿作用

右心不全によるもの

 九味檳椰湯      (紫蘇、檳椰子、木香、陳皮、厚朴、生姜、桂枝、
               甘草、大黄)+呉茱萸、茯苓[浅田方]

  檳椰子、大黄、厚朴   ---  逐水作用
  桂枝、甘草        ---  強心利尿作用
  紫蘇、桂枝、生姜    ---  辛温発表作用

左心不全によるもの

 七味降気湯      (紫蘇、半夏、香附子、茯苓、木通、桑白皮、白壇
               生姜、甘草)
 沈香降気湯      (紫蘇、沈香、香附子、茯苓、縮砂、甘草)

  紫蘇、沈香、桑白皮       ---  肺や気道など上部の水をとる。
  紫蘇、半夏、香附子、白壇  ---  理気、止痛作用
  茯苓、木通            ---  利水作用


<胸痛>

呼吸器疾患によるもの

 括楼ガイ白白酒湯      (括楼仁、ガイ白、白酒)
 括楼ガイ白半夏湯      (括楼仁、ガイ白、白酒、半夏)
 枳実ガイ白桂枝湯      (枳実、ガイ白、厚朴、半夏、桂枝)
 柴陥湯             (柴胡、半夏、黄ゴン、人参、生姜、大棗、黄蓮、括楼根)

虚血性心疾患によるもの

 括楼ガイ白白酒湯      (括楼仁、ガイ白、白酒)
 括楼ガイ白半夏湯      (括楼仁、ガイ白、白酒、半夏)
 枳実ガイ白桂枝湯      (枳実、ガイ白、厚朴、半夏、桂枝)
 冠心U号方          (赤芍、川キュウ、紅花、丹参、降香)

  括楼仁、半夏   ---  去痰、鎮咳作用
  ガイ白        ---  鎮痛作用
  丹参、川キュウ  ---  血管拡張作用
  赤芍、紅花     ---  血小板凝集抑制作用

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 血 -1

 血について
「傷寒論」や「金匱要略」には、下記のように書かれている。

1.熱病の初期に意識障害、狂人のような精神異常がみられ、
 それが下血すると治るという現象がある。
 下血しないときは、桃核承気湯のような薬物を加えて血を下せばよくなる。
 
 以上のことから、熱病の初期の精神異常は
 「血」(血液が停滞した)によるためだと仮説を立てたと思われる。

2.熱病で高熱時に、せん語、意識障害、狂人の如くなったり、
 健忘になるのも蓄血、血があるため。

3.熱病で少腹部が膨満したり硬かったりして、
 小便が出ない場合は血でないが、小便がよく出ているときは、血がある。

4.熱病のとき、たまたま生理がきて、その生理が熱のためストップし、
 そのため精神異常をおこす。これは熱が血室に入ったためである。

5.月経が不利で、下腹部が膨満して病むのも血である。

6.挫傷もやはり血(内出血)が生ずる。杖刑のあとや、外傷後に
 発熱、精神異常や、頭暈、ブラブラ病、疼痛、麻痺などの症状がおきる。

7.出産後の自律神経、内分泌の異常、血脚気といった下肢の麻痺、RAなど。

8.月経異常、無月経などの現象と、月経前期症候群、更年期障害
 さらに広く血の道症なども血と考えられた。


 このような現象に対して血という仮説をたてて血を除く薬物で治療した。

 こうしてつくられた血という概念も
 年代や医家によってそれぞれに判断や意見が異り全く同じではない。

 しかも実際この血という病態は非常に複雑で
 おそらく単一の病態ではなく、いろんな病態を包括していると思われる。
 
 また、駆血薬、活血化の薬物も数多くの種類があり、
 そのなかの一つの生薬にも数多くの生物活性の物資を含んでいる。


 
血剤、駆血という治療が非常によく効く治療法で、
現代医学の難治といわれる疾病に対してもなおよく治すことができる。

西洋医学では,このような血に対する認識がないが
そのような眼で診ていると、血の病態は非常に多い。
 
山本巌先生の師、中島紀一先生も、
「諸悪は血だ。病(やまい)百のうち百まで血で解決する。
血というものを重視せよ…」 といわれた。

山本巌先生は、
「治らない病は血を考えよ。 
難治性のの病、慢性疾患のほとんど総てに血が咬んでからみあっている。
癒らない病、ことに女性は血の存在に注意せよ。
だが、血が単独に存在することは少ない」
血とは駆血剤を与えると改善される病態である」……といわれた。

血の血という概念と現代医学の血液は同じではない。
血液や血流と全く関係がないことはないが、血の病態はもっと広いものだろう。

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 血 -2


血の成因

1.外傷、挫傷による内出血。手術。

2.婦人の生理異常、出産、異常分娩。

3.熱病。

4.寒冷の外傷。

5.精神的作用。

  以上のようなものが成因の主要なものといわれる。


血の症状

T主要症状

  a疼痛
   固定性で移動しない。
   刺痛 紋痛 脹痛。
   昼は軽く夜間増強する。
   他の鎮痛薬が効きにくい。
   静脉系のうっ血による疼痛。

  b出血
   血液の色は紫黒色できたない。
   凝血やワカメのような感じのもの。
   突然多量に出ることもある。
   止血薬が効かないもとが多い。
   痔出血、食道静脉瘤からの出血など静脉からの出血。

  c腫瘤
   うっ血肝、肺のうっ血、及び心不全による臓器のうっ血腫大。
   静脉瘤症候群。
   ファイブロージス。
   強皮症、肺繊維病、ケロイド、癒着。
   子宮筋腫、癌、肉腫。

U自覚症状

   腹部の膨満感。
   寒熱の感覚。
   麻痺、しびれ。
   精神異常、健忘、幻覚、うつ状態。
   口乾、口燥。
   頭重、頭痛、眩暈、歯痛。

V他覚症状

  a顔面、口唇、舌、歯ぐき
   口唇の乾燥、あれ、紫黒色、及紫黒色の斑点。
   舌、舌質の紫色、紫色の斑点、血管の拡張、うっ血。
   歯ぐきの暗紫色;腫脹。

  b皮膚
   うっ血、紫色斑、皮下の内出血、細絡、静脉瘤、皮膚交錯、爪甲の紫紅色

  c脉証
   渋を標準とするが、脈ではナカナカわからない。

  d腹証
   少腹急結、堅塊、硬満、などと
   方剤の主治条文中にもあるが記載の諸説一定せず。

   臍下部の圧痛、抵抗、塊状物を日本では血の腹証としているが
   脾腫、肝腫も血と考えれば
   少腹とか、腹壁の筋肉の緊張や抵抗だけではおかしい。

  e大小便
   大便は軟便でその色が黒く、小便自利するときは血がある。

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 血 -3


 駆血薬

1.温性駆血薬
  当帰 川きゅう 紅花 莪朮 姜黄 乳香 鶏血藤 田三七

2.涼性駆血薬
  赤芍 丹参 牡丹皮 益母草 虻虫 しゃ蟲 仙山甲

3.平性駆血薬
  桃仁 蘇木 牛膝 水蛭 三梭 没薬


 駆血剤

1.基本的配合
  一般に駆血、活血去の基本組合せ。

  当帰 赤芍 桃仁 紅花 川きゅう 地黄 丹参   
  にプラス大黄とすることは非常に大切。 またはプラス梹椰

2.熱が加わる場合
  清熱涼血、清熱解毒、清熱降火薬を配合する。

  a)発熱する場合―清熱降火
   石膏、知母、黄ごん、山梔子、黄蓮、柴胡

  b)化膿性炎症―清熱解毒
   金銀花、連翹、蒲公英、敗醤、冬瓜仁、升麻

  c)炎症と出血―清熱涼血

3.陳旧性の血、結塊
  水蛭、虻虫、しゃ蟲、三梭、莪朮。
  (紫根、丹参、紅花、山豆根、か呂根)

  a.甲状腺腫
   昆布、海藻。
  b.脾腫
   別甲、沢蘭

4.腹部機能障害
  食道、胃、腸膀胱等の痙攣、逆蠕動、緊張亢進。
  枳穀、木香、烏薬、香附子、陳皮、青皮。

5.胸痛、胸内苦悶
  薤白、半夏、桂枝。

6.寒証
  干姜、附子、肉桂、呉茱萸、濁椒。

7.機能低下、気虚
  人参、黄耆、白朮。茯苓。

8.陰虚(エネルギー代謝亢進)、脱水
  熟地黄、麦冬、天冬、玄参、阿膠、石斛。

9.湿証、水滞
  茯苓、沢瀉、猪苓。

10.出血
  蒲黄、茜草、地楡、乱髪霜。

11.痰証
  南星、半夏、白附子。

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 水 -1

≪用語の解説≫

 水や湿に関して、漢方には明確な定義がなく、いろんな用語がでてくる。

 「湿」「湿家」、「湿痺」「風湿」「風水」「皮水」「水気病」「寒湿」「湿熱」・・・・・
 「湿邪」「水毒」などなど

<湿証>

 体内に過剰な水分が停滞し、浮腫のような状態のものを湿証。

<水証>

 体内過剰の水分が、胸水、腹水、関節水腫、水泡、緑内障のように
 水を認める状態を水証という。

<湿邪、水毒>
 
 外環境の湿が病因となるときには、
 邪、毒をつけて湿邪、水毒などという。

<湿との組合せによる病態>

 病人は一般に湿証、水証が単独であることは少なく、
 寒や熱、血、気滞などと複雑に合併していることが多い。

 しかしここでは、主に、湿証について述べます。

<湿熱>

 湿と熱が合している場合、炎症性の浮腫や
 炎症性滲出液、湿性肋膜炎、関節炎による関節水腫など、熱感や発赤を伴う。

 出血を伴えは血証が更に加わったものです。

<寒湿>

 浮腫、水滞があって炎症のない場合には、
 血行も悪く、また外環境の寒冷の作用を受け易く、冷たく腫れる。
 
 自覚的には痛を強く伴う。

<風湿>

 湿証の人が風(カゼ、感染症)に犯されると、中風にはならず、風湿になる。

 風湿のときは、身が重い、身重、関節痛があり、熱はあまり上昇しない、
 また午後に上昇する傾向がある。

 治療は発汗剤によるキョ風を強くすると湿が残って治らない。
 キョ湿と少し発汗を行うのがよい。

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 水 -2

≪主な症状と疾病≫

 主な症状

  ○ 身が重く感じる。動きにくく、動かそうと思うが自由にならない。
    立つ時、手をついて立たねばならない。
    階段につまづいて倒れそうになる。小さな石にもつまづくようになる。
    動くのがいやになる。

    じっとしていると動きにくいが、動かしていると動き易い。
    「朝のこわばり」という現象と同じ理由です。

    道など急ぐ時は息切れがする。

  ○ 皮膚に水が多く貯まると、しびれがでてくる。
    ちょうど座ってしびれがおきるのと同じです。
    初めはしびれがきていたのが長時間座ってからだったのが
    しびれるのが速くなる。
    夜に寝る時、臥して下側になった腕に痺れがおきる。
    指先、趾先からしびれる。  知覚鈍麻、麻痺
    
    筋肉や関節の疼痛がある。沈重疼痛が特徴。

  ○ 筋肉内に水が貯まると、「コムラ返り」がおきる。
    腓腹筋の強直性痙攣。

    また、眼瞼がピクピク痙攣する。

    浅い筋肉の浮腫では、不随意的にピクピクと表在筋が動く。
    太い筋肉では腓腹筋のコムラ返りと同じように筋肉が痙攣し、
    頸でも腰でも腰腹でもコムラ返りと同じ様な強直性の痙攣がおきる。
 
    時に狭心症と誤ることがある。EKGで鑑別ができる。
    この痙攣は、姿勢や労働による疲労とも関係があると思う。

  ○ めまい。動揺感
    頭がくらっとする。体の動揺感がおきる。回転性眩暈がおきる。

  ○ 天候との関係
    水腫があるための上記の症状は天候に関係が深く、
    雨の降る前には時に症状が悪化する。

    日本では湿気が多く湿度が高いことも症状を悪くする原因だと思う。

  ○ 頭部、脛骨前面を圧迫すると、陥凹する。
    腓腹筋を握ると痛む。

  ○ その他
    頭重、頭痛、眼圧上昇、クシャミ、鼻水、水様痰、耳漏、吐水、泄瀉、水様便、
    尿量減少、発汗(発汗が多いと楽)、転筋、腰痛、腰重、関節痛、関節水腫、
    腹水、胸水、水性帯下、皮膚の水泡、びらん、など。

 疾患
 
  アレルギー性鼻炎、緑内障、網膜剥離、小児喘息、
  良性発作性頭位眩暈症、動揺病(加速度疾患)、メニエル氏病、
  湿性肋膜炎、下痢腸炎、胃液過多症、肺水腫、
  心不全(うっ血性心不全)、うっ血肝、ネフローゼ症候群、腎炎、肝硬変、
  関節炎、RA、水泡性皮膚疾患、等々。

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 水 -3

≪利湿薬と利湿剤の分類≫ 

   利湿薬及び利湿剤をその作用機能によって次のように分類する。

 <利湿薬 > (1)利水滲湿薬
           (2)逐水薬
          (3)キョ風湿薬
          (4)芳香化湿薬

 (1)利水滲湿薬

    利尿作用があり、体内の水分を尿として除く薬物。

     a 利尿作用の比較的明確なもの。

滑石 灯心草 車前子

     b 体内に過剰の水分があるとき利水作用があると考えられるもの。
 
        茯苓 猪苓 沢瀉 防已 茵?蒿

        ヨクイニン 赤小豆

 (2)逐水薬

主に強い瀉下作用によって体内の水分を除く薬物。

        テイレキ子 牽牛子 檳榔

 (3)?風湿薬

皮膚、筋肉、関節などの身体外表に近い部分の疼痛、痙攣、麻痺を治療する薬物。

        独活 キヨウ活 木爪 防已 イ霊仙 秦ギョウ

 (4)芳香化湿薬

    主に下痢、腸炎の治療に用いる薬物で、消化管の水分を吸収して利尿する。
    発汗作用があり、体表の水分を汗として除くものもある。

        カッ香 蒼朮 紫蘇(子)

 (5)その他

        麻黄 附子 呉茱萸 黄耆など



 <利湿剤 > (1)淡滲利湿剤
          (2)清熱利湿剤
          (3)温化利湿剤
          (4)逐水剤

 (1)淡滲利湿剤

    茯苓、朮、沢瀉、猪苓などといった味の淡い、
    体内の過剰な水分を除く利尿薬を配合した処方。


       四苓湯  四苓散   五苓散(温化)
                     猪苓湯(清温)

       防已黄耆湯  防已茯苓湯

       茯苓杏仁甘草湯  木防已湯

       七味降気湯

       三和散

       導水茯苓湯
 
 (2)清熱利湿剤

    主として炎症に伴った浮腫に応用する。

       越婢加朮湯

       大青竜湯  小青竜湯加杏仁石膏

    関節炎などの炎症と浮腫、関節内の水を除く。

       越婢加朮湯  小青竜湯加杏仁石膏

       桂芍知母湯  続命湯  二妙散

       防已黄耆湯

    膀胱炎など尿路感染症に用いる方剤

       五淋散  猪苓湯

    黄疸の治療方剤

       茵チン蒿湯 茵チン五苓散

 (3)温化利湿剤

    体が冷えて、寒と湿のある場合に温めて寒と湿を除く方剤。

       真武湯  五苓散  苓姜朮甘湯

 (4)逐水剤

    瀉下によって強力に水分を除く。

       九味檳榔湯加呉茯  十棗湯

       大陥胸湯  テイレキ大蚕瀉肺湯

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発汗療法(汗法)

漢方は、急性熱病の初期に発汗療法を行なう。例えば、感冒・インフルエンザ・
咽頭炎・扁桃炎・中耳炎・乳腺炎・・・などにも用いられる治療法です。

  発熱した時、
  体温が上昇し始めると
   ↓
  悪寒を感じる。
   ↓
激しい時は悪寒戦慄のこともある。

脉は浮脉であり、その他に頭痛・筋肉痛・四肢痛・関節痛・肩こりなど
身体の外表に症状があり、食欲不振・腹痛・嘔吐・下痢など内部症状のない時期です。

頭痛・筋肉痛・関節痛・悪寒など外表の症状を表証と呼んでいる
(内部の症状を裏証という)。

この時期を『傷寒論』では太陽病と呼んでいる。
「太陽の病たる。脉浮、頭項強痛して、悪寒す。」
と定義している。このときの治療法が汗法即ち発汗療法です。

古人は感染症を外感病と考えて、外から病邪が侵入し、
先ず外表から次第に内部へと侵してくると考えた。

そして太陽病の時期には、
病邪がまだ内部に入らず、表(皮膚の近く)にあって表証を示している。
従って、発汗療法を行なって表にある病邪を汗と共に外部へ追い出す・・・と考えた。

この目的で、麻黄・桂枝・細辛・生姜・葱白・紫蘇・荊芥・羌活・・・などの
身体を温めて発汗させる薬物を配合して、
麻黄湯・桂枝湯・葛根湯・・・といった発汗療法の方剤をつくっている。

発病し、体温が上昇し始めるとa〜bの間は太陽病で悪寒を伴い、表証があり汗は出ない。

bに到るといくら体を温めても、もうそれ以上は体温が上昇しなくなり、
悪寒はなくなり熱感になる。

高熱が持続すると体は熱く、発汗が始まる。そして陽明病に移行する。

a〜bの間で体を温めると、悪寒はなくなり、速くb点の体温になり、
まだ温め続けるとそれ以上体温は上昇せず発汗が始まる。
いくら温めても、発汗のための体温はそれ以上上昇せずに汗が出る。


           


その発汗状態を4時間〜6時間くらい続けると、
表証もなくなり、熱も下がり、病が治る。

これが発汗療法です。この治療は下肢を湯に入れて、物理的に体温を上昇させ、
発汗させてもよい。必ずしも薬物によらなくてもよい。




方剤の薬用量と服用の注意

『傷寒論』では桂枝湯の服用法に注意事項を記載している。
「水七升でとろ火で煮て、三升に煮詰め、滓を去って、温かいのを一升服用し、
服用後は更に粥一升余りを啜り、(体を温めることで)薬効を高める。

布団を覆ってしばらく温める。体中から汗がジットリ出て汗ばむくらいがよい。
流れるほど発汗させてはよくならない。病を除くことができないからです。

もし一服で汗が出て病気がよくなると、一服だけでもうそれでよい。
一日分全部を飲む必要はない。

しかし、汗が出なければ前と同じような要領で服用し、
汗のない時は服用間隔を短くし、約半日で三服を服用する。

もし病が重い者は一日一夜を通して服用させ、常によく病状を観察し、
1日分を服み終わっても病症がまだある者には、更にもう1剤をつくって服用させ、
汗が出ないと2、3剤を服用させる」

このような注意は桂枝湯のみならず、どの方剤にも必要です。

酒飲みにも一口と一升酒の差があるように、
人体も薬物に対する反応は同じではないからです。

稀に、風邪の初期に葛根湯エキスを使う場合、
1回1包、1日3回、5日分、というように投与される事がありますが、
本来の発汗療法を知っているとおかしな話ですね。
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補益と補養剤

中国は二分類法を好み
疫病発生とその転変を、正と邪の力関係として把える。

邪が正に勝てば、病が発病し病は悪化する。
正が勝てば邪は却き、病は好転する。

病の治療には、
邪を除く?邪と正を扶ける扶正を行ない、これを扶正きょ邪と呼ぶ。

扶正とは正気を助け、病に対する抵抗力、治癒力を増強する。

この正の虚を分類して、気虚、血虚、陽虚、陰虚とする。

中国人は、健康とは
気血の調和、陰陽の調和のとれたもので、いずれに偏ても病になる。・・と考えた。

陽に偏して陰不足する場合があり、
陰に偏して陽が不足する場合がある。

気とは働き(機能)であって眼にみえないもの、
血は物質であって形があるが働きはない。

補法は八法の治療法のうち扶正であって、虚するものを補う。

注意
  1.薬剤だけにたよらない。
  2.食生活を大切にし、心身を鍛錬すべし。
  3.望外のことを求めない。
  4.実邪のあるときは扶正と同時に?邪を併用すべし。
  5.補益は一朝にしてならず。

補益
治療法中の補法であり、気血陰陽の不足を補う。
一般に補気、補血、補陰、補陽の四種に大別する。

これに用いる薬物を補養(益)薬、
補養(益)薬を主剤として組み立てられた方剤を補益剤とよぶ。



◎気血と陰陽
まず理解しやすいため、気血、気虚・血虚について述べる。

人間を大きく分けて、
人体の働き、即ち機能と物質の二つとする。前者が気で後者が血です。


機能と物質ー気と血

1)「気」・・・働き、機能が「気」であり、機能低下が「気虚」です。
  
  四君子湯が「気虚」を補う「補気」の基本処方です。
  四君子湯の元気を補う主薬は人参で、これに白朮、茯苓、甘草が加わったもの。

2)「血」・・・肉体、物質が「血」であり、物質の不足が「血虚」です。
  
  四物湯が「血虚」を補う「補血」の基本処方です。
  四物湯は物を補う主薬の地黄に、当帰、川弓、芍薬が加わったもの。


1.気虚
 気虚とは気の不足の意味であり、機能すなわち働きが悪い場合を指す。
 その場合、次の症状が現れる。
  1)顔色、ことに口唇の血色なく、白くなる。
  2)言葉に力がなく、大きな声が出ない。
  3)手足がだるく、力が入らない。
  4)脈が弱く遅い。
   そして疲れやすく、疲れなくともしんどい。何をするにも大儀である。
   すぐに眠くなる。
   
 気虚は、主に「脾の気虚」と「肺の気虚」がある。

〇脾の気虚
  脾の気虚は上記の症状の他に、食欲がない、食べるものに味がない、、など。
 
  その上、筋肉の緊張がゆるみ、内臓下垂、子宮脱、脱肛、ヘルニアなどを伴う時は、
  「中気不足」「中気下陥」という。
  この時は腸(消化管)の運動も緊張も悪いため、便秘または排便しにくい。
  そしてガスの排出も悪いため、腹が張る。

〇肺の気虚
  少し動くと息切れがして苦しくなり、ハアハアと呼吸が浅くなる。
  すぐに汗がよく出る。何か食べるとすぐ自汗が出る。

2.血虚
 身体の物質の不足である。従って
  1)体が痩せて細い。体に滋いが無い。
  2)皮膚につやが無く、カサカサして、シワがある。皮膚が薄くやせている。色が汚い。
  3)脈は細い。
  4)舌は細く、どちらかといえば乾燥している。
  5)尿量は多くない。

3.陽虚
 気も陽であるが、陽は熱でもあり、火でもある。
 従って陽虚の場合には、気虚プラス寒の症状が現れる。
                     (陽が虚すと寒を生じる。)
 従って気虚に加えて、虚寒の状態がある。
  1)よく寒がる。四肢が冷えて冷たい。
  2)口は渇かず、水を飲まないのに尿量が多く、色が白い。
  3)舌質は湿潤し、淡く、歯痕があることあり、苔は白い。
  4)大便も軟らかく下痢便となる。

 陽虚は冷えて、その寒の刺激で腸の運動が亢進すれば、
 腹痛を伴わない溏(ベタベタ)となる。
 
 腸内の水分が多ければ、水瀉となることがある。
 いずれも腹痛を伴うことがある。

 またその他に気虚で腸の運動が悪く、大便硬く便秘する。
 それが寒で便秘となる。この場合は便秘と下痢が交互に来たりすることもある。

4.陰虚
 陰は血をも含む。但し中国では津液水分・精・肉は血と別にしている。

 陰は寒であり、水である。そして陰が虚すると熱を生じる。
 従って陰虚の症状は血虚の症状は血虚プラス熱である。
 だからその上に
  1)手足が煩る。(五心煩熱)
  2)午後に潮熱が出る。(朝冷暮熱)
  3)口渇し、口中が乾燥し、
  4)小便は少なく、濃くなり、
  5)大便は乾燥して黒く小さく、量は少ない。
  6)舌は細く、紅く、乾燥して、舌苔は少ない。
  7)脈は細く、そして多い。

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四君子湯の展開

四君子湯の展開

四君子湯 『和剤局方』

[組成]
  人参 白朮 茯苓 甘草
[方意]
  本方は気虚の基本方剤であり、人参が主薬で、白朮、茯苓、甘草は
  消化吸収の働きをよくし、元気を益すための補助になる。
  
  人参と甘草はともに体を潤す性質がある一方で
  白朮と茯苓の配合により浮腫を防いでいる。
[応用]
  下記のような気虚の症候すべてが本方を用いる特徴になるが、
  本方単独で用いることはなく、
  通常は基本処方として、各処方の中に組み入れて使用される。
   ・面色萎白(望)
   ・言語軽微(聞)
   ・四肢無力(問)
   ・脈来虚弱(切)
  本方の口訣
   ・口唇の血色少ないとき・・・・・出血時
   ・飲食進み難きときを第一の目標とする
<応用例>
 1.痔出血・・・・・黄耆、白扁豆、槐角を加える
 2.脱肛・・・・・・・柴胡、升麻、蒼朮を加える
 3.老人ぼけ・・・丁香、木香を加える
 4.褥瘡・癰疽(傷口の治らないもの)
 5.慢性気管支カタル(老人)・・・黄耆、五味子、麦門冬を加える
 6.呼吸困難・・・蘇子、沈香、桑白、砂仁、木香、厚朴などを加える(喘四君子湯)
 7.脳軟化症(老人)


異功散 『小児薬証直訣』

[組成]
  四君子湯加陳皮
[方意]
  四君子湯の四味だけでは、
  胃炎患者で、もたれ、痞え、悪心のある場合に、薬液が痞えることがあるため、
  健胃作用のある陳皮を加えることにより、これを防いでいる。

 *陳皮
 (1)脾胃の気滞を除く。
    胃腸の過剰な緊張を除き、運動させる作用により、食欲が出て、
    胸の痞えや悪心・嘔吐がとれ、気持ちがよくなる。
 (2)燥湿化痰
    痰は粘液であり、粘液性炎症すなわちカタルを治す。


六君子湯 『万病回春』

[組成]
  異功散加半夏
[方意]
  前記異功散に、粘液を溶解し、
  中枢性及び末梢性の鎮嘔・制吐作用がある半夏を加えたもの。

  また、陳皮、半夏、茯苓、甘草の組み合わせは、
  痰飲の代表方剤である二陳湯であるから、
  六君子湯は四君子湯に二陳湯を合方したものともいえる。
  
  すなわち、六君子湯は気虚の者の痰飲(胃炎、胃カタル)に対する方剤。

 *半夏
 (1)鎮嘔・制吐作用・・・中枢性および末梢性
 (2)燥湿化痰・・・・・・・・・喀痰や粘液を溶解し、分泌を抑制する。
 (3)鎮咳作用・・・・・・・・・中枢性および末梢性
 (4)鎮静作用
[応用]
  胃腸の働きがふだんから弱い者の、胃炎・胃カタル
  および気管支喘息(主に乳幼児)の体質改善などによく用いられる。


香砂六君子湯 『和剤局方』

[組成]
  六君子湯加香附子、カッ香、砂仁(木香)
[方意]
  六君子湯の証で、
  さらに胃部膨満感や悪心・嘔吐などの気滞の症状が一層強い者に対して、
  行気の薬物である香附子、砂仁(縮砂)、木香と、健胃、鎮嘔・制吐および
  非タンニン性止瀉作用を有するカッ香を加えた方剤で。

*香附子
 (1)胃の働きをよくする。
 (2)気滞のためにおきる疼痛を止める(行気止痛)
 (3)精神的な原因による胃の疾患に用いる。
 (4)発汗作用

*カッ香
 (1)消化を促進し、食欲を増進させ、胸をスーッとさせる。
 (2)胃腸の神経に対する鎮静作用と、血行をよくして温める作用の結果、
    冷えによる嘔吐を抑え、胃腸の痙攣性疼痛を止める。
 (3)化湿止瀉作用

*砂仁(縮砂)
 (1)胃の働きをよくし、悪心、嘔吐を止める。
 (2)腹を温めて、下痢を止める。
 (3)胃の運動をよくし、過緊張を除き、心下部の痞えや膨満感をとる。
 (4)悪阻に有効で、安胎の効もある。

*木香
  胃腸の刺激による蠕動亢進や分泌促進を抑制するため、胃腸の過緊張や、
  冷えによる痙攣性の痛み、裏急後重などに用いる。
[応用]
  六君子湯に比べて、食傷(飲みすぎや食べすぎによる胃炎)のための膨満感、
  痞え、悪心、嘔吐、心下部痛などの気滞症状が強い者に用いる。


大四君子湯

[組成]
  四君子湯加黄耆
[方意]
  四君子湯に、自汗、盗汗を止める黄耆を加えたもの。


参苓白朮散 『和剤局方』

[組成]
  人参、白朮、茯苓、甘草、山薬、蓮肉、砂仁、扁豆、ヨクイニン、桔梗
[方意]
  ・人参、白朮、茯苓、甘草(以上、四君子湯)、山薬、蓮肉、白扁豆
                     ・・・・・・消化吸収同化の働きをよくする。
  ・茯苓、山薬、蓮肉、砂仁、扁豆、ヨクイニン・・・・下痢を止める。
  ・ヨクイニン、桔梗・・・・・・・・・酸臭の強い醗酵性消化不良に有効
  
  すなわち、脾の気虚で、消化の働きが衰えて、慢性の下痢をする時の方剤。

 *蓮肉
 (1)胃腸の働きをよくし、下痢を止め、食欲を増進させる。
 (2)不眠、心悸亢進を治す。
 (3)遺精に用いる。

 *扁豆
 (1)胃腸の働きをよくし、消化管の水分を除くため、食欲の増進や下痢に用いる。
 (2)利水の効(水腫に用いる)・・・・夏の胃腸病の要薬

 *ヨクイニン
 (1)利水作用があり、腸内の水分を除くため、下痢にも用いる。
 (2)清熱利湿
 (3)消炎、排膿の効

 *桔梗
 (1)鎮咳・去痰作用。
 (2)咽の痛み、声のかすれに用いる。
 (3)排膿作用
[応用]
  本方の口訣
  ・おなかの弱い者で、食欲がなく下痢しやすい。
  ・大病後の消化器の回復
  ・労倦不食の証


啓脾湯 『万病回春』

[組成]
  人参、白朮、茯苓、甘草、山薬、蓮肉、陳皮、沢瀉、山ざ子、大棗、生姜
[方意]
  基本的には、前記参苓白朮散とほぼ同様ですが、
  消導薬である山ざ子の配合がやや特徴的。

*山ざ子
 (1)肉類や脂肪の多い食物による消化不良に用いる(消導薬)
 (2)大腸炎や赤痢などの下痢に用いる。
 (3)血管拡張・降圧作用があり、瘀血の疼痛に使用する。
 (4)止血作用・・・・・山ざ子炭
 
  注意:胃潰瘍や胃酸過多には使用しないほうがよい。


帰脾湯

[組成]
  黄耆、人参、白朮、茯苓、甘草、大棗、生姜、木香、酸棗仁、竜眼肉(当帰)(遠志)
[方意]
  大四君子湯に木香、酸棗仁、竜眼肉を加えたもの。
            (『明医雑著』では、さらに当帰と遠志を加えている)

  大四君子湯に木香を加えると、
  木香には陳皮と同様に健胃作用があるので、大四君子湯加異功散の方意となる。
  
  酸棗仁と竜眼肉については、いずれも茯苓とともに鎮静作用がある。
  
  したがって、本方は精神的ストレスにより、
  食欲不振、体力・気力の低下をきたしたものに用いる方剤。
[応用]
  1.食欲不振、倦怠
  2.精神的ストレス、不安、緊張。
  3.不眠、心悸亢進、驚きやすい者。
  4.慢性で長期の出血・・・・性器、痔、尿路
  5.再生不良性貧血 溶血性貧血、バンチ氏病、白血病
  6.老人ぼけ・・・・木香、当帰の配合による(さらに丁香を加えるとよい)
  
   *精神的ストレスでも、イライラしたり、腹が立ったり、熱が出るような場合は、
   柴胡、山梔子を加えて用いる(加味帰脾湯)。


補中益気湯  ← クリック


玉屏風散 『世医得効方』

[組成]
  黄耆、白朮、防風
[方意]
  補気薬で固表止汗作用のある黄耆、白朮に、
  キョ風湿の作用のある防風を配合したもので、
  表虚自汗の者がすぐに風邪を引いて、
  くしゃみ、鼻水などを来たすような場合の方剤。
[応用]
  表虚自汗のものの感冒のほかに、表虚自汗の者の小児喘息、気管支喘息、
  アレルギー性鼻炎などに対して、桂枝湯と合方して用いる。



補気薬

人参
1.元気を補う(大補元気)。
   どんな病気でも、元気が弱り、気力のないときには必ず用いる。
   ・大出血時・・・・・独参湯
   ・大発汗時、大吐瀉後の虚脱・・・・・附子を配合
2.同化作用をよくする(補脾益気)。
   胃腸の働きをよくし、消化吸収がよくなる。
3.息切れ、自汗を治す(補肺)。
   少し動くと息切れがして苦しく、動けなくなる。よく自汗が出る。このような場合に
   黄耆と併用する。
4.体内の水分を保ち、口渇を防ぐ(生津止渇)。
   体内に水分が少なくなり、口が渇く時に用いる。
   ・夏季に大発汗し、水分の補給ができず、脈が細く触れにくくなる時。
    麦門冬、五味子と併用(生脈散)
5.精神の安定を謀る。
   体が衰弱し、過労を重ね、年老いて、食欲もなくなり、疲れるとかえって眠れず、
   常に不安となり、心悸亢進して、脱力感のある時に有効で、遠志、酸棗仁などを併用。


黄耆
1.元気をよくし、筋肉を強くする(補気升陽)。
  ・気力、体力が弱って、疲れやすく、体がだるく手足に力が入らない時。
   人参、白朮などの健脾益気の薬物を配合。
  ・筋肉の緊張が弛緩し、内臓下垂、アトニー、ヘルニア、脱肛、子宮脱などに対して。
   柴胡、升麻を加える。
2.自汗を止める。
   疲れやすい人で、疲れたり、食後や少し動いた時に発汗の多い場合に用いる。
   桂枝と併用すると、よく皮膚の汗、水腫、知覚異常などを治す。
3.浮腫を除く(利水退腫)。
   四肢、顔面などの浮腫に用い、利水作用がある。白朮、茯苓、防巳などを配合する。
4.知覚麻痺、運動麻痺などを治す。
   皮膚のしびれ感、知覚鈍麻や脳出血後の運動麻痺に用いる。
   当帰、川弓、桂枝や桃仁、紅花などを配合する。
5.皮膚の化膿症に用いる(内托の効)。
   炎症症状が少なく、化膿しても潰れず、また潰れて後が治りにくい場合の、
   皮膚の化膿症(癰、瘡)に応用する。


白朮
1.胃腸の働きをよくする。
  ・食欲を増進し、消化をよくし、健胃薬となる。人参、甘草を配合(補脾)
  ・腹が冷えて痛む時の止痛。乾姜などを併用。
  ・嘔吐、下痢
2、水湿を除く。
  浮腫や胃内停水、腸内の過剰水分を除く。
  ・寒飲(消化管に水分の多い者が、冷えて下痢をすること)
   茯苓、桂枝、乾姜、附子、人参などを併用。
3.自汗を止める。
   黄耆、浮小麦などと併用(表固止汗)
4.安胎の効がある。
   妊娠中の水腫、流産の予防によい。


山薬
1.消化器の働きをよくし、下痢を止め、体を元気にする。
   胃腸が弱く、食欲がなく、食べすぎるとすぐ下痢をしたり、常に慢性の下痢をしており、
   体がだるく元気のない者に、人参、白朮、茯苓、扁豆などと配合。(補脾止瀉)
2.咳嗽や呼吸困難に用いる。
   ・肺虚の咳嗽・・・少し動くと息切れがして苦しく、息を継がないと一気に話せず、
    よく自汗が出る者の咳嗽(益肺気)
   ・粘痰の咳・・・沙参、麦門冬などを配合(養肺陰)
3.消渇に用いる。
   口の渇きが甚だしく、いくら水を飲んでも渇きの止まらない者に用いる。
   ・主に発汗による場合・・・黄耆、五味子、天花粉に配合。
   ・熱(虚熱)による場合・・・麦門冬、生地黄に配合。
4.遺精、小便頻数に用いる(益腎固精)。
   ・遺精、夢精・・・熟地黄、山茱萸、竜骨などと併用(例:六味地黄湯)
   ・小便頻数・・・益智などと併用。
   ・帯下・・・竜骨、牡蠣、茜草と併用。


甘草
1.胃腸の働きをよくし、体の元気を益す(炙甘草)
   食欲が少なく、下痢をしやすく、元気の出ない者に、
   人参、白朮、茯苓などと配合して用いる(益気補脾)
2.心悸亢進を鎮める。
   発汗過多などで体内の水分が欠乏して、また内熱により、心悸亢進する時、
   体の水分を保ち、急迫症状をゆるめる。
   桂枝、生地黄、阿膠、麦門冬、人参などと配合する(炙甘草湯)
3.筋肉の痙攣や疼痛を止める。
   主に芍薬と合し、芍薬甘草湯として用いる(緩急止痛)
4.咽喉の腫痛、瘡瘍の腫脹などに用いる(生甘草)
   ・熱を下し、化膿を抑える(瀉火解毒)・・・金銀花、連翹、蒲公英などを配合。
   ・咽の痛みや腫脹・・・桔梗、薄荷、牛蒡子を配合。
5.咳嗽、喘息に用いる。
   鎮咳やキョ痰の薬物と配合して用いる。
6.口舌の瘡や炎症、小便不利、排尿時の痛みに生地黄、淡竹葉、木通を配して用いる。
7.解毒に用いる。
   附子の中毒、大黄の腹痛、アルコールの肝障害を防ぐ。
8.体内に水分を保つ。
9.緩和、矯味に用いる。
   非常に多くの方剤中に配合して、緩和と矯味薬として用いられる。


大棗
1.胃腸の働きをよくする。
   胃腸が虚弱で気力が少なく、体がだるい者などに用いる。
   津液の不足を補い、人参、白朮などと配合する。
2.鎮静作用がある。
   小麦、甘草と併用し、甘麦大棗湯としてヒステリーに用いる(養心安神)
3.緩和、矯味に用いる。
   甘草に似て、上記の目的でよく用いられる。
   甘草とは配合禁忌である大戟、芫花、甘逐などの峻下作用をゆるめるのにも用いる。
   また、半夏の副作用を抑える。


茯苓
1.消化機能をよくする。
   消化器の働きが衰え、食物を消化することができず、下痢をしたり、
   胃がつかえて苦しい時に、人参、陳皮、白朮などと併用する(健脾補中、健脾止瀉)
2.利水作用がある。
   本来は滲湿利水薬に分類されており、尿量が少なく、水分が体内や消化管内に滞り、
   浮腫、腹水、胃内停水、嘔吐、下痢の時に、
   猪苓、沢瀉、白朮などを配合して用いる(例:五苓散)。
3.めまい、心悸亢進に用いる。
   胃内停水などの停飲があるため、めまいや心悸亢進があるとき、
   白朮、桂枝、甘草、大棗などと併用する。
4.鎮静作用がある(茯神)。
   不眠、心悸、不安に遠志、竜骨、石菖蒲、沈香などと併用する。

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四物湯の展開

四物湯の展開

「気虚」の基本方剤が四君子湯なら、「血虚」の基本方剤は四物湯です。
現代、漢方の書では「気」と「血」の関係を次のようにすっきりと記述され、理解しやすい。

「血」は物であり物質的基礎を意味し、「気」は「機能」であり、働きを意味する。
健康とは気血の調和のとれた状態であること、と。

しかし現実には、気と血は対比ではなく、また気虚と血虚に境目もなく、
お互いに移行し合い、ときに一緒になって症状が出てくることもある。
だから血虚をひとことで表現するのはむずかしい。

なるほど「気虚」に四君子湯類を使うと正確に効果を得ることができる。
ところが「血虚」に四物湯類を使っても必ずしも有効とは限らない。

「血」という概念、「血虚」ということ自体がわかりにくいことも一因です。
「血虚」の意味あいは歴史を見つめても変化している。

現在の中医学では「血」を現代医学の「血液」として解釈しようとする傾向がある。
しかし実践でこの解釈にとらわれると不都合も生じるし、応用もきかなくなってしまう。

たとえば、大出血や急性の貧血だけでなく慢性の貧血でも、
貧血を「血虚」と判断して四物湯を用いると病人は弱まってしまうことが多い。

貧血の人は、もともと元気がなく消化吸収能も低く、
浮腫(低タンパク血症性浮腫)があったりする。 貧血の人の多くは「気虚」です。

ここに四物湯や西洋医学での鉄剤を服用すると、
胃が悪くなったり食欲が低下して弱ってしまうことが多い。

貧血は現象としては物の不足だけれども、
物の不足に至る以前のもともとの状態が気虚の状態なのです。

血虚がみられるときにも気血両虚(十全大補湯など)というかたちになる。
だから貧血には気虚の方剤、四君子湯類が主になります。


血虚と貧血とは全く関係のないことが多く、
漢方でいう「血」と現代医学の「血液」とは同じではないのです。

四物湯はたいへん重要な基本処方の一つですが、
「血虚」についてかなり誤解が多いため
初学者が漢方を勉強し治療に活用するうえで理解されにくく
正確な効果も発揮できていないように思う。

血虚は血が足りないとか物質的基礎が足りないとかということよりも、
その内容はさまざまな病態を含み、脳下垂体をはじめ
卵巣、その他種々の内分泌系および自律神経系の失調を指している。

浅田宗伯は血虚についてや四物湯の用途について上手くたとえている。

血虚とは「戸や障子の開け閉めが軋んだとき」のような病態で
四物湯とは「戸や障子の上下の溝に油をひくようなもの」だと表現した。

具体的には、皮膚がガサガサしているとか、
筋肉が動かないとか運動麻痺とかもみんな血虚になります。

全身的な栄養障害というよりも
局所的な栄養障害といえるし、循環器障害とも考えられる。

四物湯は血虚の基本方剤ですが四物湯単独で使うことはなく、
合方、加減方として様々の病態に頻用される。

また四物湯を含んだ漢方処方は非常に多いけれども、
当帰・川弓・地黄・芍薬の四味すべてではなく、
中の二味、三味をとり入れて使っている処方が多い。

この場合もその処方に四物湯の方意があると考えるほうがよい。

ここでは「四物湯の展開」として、まず基本処方としての四物湯を見つめ、
次に構成生薬である当帰・川弓・地黄・芍薬について探っていきたい。



四物湯の大略

血虚の主方(自律神経系、内分泌系の失調による諸症)、
ことに婦人の自律神経系、内分泌系の異常による月経異常、無月経(閉経)、
生理痛、月経過多、および妊娠中の出血、機能的性器出血、切迫流産などに用いる。
そして次のような病態にも頻用する。


皮膚の異常

皮膚の老化や萎縮、 皮脂腺、汗腺も萎縮して分泌が悪く、
乾燥し、鱗屑、亀裂を生じかゆみを訴える。

皮膚はカサカサし毛髪は乾固し、色つやは悪く、爪はもろくなる。
このような皮膚の病態に四物湯を用いると良い。

また潰瘍や骨折で肉芽の増殖が悪く、治りにくい場合でも
四物湯によって治癒が促進される。褥瘡などに配合して応用する。

四肢の運動麻痺、知覚麻痺、筋肉萎縮や変形、腰痛などの疼痛
これらは脳血管障害による片麻痺、脊髄カリエス、小児麻痺などによるものも含む。

また眼の視力障害、聴覚の異常にも用いられる。


栄養障害、脱水

これには2つのパターンがあります。

1つは、新陳代謝の亢進により、いくら食べても太れない。
「気」とは機能であり、「血」とは物だとされる。気が亢進しすぎると物が不足する。

同化作用よりも異化作用が亢進している状態です。
亢進した異化作用を抑えるか、同化作用を四物湯によって強化するかを考えます。

もう1つは、慢性の疾患で、長い経過のため栄養が衰え、皮膚はカサカサで
筋肉は痩せ、骨も痩せて粗鬆となり、身体全体が脱水し、痩せて枯れたようになる。

また腸内も乾燥するため大便もコロコロになる。

これは機能低下すなわち気の不足による。または気血ともの不足による栄養障害です。
気の不足のため肉体すなわち血が不足する。

不足した気を補うか、気と血を同時に補うかを考えます。



また、これらの血虚によって物質代謝が亢進して体温が上昇したり、
身体が熱くほてるなどの熱症状を「血虚の発熱」といい、
熱症状の甚だしい病態を「陰虚」という。


出血について 〜止血作用〜

四物湯のルーツをたどると、「金匱要略」に記されている芎帰膠艾湯があります
芎帰膠艾湯から甘草・艾葉・阿膠を除くと四物湯(当帰・川芎・芍薬・地黄)になります。

芎帰膠艾湯は、金匱要略では婦人妊娠病門にあり、次のような性器出血を適応としている。

  @一般に婦人の性器出血に用いる
  A流産や早産のあと、性器出血の止まらない者に、
  B妊娠中の性器出血、とくに切迫流産の危険があるときに

   Bは本方の最も適応する症です。
   @とAは本方が良い場合もあり、
   駆血剤、または気虚の四君子湯類が適応する場合もある。

ここで面白いのは、四物湯がAにもBにも効果があるということです。

AとBは西洋医学的に見ると反対の病態で、矛盾していて理解されにくいと思います。

切迫流産のときは子宮を収縮させると悪いのとは反対に
産後の出血には子宮を収縮させると止血されやすい。

四物湯は子宮に対して調整作用をもつとしかいいようがなく
西洋医薬のように一方通行ではなく、たるんでいる時は縮めて縮んでいるときは緩める。

こんな漢方薬ならではの身体に優しく、使いやすい作用があります。

本方の地黄・芍薬・阿膠・艾葉は止血剤であり、
本方を婦人科的出血に用いるのは当帰・川を配合しているからです。

阿膠・艾葉のない四物湯でも止血作用があり、出血の強いとき芎帰膠艾湯を使う。

また阿膠で止血作用の強いのは褐色の汚いのが良くて、きれいなゼラチンは作用が弱い。
したがってゼラチンの入った芎帰膠艾湯のエキスなどは、四物湯とその効果に大差はない。

四物湯は外傷性の出血や吐血、喀血、鼻血、血尿、
胃・十二指腸潰瘍の出血、痔出血などにも効果がある。

ただ同じ出血でも、
酒飲みの赤ら顔の者、炎症や動脈性の出血には、瀉心湯や黄連解毒湯が良く、
慢性化した場合は黄連解毒湯に四物湯を合方した温清飲が良効であったりする。

また駆血剤が有効であったり、気虚の四君子湯で始めて止血することもある。


婦人科・産科に、そして

四物湯が初めて記載されたのは和剤局方(1151年)です。

性器出血に芎帰膠艾湯を用いているうちに
月経異常などに対しても月経調整作用が確認されたのだと思う。

そして止血の阿膠・艾葉を除き、四物湯として月経異常だけでなく、
内分泌・自律神経系の失調にも効果のあることがわかり広く応用してきた。

四物湯は始め止血剤であり、時代を経て産科・婦人科の聖薬となり、
次に男女を問わず内分泌系・自律神経系の異常に有効なため利用されるようになった。



当帰の薬能

1.血行をよくし、主として下半身及び四肢末端に作用し、
  腹部や四肢,頭部を温める(温経散寒)・・・・活血作用
 
   <代表処方>当帰四逆湯   当帰+桂枝・細辛など

2.月経異常に用いる(補血調経)
  子宮筋の痙攣や収縮を弛緩させる。 また血流をよくして子宮の発育を促す。
   
   <代表処方>四物湯   当帰+川・白芍・地黄
            生理不順、月経痛、閉経等を治す。

    血行を良くする作用も子宮に対する作用も複雑で、
    局所作用だけでなく、上位の神経などに作用し、
    自律神経や内分泌系を介して作用することもある、と考えられる。

3、疼痛を軽減する。例えば子宮筋あるいは小動脈の痙攣を緩和するので、
  月経痛あるいは閉塞性血栓血管炎、糖尿病性壊疽などの疼痛にも適用。
  
  また打撲や産後の血による疼痛を治す(散止痛)
  打撲によりうっ血や内出血、紫斑をつくり腫脹、疼痛あるとき、
 
   <代表処方>通導散   当帰+紅花・蘇木・大黄など 

4、大便を軟らかくする(潤腸通便) 腸管内に水を貯留。
  当帰は油を多く含むため、腸管内に水分を溜めて大便を軟らかくする。
 
   <代表処方>潤腸湯   当帰+桃仁・杏仁・麻子仁・大黄など。

    また、体内の水分不足により筋肉が痙攣するときには
    当帰が体内で水分を保ち痙攣を止める。

5、化膿性炎症、潰瘍の治療に用いる(排膿消よう) 排膿・肉芽増殖促進効果
  炎症による血流の鬱滞を除き、腫脹を除き、排膿を助ける。
  肉芽の増殖を盛んにして、潰瘍の治癒を促進する。
 
   <代表処方>千金内托散   当帰+黄耆・人参・肉桂など
                痔ろうなど慢性化膿症にも適用。



川芎の薬能

1.血管を拡張して血行をよくし痛みを止める(きょ風止痛)
  
  1)脳や頭部の血流をよくし、頭痛を止める。
    脳貧血や血管痙攣による頭痛によい。
   
   <代表処方>川茶調散   川+細辛・キョウ活・防風・ビャクシなど
             感冒やインフルエンザなど感染症に伴う頭痛に用いられる。 

  2)四肢の血行をよくし、血行障害による四肢のしびれ、麻痺、疼痛に用いる。
   
   <代表処方>疎経活血湯   川+防風・防巳・威霊仙、キョウ活、蒼朮など 

  3)冠血管拡張

   <代表処方>冠心U号方   川+丹参・赤芍など
                 狭心症の胸痛 

2.血による月経障害を治す(活血調経)
  1)無月経、稀発月経に用いる(月経過多や出血の多いものには注意)
   
   <代表処方>四物湯   川+当帰・芍薬・地黄 

  2)難産、後産、産後の出血等に用いる(産後の子宮の収縮をよくする)
   
   <代表処方>芎帰調血飲   川+当帰・赤芍・桃仁・紅花・牡丹皮など 

3.精神的ストレスによる胸脇部の痛みに用いる(行気解欝)
   
   <代表処方>疎肝湯   川+柴胡・白芍・枳殻・紅花・桃仁など 
 
4.排膿効果→膿の形成と軟化を促進。化膿症、潰瘍の治療を促進する
   
   <代表処方>千金内托散   川+当帰・桂枝・黄耆・ビャクシなど



芍薬の薬能

1、筋肉の痙攣を止める・鎮痛効果(舒筋止痛)
  主として平滑筋の痙攣を止めるが、骨格筋の痙攣にも有効。
  
1)消化管、胆道、尿路、子宮等の痙攣性疼痛(腹痛)に用いる。
  
   <代表処方>芍薬甘草湯  芍薬+甘草

  2)月経時、妊娠時の腹痛に用いる。
  
   <代表処方>当帰芍薬散  芍薬+当帰・白朮など 
  
  3)中空臓器の痙攣性疼痛や痙攣性便秘に甘草を併用。

 冷えによる腹痛には乾生姜、炮附子などと配合。
  
 殊に腓腹筋の痙れん、胸腹部の疼痛に甘草を併用。
  
 冷えが認められるときには、桂皮、当帰、炮附子などと配合。

2.収斂作用
  
  1)止汗作用
   過度の発汗を抑制する。 
   発熱性疾患の発汗過多を抑える目的で配合する。
  
   <代表処方>桂枝湯  芍薬+桂枝など 
  
  2)止血作用(斂陰止血)
    血管を収縮して止血する。鼻出血、喀血、下血、性器出血などに適用。
   
   <代表処方>帰膠艾湯   芍薬+地黄・阿膠・艾葉など

  3)また桂皮、川、当帰などの服用による
    血管拡張、出血傾向、頭痛、のぼせ、動揺感、回転性めまいなどを抑制
    胃液分泌を抑制するので胃酸過多症にも適用。

3.向精神作用(柔肝止痛)
  気分がイライラしてよく腹を立て、気を使って起きる脇痛、腹痛を治す。
   自律神経の興奮に対して用いる。
 
   <代表処方>四逆散  芍薬+柴胡・枳実など 

4.月経不順、不正性器出血を治す(養血調経)
  白芍は補血、鎮痛の作用があり、血虚による月経不順、不正性器出血に
  月経痛、下腹部痛等を伴うものを治す。
   
   <代表処方>四物湯  芍薬+当帰・地黄・川

5.うっ血除去効果
  打撲によるうっ血、皮下溢血、硬結、疼痛、感覚消失などに適用。



地黄の薬能

 生地黄(乾地黄と鮮地黄)と熟地黄とに分けて考えます。
 同じ植物ですが、加工(修治)法によりその作用に差が出て、使用法が異なる。
 
 生地黄は、解熱消炎(清熱涼血薬)、
 熟地黄は、滋養強壮(補血)に分類される。
 

熟地黄の薬能

熟地黄は、地黄の根を乾燥し、酒につけて蒸してつくる。
この様に加工すると、生地黄にある消炎解熱作用や止血作用はなくなる。

1.体内の水分量を保持、潤し脱水を防ぎ、口渇を除く  (生津止渇)潤燥効果
  
  1)体内の水分を保ち、麦門冬や天門冬のように脱水を防ぐ。
    
    熟地黄+山薬・五味子
  
  2)腸燥便秘に用いる(潤腸通便) 緩下効果
    腸管内水分量を保持し、糞便を軟らかくする
   
   <代表処方>潤腸湯   熟地黄+当帰・桃仁・杏仁・麻子仁など

2.栄養を補い老化を防ぐ(滋腎育陰)  栄養障害改善効果
  老化現象で痩せた筋肉を太らせ、骨、足腰を丈夫にし、
  老化萎縮した皮膚を回復させる。
  
  また神経の反射機能をよくし、膀胱の機能をよくする。
  小児の発育不全、老化の防止に用いる。
   
   <代表処方>六味丸   熟地黄+山茱萸・山薬など

3.強心作用   吸気性呼吸困難に適用
  地黄には弱いが強心作用があり、肺水腫、うっ血性心不全(主に左室不全)に用いる。
  
   <代表処方>八味丸   熟地黄+沢瀉・茯苓・桂枝・附子など 

4.自律神経、内分泌の調整に働く(補血調経)
  下垂体−卵巣系のホルモンの失調による月経不順や不正性器出血を治す。
  月経異常、糖尿病、バセドウ病、などにも適用。
   
   <代表処方>四物湯  熟地黄+当帰・川・白芍

5.胃障害をひき起こすことがあり、これを防止するためには、黄柏又は呉茱萸を併用。


生地黄の薬能

1.消炎解熱作用(滋陰降火)
  解熱作用があり、熱性疾患に用いる。一般に熱病の初期には用いない。
  
  熱病で身体の水分が欠乏して脱水状態(口渇など)が認められるときに用いる。
  解熱作用は熱中枢に作用するのではなく、細胞の物質代謝または熱生産を抑制して
  発汗を伴わないで解熱させると考えている。
  
  新陳代謝の亢進を抑制するためバセドー氏病のような甲状腺機能亢進を抑える。
  
    <代表処方>知柏地黄丸  生地黄+知母・黄柏など 
  
                また扁桃炎、咽頭炎にも適用。

2.消炎止血作用(涼血止血)  炎症性、充血性出血に適用。
  血熱による出血に用いる。

  吐血、鼻血、性器出血、崩漏下血、斑疹紫黒等において、
  血管透過性を抑制し凝固作用促進することにより止血する。
  
   <代表処方> 犀角地黄湯、 四物湯   生地黄+牡丹皮・赤芍など
  
3.1)脱水による口渇を治す(生津止渇)
    熱性疾患で脱水して口渇するものを治す。
  
   <代表処方>増液湯   生地黄+玄参・麦門冬など 
  
  2)緩下作用(潤腸通便)
    腸管内水分量を保持し、便を軟らかくする。

4.流産防止効果
  下腹部痛を寛解し、切迫流産に用いると流産防止の作用がある。
  性器出血を止める。

5.強心利尿作用
  吸気性呼吸困難にも適用。

    <代表処方>八味丸  生地黄+桂枝・附子など 
                  
6.自律神経系・内分泌系機能の調整効果
  月経異常、不正子宮出血、糖尿病、バセドウ病などにも適用。

7.胃障害をひき起こすことがあり、これを防止するためには黄柏又は呉茱萸を併用。

                                 
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四苓散の展開

四苓散の展開 @

昔は消化管に数多くの門があるといわれた。
その中で現在でも使用されている門は肛門、幽門と噴門の三つです。

使われなくなった門の一つに闌門があり、回盲部のあたりにあったと考えられる。

古人はこの闌門を通して濁水は膀胱に、糟糖は大腸に送られると考えていた。
そしてこの作用を小腸“泌別の作用”といったのです。
 
下痢というのは、この作用の機能障碍であって、
膀胱へゆくべき濁水が大腸に流れこむためであると考えた。 臨床的仮説ですね。
 
したがって、下痢の治療には、大腸に流れて行く水を膀胱に送ればよい。
そこで茯苓、白朮、蒼朮、猪苓、沢瀉、滑石などの利水薬を用いた。
 
茯苓、白朮、猪苓、沢瀉の四苓散は、腸内の水を抜く基本処方です。



五苓散と猪苓湯
 
五苓散も猪苓湯も四苓散の展開と考えられないことはない。
茯苓、猪苓、沢瀉が共通で、朮と桂枝か、滑石と阿膠かの違いになる。

この場合両者に共通する症状は……、
 @下痢
 A煩渇…口渇が甚だしく水を飲む。それでもなお口が渇いて水を欲しがる。
 B小便不利
 A、Bは(血中の及び体内の)脱水のためであり
 @の下痢はその原因です。 そして消化管内には水分が多い。

消化管内は体の外ととらえ
下痢のため体内・血中の水分が失われて、脱水症をおこしているとした。
 
五苓散の朮と桂枝か、猪苓湯の滑石・阿膠かは、炎症のちがいによる。
 
五苓散の場合は、体温の上昇があるときも悪寒を伴い、脉は浮いて、
口唇や口の中は渇いていても、舌色は正常で舌苔は白苔です。

すなわち、初期の炎症でも悪寒があるため、
風寒の状態で、まだ表の時期であり桂枝や朮を用いる。

五苓散で発汗して熱が下がる。尿量が増加し、水を与えなくても脱水が治る。
これは消化管の水が五苓散で吸収されるからなのでしょう。
 

猪苓湯は炎症の熱が深く、表でなく裏にはいった時期で、
五苓散が太陽病の時期なら、猪苓湯は陽明病の時期です。

悪寒はなくむしろ悪熱する。 同じ利尿作用がある薬物でも、
滑石のように熱を抑え消炎解熱作用のある薬物を加える。
 
阿膠は体内の脱水を防ぐために加えるもので、
黄連阿膠湯の阿膠と同じように、脱水と解毒による不眠、煩躁に加えたものです。
 
臨床的な鑑別は、

@悪寒(微熱)があれば、五苓散。
A悪寒し、発汗があれば、猪苓湯。
B舌色が絳で、苔が黄なら猪苓湯。
C尿色が希薄であれば五苓散、尿色が濃ければ猪苓湯です。

[注意]
・これは熱病の下痢の場合です。
・口渇も尿不利も体内の脱水を示す症状で、五苓散、猪苓湯の両方ともにある。
・煩躁・不眠は猪苓湯が強いが、五苓散にも煩躁はある。
・舌証になれることも大切です。


それぞれの薬味の作用は次のようになります。

茯苓
 古来、浮腫、水腫、下痢、嘔吐、腹水等に用いられ、
 「水湿」や「痰飲」の薬として用いられた。
 動物実験で利尿作用がある。 木通、猪苓より作用が弱い。

 Nа、K、Clなどの排出も増加する。尿細管の再吸収を抑制する……と記載がある。

 しかし、実際に茯苓や朮が、浮腫、水腫、下痢、腹水に対して利水作用があっても
 健康な人間に利尿作用があるとは限らない。

 動物実験では、先ず浮腫の動物をつくらねばならないではなかろうか。


 茯苓と同じように、また茯苓と配合して
 消化管の水、関節内の水や筋肉内の浮腫の水分を 血中に吸収する作用。

沢瀉 猪苓
 沢瀉や猪苓は茯苓や朮に比較すると利尿作用が強い、と考えている。

桂枝
 腎血管や末梢血管を拡張させて利尿作用を助け、浮腫の水分を吸収する。
 また、発汗作用があり、悪寒発熱時に五苓散を用いると多量の発汗をみることがある。
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四苓散の展開 A



苓姜朮甘湯

[組成]
  茯苓、乾姜、朮、甘草。

[解説]
  本方は腎著の方剤です。

1 腎著の病は飲食に異常がない。即ち消化管に病気がない。(中焦脾胃の異常がない)。

2 腎著の病は小便自利していて、 腎臓の機能に障碍がない。
  尿量はむしろ多く、しかも口渇がない。従って糖尿病のような消渇ではない。
  寒冷のため発汗が少なく、それで尿量が増加している。

3 身体が重い、腰重きこと五千銭を帯びるようで体が重い。ことに腰が重い。
  
  立居振舞が鈍く、 動作が機敏にいかない。
  坐るとき、立つとき「やっこらしょ」と掛け声をかけるようになる。
  
  「脚や腕に鉛が入っているようだ」「腰に石をくくりつけているようだ」などと表現する。
  これは筋肉内の浮腫を意味する。
  リウマチの朝のこわばり現象と同じようなもの。

4 「形水状の如し」これは水肥りで腫れているようなもの。
  皮下の浮腫を含むものもある。

5 「水中に坐する如く、腰中冷」 ことに下半身が冷えることをさす。
  身体に浮腫、筋肉内の水滞があるため、外部環境から寒冷の作用を受けて冷える。

 浮腫があればそのために血行障碍もそれに加わって冷えの症状がさらに強くなる。
 茯苓と朮でこの浮腫を除き、乾姜で温めるという方剤です。

 杏仁を加えて腎著湯という。 杏仁にも鎮咳作用のほかに浮腫を除く作用がある。



苓桂朮甘湯

[組成]
  茯苓、桂枝、朮、甘草。

[解説]
  本方は茯苓と朮で浮腫を除く。
  桂枝という血行をよくする薬物を加えると、浮腫を除く力が強くなる。
  
  また、胃腸の血行もよくするため利尿作用も増強される。
  次のようなときに応用される。

     (1) 潜在性の浮腫に対して

     (2) めまいに対して

     (3) 心悸亢進に対して
 
 

連珠飲

[組成]
  当帰、川きゅう、芍薬、茯苓、朮、桂枝、甘草。

[解説]
  本方は四物湯と苓桂朮甘湯を合方した処方です。
  苓桂朮甘湯も四物湯もともに応用範囲が広いため、本方の応用は非常に広い。

 四物湯は三段の変化をとげている。
 最初はきゅう帰膠艾湯として婦人性器出血に用いたのは《金匱要略》の時代。
 
 そのうちに、婦人の生理異常など女性の自律神経内分泌系異常の治療方剤として
 有効なことが分かり、
 出血の多量時以外は艾葉を除いた四物湯を婦人の聖薬として
 用いるようになったのが《和剤局方》の時代。

 その後婦人ばかりでなく男子も含めて、
 すべて血虚に対する補血の方剤として用いられるようになった。
 
 血虚は貧血ではなく、四物湯は増血剤ではない。
 これをまちがえると全く使用法を誤ることになる。
 
 血虚はむしろ自律神経・内分泌系の失調の状態です。

@出血に対する方剤として
  本方は竹中南峰の茵荊湯と似た方意をもっている。
  
  四物湯を止血剤として、例えば胃潰瘍の出血に柴胡四物湯を用いるのは有名で
  即ち茵荊湯の蒲黄、荊芥の代わりに四物湯を用いて止血をする。

 苓桂朮甘湯は出血による眩暈、心悸亢進、浮腫に用いる。

A婦人血の道症の方剤として
  四物湯も苓桂朮甘湯もともに
  婦人の内分泌・自律神経系の異常による生理不順や生理異常をはじめ、
  更年期障害、不定愁訴に用いられ、婦人の百病に応用する。



沢瀉湯《金匱要略》

[組成]
  沢瀉、朮。

[解説]
  胃内に停水が多く、そのために頭に物を冒されているような感がして眩暈がする。
  (暗室にいるような、また舟に乗っているような、雲の上を歩くようなめまい)
  そして尿量が少ない。
  このような場合に用いて水を尿に取り、めまいを治す基本的方剤です。



茯苓沢瀉湯《金匱要略》

[組成]
  茯苓、桂枝、朮、甘草、沢瀉、生姜。

[解説]
  これは「食べたものを嘔吐し、口が渇いて水を飲みたがる者」
  に用いるように指示されている。
  “胃反”は、胃炎、胃拡張などの胃疾患による嘔吐であって、
  食べたものを嘔吐する。
  胃反の嘔吐で悪心が強く、ゲェゲェいうときには、半夏や生姜を主薬とした方剤、
  例えば大半夏湯、小半夏湯、生姜瀉心湯などを用いる。

  五苓散の“水逆の嘔吐”は、嘔気が少なく、渇して水を飲み、
  飲んだ水より多い量の水を噴出するように、投げ出すように吐出する。
  その吐物は食べた物より水が多い。 そして尿量は減少する。

本方は五苓散からすれば猪苓を除いて、生姜が入っている。

丁度五苓散の水逆の嘔吐と、胃反の嘔吐の中間の症であって、
口渇があり水を飲まんとし、小便不利の点は水逆に似ている。
そこで、五苓散から猪苓を除き、嘔気に対して生姜を加えている。

エキス剤なら、五苓散と小半夏加茯苓湯の合方でもよい。



五苓散 《傷寒論》《金匱要略》

[組成]
  茯苓、猪苓、白朮、沢瀉、桂枝。

[解説]
  出典は、《傷寒論》で、熱病の傷寒のための方剤として組まれたものと思われるが、
  その応用は必ずしも熱病に限らない。
  一種の利尿剤と考えれば、浮腫をはじめ種々の病に用いられる。
     (1)熱病の場合
     (2)雑病の場合



猪苓湯 《傷寒論》

[組成]
  猪苓、茯苓、沢瀉、滑石、阿膠。


真武湯 《傷寒論》

[組成]
  茯苓、白朮、附子、生姜、芍薬。

[解説]
  本方も、茯苓と白朮に附子を加えた利水の方剤で、五苓散の加減法です。



附子湯

[組成]
  茯苓、朮、附子、人参、芍薬。

[解説]
  本方は、真武湯の生姜の代りに人参が入り、薬味の量が多少の違う類方であり、
  嘔、下痢などの消化管の水の症状は指示はされず、
  四肢、骨節(関節)の水滞と冷えと疼痛に用いるように指示されている。

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生薬解説

一般的に記されている生薬の薬理作用については、
疑わしい作用が少なからずあるため、臨床の場で検証する必要性があります。

経口投与ではない実験による作用や、生体外または試験管内の実験に基づくものがあるし
実験に用いられた動物の種差の問題もあります。

比較的近縁の種と思われるマウスとラットとの間においてさえ
例えば大黄の主成分センノシドAの瀉下作用の機序自体が異なるのです。

動物に効いても人間に効くとは限らない。

また、例えば、黄連の成分はベルベリンと言われますが
黄連の鎮静作用はベルベリンではないように思えます。

ベルベリンは黄連でも黄柏でも同じですが脳の血液脳関門を通らない。
ベルベリンは腸から吸収されないらしいし、大黄と煎じると沈殿します。

この沈殿したものは、塩酸に入れても、人口胃液とか腸液ぐらいでは溶けない。
こうなると、黄連と大黄を含む三黄瀉心湯の鎮静作用はベルベリン以外の作用です。

漢方を科学するといってベルベリンを一生懸命定量しても
違うものを定量して、見当違いをやっているように思えます。

さらには、近年、論文量産や業績主義による弊害として
残念な事に、信頼性に欠けるものも見受けられます。 玉石混合ですね。

どの生薬にも、一つの生薬には多くの成分を含むため
一つの生薬から一つの成分を抽出して薬理作用を言うには無理があります。

ましてや、複数生薬の相互(特に相乗又は拮抗)作用に関しては
巨大コンピューターをフル稼働しても難しいそうです。



山本巌先生は、その著『東医雑録』の中で、
「個々の薬物の働きと、薬物を組み合わせるとどうなるか、倶に服んで結果を出そう。
“我こそは現代の神農たらん”と人生意気に感ずる志のある者は来れ。
漢方の先生は薬物と患者である」 と述べている。

山本巌先生は、毎日患者さんに単味の生薬や適合すると考えられるエキス剤を飲んでもらい、
5分、15分でその効果を判定して、生薬単味や処方の作用について確かめていかれた。
 
頭痛、肩こり、めまい、鼻水、咳、腹痛などの症状の患者に
5分、15分のテストで患者の自覚症状の改善率を効果判定し、
有効でない場合には、第二、第三の生薬単味や処方を飲ませて同じように判定された。
 
連日これらのことを繰り返し、データを膨大に蓄積、整理することにより
どのような病態に対して、生薬単味や、その組み合わせが有効かということを判定していった。

また、過去の漢方医の治験や処方の中から、どれが最も有効なのかを、実際に比較検討し、
さらになぜ有効なのかを、病態と処方との関係から説明できる理論を作り出していこうとされた。
 
また、異なる病気であっても、その病態が類似すると考えられる場合には、
共通の薬物を用いて、それが有効かどうかを判定するということを繰り返して、
各病態に対して最も有効だと考えられる方剤と、その加減方を決めていかれた。


やはり、一つの生薬、組み合わせることによる生薬の相互作用
そして、処方としての作用を一つ一つ臨床の場で検証し、積み重ねていく必要性があります。

ここでは、一つ一つの生薬の成分については記さないで
現時点で信憑性のある生薬の薬能について記していきたいと思います。

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阿膠

@止血効果→下血、血尿、性器出血などに。

             当帰、芍薬、地黄と併用   EX、キュウ帰膠艾湯

A潤燥効果→体内水分量を保持し、脱水を防ぐ。

              EX、猪苓湯

B鎮静効果→熱と脱水などによる不眠や胸内苦悶に。

              黄連、黄ごんと併用       EX、黄連阿膠湯

C他の配合生薬と一緒に煎出すると、
 容器に焦げ付くことがあるので、煎じた後に加えて溶かす。
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茵ちん蒿

清熱、利湿、利胆作用

@利胆効果→黄疸、または胆石症。

              EX、茵ちん蒿湯

A解熱・抗炎症・利水効果。

              EX、茵ちん五苓散
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  鬱金(宇金)


@温性。

A鬱血除去

  気血の鬱帯により起る胸痛、腹痛などに。
  また、生理痛や乳房が張る痛みに。

B利胆、利尿、鎮痛効果。

  腎結石による腎臓部の痛み、胆石による胸脇部の痛み。
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烏薬


@温性。

A鎮痙・鎮痛効果→寒冷刺激によって起るお腹が張っての痛み(特に臍部周辺痛)、
   月経時及びその前後の腹痛、下痢に伴う腹痛、筋肉のこりと痛みなどに。

   とくに寒冷による胃腸、胆道、尿管、膀胱などの中空臓器の平滑筋の痙攣性疼痛に。
                            EX、きゅう帰調血飲第一加減

B機能障害改善効果→頻尿などの膀胱機能異常など下半身の機能障害に。

   胃腸の蠕動を調え、腸のガスを排出。

C血流改善

   脳血流を改善、脳血管障害の後遺症に。

                            EX、烏薬順気散
                                    このページのトップへ

延胡索


@温性。

A鎮痙・鎮痛

  冷えによる胃腸のれん縮性疼痛、出血を伴う排尿痛、月経痛などに。

                           EX、安中散、きゅう帰調血飲第一加減

Bうっ血・内出血除去

  脇痛、腰痛、関節痛、打撲痛などに。
                                    このページのトップへ

黄耆


@疲労に、生体防御能増強、筋緊張増強に

   気力や体力が衰えて疲れやすく、体がだるい、手足に力が入らないとき。

   制癌剤の服用、放射線の照射などによる免疫低下に。

   柴胡、升麻と配合して
   アトニー、内臓下垂症、脱肛・子宮脱のような臓器ヘルニアなどに。

                  柴胡、升麻と併用 EX、補中益気湯

A利水作用

   抗利尿作用を示す人参の効果との重要な差異。
   防巳、茯苓、白朮などと配合して顔面、四肢などの浮腫を除去する。

                  白朮、防巳と併用 EX、防已黄耆湯

B汗腺機能異常改善

   疲れやすくて疲れるとしばしば発汗する、わずかな動作で発汗する、
   食後しばしば発汗する、寝汗をかきやすいなどの発汗異常に。

                  防風、白朮と併用 EX、玉屏風散

C皮膚の知覚異常、運動麻痺などに

   当帰、川きゅう、桂皮、紅花、桃仁などと配合して、
   皮膚のしびれ感・知覚異常、脳出血後の運動麻痺などに。

                  桃仁、当帰、川きゅう、地竜と併用 EX、補陽還五湯

D皮膚の化膿症に

   炎症反応が弱い皮膚の化膿性病変で、化膿が不十分なとき、
   化膿しても膿栓が自壊して排膿しないとき、
   または排膿後、良性肉芽の増生が悪いときに。
                   人参、桂皮、当帰、川きゅうと併用 EX、千金内托散
                                    このページのトップへ

黄ごん


@寒性。

A消炎解熱作用

    発熱性疾患、炎症性の充血又は出血(下血、血尿など)などに。
                              EX、黄連解毒湯
    上気道炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器の炎症による咳嗽に。
            桑白皮、杏仁、母貝と併用  EX、清肺湯 
    温熱の下痢に用いる。
      細菌性下痢、腸炎で腹痛、裏急後重、悪臭ある便などに。
                     芍薬と併用  EX、黄ごん湯

B降圧作用

C流産防止効果

    切迫流産で熱症のあるものに用いる。
                      白朮、当帰、芍薬と併用。
                                    このページのトップへ

黄柏


@寒性。

A消炎解熱作用

 陰虚発熱、 骨蒸潮熱を治す。
 足がほてり熱くて眠れない、腰や下肢がだるく痛む、口渇など。

                    知母と併用  EX、知柏地黄丸

B消炎作用

 1)腸炎、下痢、膿血便を治す。
  抗菌、消炎作用があり、下痢、腹痛、裏急後重に用いる。

                             EX、黄連解毒湯
 2)下肢の炎症に用いる。
  下肢の運動麻痺、腫脹、疼痛に用いる。

                             EX、三妙散
 3)化膿性炎症に用いる。
  皮膚の化膿性炎症を治す。
  湿熱による黄色の帯下に用いる。

C黄疸を治す
                             EX、茵ちん蒿湯
                                    このページのトップへ

黄連


@寒性。

A鎮静解熱作用

 脳充血による精神不安を鎮静。
 怒りや興奮を鎮める。

                         EX.黄連解毒湯
B消炎効果

 細動脈を収縮して炎症性充血を抑える。

 1)身体上部の炎症に
   目、舌、口内、歯肉や頭部の炎症に。

 2)皮膚の炎症に
   日光皮膚炎、化膿性炎症などに。

 3)黄疸を伴う炎症に
   肝炎、胆のう炎に。

C健胃作用

 胃粘膜の充血性炎症を治す。
 制酸作用がある。
                         EX.半夏しゃ心湯

D降圧作用

E抗菌作用

 細菌性下痢、腸炎に。
 化膿性炎症に。

F黄連に対する感受性の差が強いため、その服用により、
 胃のもたれ感、腹中冷感、下痢などを訴えるときには、
 呉茱萸湯で治療、または、まえもって呉茱萸や乾生薑などを配合する。
                                    このページのトップへ

遠志

@温性。

A去痰作用

 悪心性去痰で気道の分泌を高めて去痰する

Bゆるやかな鎮静作用。不眠に
                         EX.帰脾湯

C軽度の悪心をひき起こすことがあるので用量に注意。
                                    このページのトップへ

艾葉

@温性。

A止血効果

 特に婦人科領域の出血に。

B流産防止効果。

 下腹部痛、性器出血などの切迫流産の兆候があるときに。

                         EX、きゅう帰膠艾湯

C寒証の腹痛に。
                                    このページのトップへ

莪朮

莪朮は三稜と作用が類似しており、両者はよく併用される。

@温性。

A月経異常(月経痛、無月経、月経不順)、

  1)月経異常(月経痛、無月経、月経不順)に用いる。
    月経痛があり、無月経で下腹部に腫瘤を触れるようなものに用いる。
  2)月経痛、胸腹部痛、脇下腹部痛等に使用する(行気止痛)
    気滞血によるものに用いる。

B腹部腫瘤に使用する(破通経)

  腹部腫瘤(肝硬変による肝脾腫大、ガン等)に用いる。
  抗腫瘍作用があるといわれる。
  消化器系及び生殖器系の悪性腫瘍に三稜とともに配合。

C健胃作用(消食化積)

  不消化物の胃腸内残留に用いる。
        反対に胃障害をひき起こすことがあるので用量に注意。

                                    このページのトップへ

かっ香

@胃腸症状を伴う感冒に用いる(化湿解表)

  頭痛、腹痛、嘔吐、下痢等の胃腸症状を伴う感冒に、
  消化管内の貯留水を吸収利尿すると同時に発汗解表する。

                    EX、かっ香正気散

A血行をよくして胃腸を温め嘔吐を止める(温胃止嘔)        

 冷たい飲食物の摂取による胃障害や胃腸のれん縮性疼痛にも用いる(行気止痛)
                    EX、不換金正気散
 
B消化機能促進に基づく食欲増進効果(胸をすっとさせる)が認められる
  食欲を増進し、嘔吐、下痢、腹痛を止める。(化湿脾胃)

                                    このページのトップへ

葛根

@鎮痙効果

  主として項部から背部にかけての筋肉に強張り
  または上肢の筋肉の強張りに使用。

            芍薬、甘草と併用。 EX、葛根湯

@消炎解熱作用(散熱解表)

  外感病、表証があって悪寒、発熱、口渇、頚背部に筋肉の強ばりのある者。

            麻黄、桂枝と併用。 EX、葛根湯

A消炎止痒作用(宣毒透疹)発疹促進

  炎症に伴う掻痒に用いる。

            升麻と併用。    EX、升麻葛根湯

B体内の脱水を防ぐ(生津止渇)

  解熱作用によって体内の水分の喪失を防ぎ口渇を止める。

            知母、石膏と併用。

C下痢に用いる(止瀉作用)

  急性腸炎、細菌性下痢等湿熱の下痢に用いる(収斂消炎作用)。

            黄ごん、黄連と併用。 EX、葛根黄連黄ごん湯


                                    このページのトップへ

滑石

@寒性。

A消炎利尿作用

  消化管の水を血中に吸収して尿量を増加させ
  尿の浸透圧が低下するため膀胱、尿道の刺激を和らげる。
  尿道炎、膀胱炎、尿路結石に。

           猪苓、茯苓、沢瀉と併用  EX、五淋散、猪苓湯

B水様性の下痢に用いる

  腸粘膜保護、抗炎症、利尿作用がある。

           猪苓、茯苓、沢瀉と併用  EX、猪苓湯

C熱性疾患で口渇、尿不利の者に用いる。

                                    このページのトップへ

か呂根

@寒性。

A消炎解熱、鎮咳作用(潤肺止咳)

  上気道炎、気管支炎、肺炎など呼吸器の炎症に。
  気道の炎症による咳嗽に用いる。

            柴胡、黄ごんと併用  EX、柴胡桂枝乾姜湯

B潤燥・去痰作用

  発汗などによる体内の水分量低下とそれに伴う口渇に
  脱水を潤して口渇を止める(生津止渇)


  また、乾咳で痰は粘稠少量で咳をして痰が切れにくいものに
  水分の少ない痰を潤して喀出しやすくする。

C排膿効果

  化膿性炎症に。

                                    このページのトップへ

か呂仁

@寒性。

A抗化膿性炎症・去痰作用

  肺又は気道の炎症のため、黄〜緑色の粘稠な膿性痰を喀出するときに、
  知母、冬瓜子、貝母、よく苡仁などと配合して、
  粘稠な痰を軟らかくして喀出しやすくする。

  胸にひびいて痛む(胸痛ある)者を治す。(化痰散結)

  急性気管支炎、肺炎、肋膜炎の痰、咳、胸痛に用いる。
    
            半夏、黄連と併用       EX、小陥胸湯

B消炎排膿作用

  肺膿瘍、気管支拡張症、急性乳腺炎、急性虫垂炎等に用いる。

C粘滑性緩下作用

  脂肪油で水分がすくないころころの便を軟化する。
  か呂仁は油脂成分が多く、大便の水分を貯え、大便を排出させる。

D狭心症などの胸痛に、薤白などと配合して適用。(化痰散結)

            薤白、半夏と併用       EX、か呂薤白半夏湯

                                    このページのトップへ

地黄

@寒性。

A消炎解熱作用(滋陰降火)

 解熱作用があり、熱性疾患に用いる。熱病で体の水分が欠乏して
 脱水状態のとき、細胞の物質代謝を抑制し、熱産生を抑制して解熱させる。
             知母、黄柏などと併用  EX、知柏地黄丸

 脱水による口渇を治す(生津止渇)

 熱性疾患で脱水して口渇するものを治す。
             玄参、麦門冬などと併用 EX、増液湯

B消炎止血作用(涼血止血)

 炎症性又は充血性出血に用いる。
 吐血、衂血、便血、崩漏下血などに
 血管透過性を抑制し凝固作用促進することにより止血する。
             牡丹皮、赤芍などと併用 EX、犀角地黄湯、四物湯

 また扁桃炎、咽頭炎に適用。

C緩下作用(潤腸通便)

 腸内に水分を保ち便を軟らかくする。

D流産防止効果

 切迫流産の下腹部痛を寛解し、性器出血を止める。
 
E強心効果

 吸気性呼吸困難に適用。
             桂枝、附子などと併用  EX、八味丸

F自立神経系・内分泌系機能の調整効果

 月経異常、不整子宮出血、糖尿病、バセドウ病などに。

G胃に負担になることがあるが、
 これを防止するためには黄柏又は呉茱萸などを併用。
                                    このページのトップへ

生姜

@熱性
 アドレナリンβ様作用(糖・脂質代謝促進の結果、熱産生が増加し、身体を温める)
 および抗セロトニン作用に基づく。 主として腹部及び胸部を温める。

 発汗解熱作用(散寒解表)      桂枝などと併用  EX、桂枝湯
 外感風寒に用いて頭痛、鼻閉等を治す。
           

A制吐・食欲増進・整腸作用(温中止嘔)

 腹部の冷えによる悪心、嘔吐、腹痛、下痢などに適用。
                       半夏などと併用   EX、小半夏湯、半夏厚朴湯

B鎮咳作用(化飲止咳)

 胸部の冷えによる水様性鼻漏、
 多量の泡沫状痰又は喘鳴(呼吸時ゴロゴロ音)を伴う咳嗽に適用。

 気管支カタルを治す。
                       半夏、陳皮などと併用 EX、二陳湯

C強心・昇圧・抗ショック効果

 ショック又は虚脱など急性末梢循環不全に炮附子と併用。

 ※未乾燥根茎には弱い発汗・解熱効果と比較的強い制吐効果が認められる。

          
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甘草

@胃腸の働きを良くして、体の元気を益す(益気補脾)

 気力や食欲が少ない、下痢しやすい、元気のない者に。
                  人参、白朮、茯苓と併用     EX、四君子湯

A心悸亢進を鎮める(益気復脈)、潤燥・鎮静作用

 発汗過多あるいはエネルギー代謝亢進などの原因で
 体内水分量が減少して心悸亢進、脈結代をひき起こしたときに。
                  人参、麦門冬、地黄、桂枝と併用 EX、炙甘草湯

 潤燥効果はミネラルコルチコイド様作用に基づくので、
 用量によっては浮腫を生じることがある。

 また大棗などと配合してヒステリー状態の神経症状を緩和する。
                  大棗、小麦と併用    EX、甘麦大棗湯

B筋肉の痙攣や痛みを止める(緩急止通)

 消化管のれん縮性疼痛、胆石症・尿路結石症などの疝痛発作や骨格筋の痙れんに。
                  芍薬と併用        EX、芍薬甘草湯

C消炎作用、抗化膿作用(解毒医瘡)‥‥生甘草を用いる。

 咽喉の腫痛、瘡瘍の腫脹などに用いる。
 1)咽喉の腫痛
                  桔梗と併用       EX、桔梗湯
 2)風熱表証に用いて熱を下し、化膿を抑える。
                  金銀花、連翹、牛牽子などと併用   EX、銀翹散

D咳嗽、喘息に用いる(潤肺きょ痰)‥‥生甘草を用いる。

 肺熱の咳嗽に用いる。粘稠で切れにくい痰を伴った咳嗽に
 上気道炎、気管支炎
                  杏仁、貝母、などと併用

E緩和、解毒に用いる

 大黄服用による腹痛、炮附子の副作用、アルコールによる肝障害などを軽減。

 ※炙甘草は、切断した甘草を鍋に入れ、数分間加熱(炒る)したもので、
  (しみこむ程度のハチミツと少量の水を加えることもある)
  気力回復・食欲増進・鎮静効果が発現し、
  心悸亢進、不整脈などの症状に用いる。

                                    このページのトップへ

桔梗

@去痰作用(きょ痰止咳) 鎮咳効果は弱い。

 痰の分泌を多くして喀出しやすくする。

 半夏と併せて鎮咳去痰薬として用いる。
        
A咽喉の炎症(咽痛)に用いて痛みを止める

 咽頭痛、嗄声などに
                甘草と併用     EX、桔梗湯

B排膿作用(排膿消癰)

 1)せつ、癰、皮下膿瘍などに用いて排膿させる。
                 枳実、芍薬と併用 EX、排膿散及湯
   炎症の強いとき  
                石膏と併用      EX、桔梗石膏

 2)気管支拡張症、肺化膿症
           葦茎、冬瓜子、貝母、紫苑 EX、葦茎湯合四順湯

                                    このページのトップへ

菊花

@消炎解熱作用(散熱解表)

 外感風熱による頭痛、発熱、目の充血、咽痛等に用いる。
             桑葉、薄荷、連翹などと併用   EX、桑菊飲

A眼の充血、眼痛、目のかすみに(清肝明目)
 
 1)風熱による眼痛(結膜炎)に。
             シツリシ、木賊などと併用     EX、止涙補肝湯

 2)頭がふらつく、眼がかすむなど肝腎不足に。
             枸杞子、地黄、山茱萸などと併用 EX、杞菊地黄丸

B鎮静効果
   不眠症に。

 ※野菊花は抗化膿性炎症効果。

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枳実

@消化管の蠕動促進作用

  胃内容停滞感、腹部の膨満感・圧痛などがあるときに使用して
  胃腸の蠕動をスムーズにして不消化物移送と腸内ガスの排出を促進する。 

 1)消化管の蠕動を亢進して不消化物を下方へ送り排出させて、
  腹満、腹痛、便秘などを治す。 裏急後重にも用いる。

  大黄に配合すると、その瀉下効果の発現時間を短縮する。
       厚朴、大黄、芒硝と併用        EX、大承気湯

 2)平滑筋の痙攣を緩めてジスキネジーを治す。

  胆道ジスキネジー、尿管ジスキネジー、過敏性腸症候群等

       芍薬、甘草、柴胡と併用        EX、四逆散

A幽門痙攣を除き蠕動をスムーズにし溜飲を緩解する

  胃内食物が下方へ通過しないため、心下部が痞え胸苦しいのを治す。
       陳皮、生姜、白朮、茯苓などと併用   EX、茯苓飲
  また嘔吐反射や逆蠕動運動などを抑制する。

B去痰排膿作用
       桔梗、芍薬などと併用         EX、排膿散及湯


  ※枳穀は、シネフリン含量が枳実のそれの約1/2で、
    枳実よりも作用が緩和なので、虚弱体質には枳穀を用いる。

           
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きょう活

@温性。

A発汗解熱作用(散寒解表)

 外感病にも使用するが、主に風湿に用いる。

B鎮痛作用(去風止痛)

 1)風湿による関節痛、筋肉痛、しびれ、強ばり等を治す
          防風、独活、威霊仙等と併用      EX、疎経活血湯

 2)頭痛に用いる。
          川きゅう、びゃくし等と併用        EX、川きゅう茶調散

※胃の弱い人には少量から(嘔吐を生じやすい)。

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杏仁

@温性。

A利水作用、鎮咳作用

  麻黄又は茯苓、白朮などと配合して浮腫に適用。

  肺、気道粘膜の浮腫を除いたり、痰の量を減少させる結果として、
  呼吸困難を寛解、喘鳴、多痰を除き鎮咳させる。 
  杏仁の利水作用が鎮咳に働く。

  気道炎症を伴う鎮咳に  麻黄、石膏、甘草などと併用  EX、麻杏甘石湯

B腸燥便秘を治す(潤腸通便)

  杏仁の脂肪油が腸を潤し排便を促進。
             麻子仁、枳実、大黄などと併用 EX、麻子仁丸 

  ※直接的な鎮咳ではなく、肺、気道粘膜の浮腫、多痰を除き鎮咳させる。
    副作用を考えると、成人の1日量として10gを越えないようにしたい。
                                    このページのトップへ

金銀花

@寒性。

A抗化膿性炎症

 皮膚化膿症の化膿性炎症に用いる。
                                 EX、たく裏消毒飲

B解熱作用(散熱解表)

 感冒や感染性疾患の初期で、発熱、熱感、頭痛、咽喉痛などの熱証のある者に。
 
                荊芥、連翹 などと併用   EX、銀翹散

C出血性炎症に用いる
                                    このページのトップへ

苦参

@寒性。

A消炎利尿作用(清熱燥湿)

 湿疹、皮膚炎、陰部掻痒症等に用いる。血熱、湿熱を治す。
 血管透過性亢進、充血、出血などに。
               知母、石膏などと併用         EX、消風散

B鎮痒効果

 湿疹・皮膚炎、蕁麻疹などに内服、または外用として
 (10gを水500mlで煎出して250mlまで濃縮したもので患部を洗浄)。

C抗真菌・抗トリコモナス効果

 膣カンジダ症、膣トリコモナス症などに外用。

                                    このページのトップへ

荊芥

@発汗解表作用(散寒解表) 弱い発汗効果
 発熱性疾患の頭痛、鼻閉、咽頭痛、結膜炎等に。

 1)風熱表証‥‥熱感を伴うとき
     薄荷、柴胡などと併用      EX、銀翹散

 2)風寒表証‥‥悪寒を伴うとき
     防風、生姜などと併用      EX、荊防敗毒散

A咽痛を治す作用

 咽頭痛、咽喉炎、扁桃腺炎に用いる。
     桔梗、甘草などと併用

B止血作用

 炒って炭化したものを鼻出血、下血、性器出血などに。

C止痒作用

 湿疹、皮膚炎、蕁麻疹の痒みを止める。
     防風、薄荷などと併用      EX、消風散
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鶏血藤

@温性。

A造血促進効果

  放射線治療などによる赤血球、白血球、血小板などの減少に。

B慢性関節リウマチの関節炎に。

C脳血管障害による運動麻痺、感覚障害に。

                                    このページのトップへ

桂皮

@熱性

 アドレナリンβ様作用(糖・脂質代謝促進の結果、熱産生が増加し、身体を温める)
 及び末梢血管拡張作用により寒冷のため収縮した皮膚、筋肉や四肢の血管を拡張し、
 体表部や四肢を温め、しびれ等の感覚異常、筋肉の痙れんを抑制して疼痛を改善。

     白朮、茯苓、附子等と併用    EX、桂枝加朮附湯

 腹部を温めて、冷えによる月経閉止、下腹部痛、腰痛などを改善。

A発汗・解熱作用

 体を温める作用は強いが発汗作用は弱い。

       生姜等と併用          EX、桂枝湯

 桂皮に麻黄を配合すると発汗効果は増強され、芍薬の配合で発汗効果は抑制される。

                    EX、葛根湯

B血剤とともに用いて、血行をよくして駆血作用を助ける。

     桃仁、 牡丹皮等と併用     EX、桂枝茯苓丸

C血行をよくして利尿作用を助ける

 1)小便不利、下肢の浮腫等に腎臓の血流をよくして利尿作用を助ける。
     
      白朮、茯苓等と併用       EX、五苓散

 2)強心利尿作用‥‥桂枝‐甘草に強心利尿作用があり、動悸、気の上衝を抑える。

       甘草 等と併用         EX、苓桂朮甘湯
   心不全に適用。
   ただしショック・虚脱による急性末梢循環不全には禁忌。

D脳循環改善作用

 脳循環血量の低下による
 後頭部の頭痛、首筋のこり、立ちくらみ、耳鳴りなどを改善。

E副作用

 鼻出血、喀血、吐血、痔出血などの出血を助長するので、
 出血しやすい傾向が認められるときや過多月経には注意。

 また頭痛(こめかみ〜前額部)や回転性めまいをひき起こすことがある。

 ※日本漢方では、よく
  桂皮はのぼせを下げる、といいますが、桂皮はのぼせさせる生薬です。
 
  ここの認識を間違えてしまうと
  上記のような副作用を発現させてしまう。

  正確に言うと、桂皮はのぼせを下げるのではなくて
  気の上衝を引き下げるのです。

  気の上衝を、のぼせと勘違いしてしまっているように思います。

  気の上衝というのは、例えば脳貧血などで、
  末梢血管が収縮して、皮膚が蒼白になり脈拍がはやくなる。
  それで心悸が上へ上がってくるような状態です。 それを抑える。

  この点はくれぐれも間違えないでください。
                                    このページのトップへ

決明子

@抗炎症作用

 主としてブドウ膜の炎症に用いる。
                   EX、洗肝明目湯
A緩下作用

 作用が弱いので軽度の便秘に。

Bおだやかな降圧作用。
                                    このページのトップへ

玄参

@寒性。

A潤燥、抗炎症作用

 体内水分量を保持し、脱水症を防止。

 眼や咽頭などの発赤、腫脹、疼痛に適用。
 咽喉部の腫脹、疼痛(咽喉炎、扁桃腺炎)に使用。

B頸部リンパ節腫大に適用。
   
C血管拡張作用

 血栓性動脈炎(壊疽や閉塞性血栓血管炎)に用いる。
 特発性脱疽、バージャー病などに

      当帰、金銀花等と併用      EX、四妙勇案湯
                                    このページのトップへ

膠飴

@緩和・矯味効果。

 ※他の配合生薬と一緒に煎出すると、容器に焦げ付くことがあるので、
   他の生薬を煎出して布ごし後の温液に加えて溶かす。
                         EX、大建中湯、小建中湯
                                    このページのトップへ

紅花

@温性。

A月経異常に(活血通経)
 
 1)血による月経痛、無月経、月経不順に

     当帰、川きゅう、赤芍、地黄、桃仁等と併用  EX、桃紅四物湯

 2)産後の血に用いる‥‥出血して諸症状がよくなる。

     桃仁、当帰、益母草等と併用       EX、きゅう帰調血飲第一加減

B血行をよくして、うっ血や腫脹を除き、痛みを除く(散止痛)
 
 1)狭心症には、冠血流をよくして胸痛を除く
   冠動脈拡張・血栓形成抑制効果
     川きゅう、丹参、赤芍等と併用        EX、冠心U号方

 2)打撲、挫傷、捻挫など血や内出血による痛みを除く。

     当帰、赤芍、桃仁、大黄等と併用     EX、調栄活絡湯
     当帰、蘇木、大黄等と併用        EX、通導散

C血行をよくし、(活血散
 褥瘡の予防、凍傷の予防、潰瘍の難治性のもの等に用いる。
 
 副作用:月経過多、出血傾向の者や妊婦には注意して。
                                    このページのトップへ

香附子

@気分の憂うつな者に
 
 1)精神的ストレスによる
   胃炎、胃潰瘍、月経痛、生理不順、乳房の張りや痛みなどに。

     柴胡、芍薬、枳穀、川きゅう等と併用   EX、柴胡疎肝湯

 2)感情の抑うつや精神的緊張を緩める。気うつ又はうつ状態に。

     紫蘇葉等と併用           EX、香蘇散

A気滞のために起きる胸腹や胸脇から上腹部にかけて張った感じや痛みに。
 そして子宮痙攣、月経痛を治す。
 
     当帰、川きゅう、芍薬、地黄、烏薬、延胡索  EX、きゅう帰調血飲第一加減

B胃の働きをよくする

 悪心、げっぷ、胃部膨満感、消化不良、食欲不振に用いる。
  
     縮砂、木香等と併用         EX、香砂六君子湯

C血管を拡張して血行をよくする

 冠状動脈硬化による狭心症や脳血管障害の後遺症に用いる。

     赤芍、川きゅう、紅花、丹参等と併用   EX、冠心U号方
                                    このページのトップへ

粳米

潤燥効果
   体内水分量を保持し、脱水症を防止。
                          EX、白虎湯
                                    このページのトップへ

厚朴

@温性。

A鎮痙(クラーレ様)作用

 食道、噴門、幽門、小腸、大腸などの局所のれん縮を寛解し、
 蠕動運動を正常にする。

 また大黄に配合すると、瀉下までの時間を短縮する。

     枳実、大黄、等と併用      EX、大承気湯

 咽喉頭部に狭窄感又は閉塞感があるときにも用いる。

     半夏、生姜等と併用       EX、半夏厚朴湯

B健胃・整腸作用

 胃腸機能の異常や消化不良のため、腸管内に内容物やガスが停滞し、
 腹部膨満感、腹痛、しぶるときなどに
 お腹を温めて、腸管の痙攣を抑制して腹痛や裏急後重を治す。
 下痢に伴う腹痛を治す。

     蒼朮、陳皮等と併用       EX、平胃散

C利水作用

 腸管内の水を尿として除いて下痢を止める。

D鎮咳作用

 気管支平滑筋の痙攣を緩め、気管支を拡張して咳を止める。
 気管支炎、気管支喘息等の呼吸困難に

     麻黄、杏仁、陳皮等と併用    EX、神秘湯

E筋弛緩作用

 パーキンソン症候群などに用いる。
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牛膝

@駆血作用

 主として上半身の充血を軽減し、下半身の血液循環をよくする
  のぼせ、頭痛、めまい、鼻出血、吐血、歯痛、
  月経困難症(月経痛、無月経、月経不順)、産後の胸腹痛などに用いる。

                      EX、折衝飲

A抗炎症・利尿作用

 膀胱炎、尿道炎、尿路結石などによる
 血尿や腰痛、排尿痛、排尿困難などに用いる。

B筋肉や骨格を補強するために配合し、
 腰部や膝関節の疼痛・屈伸困難、筋骨の萎縮による歩行困難などに用いる。

 1)老化現象による腰痛。

    杜仲、続断、桑寄生、地黄等と併用      EX、独活寄生湯

 2)風湿による手足の疼痛

    蒼朮、黄柏等と併用             EX、三妙散

 3)打撲、捻挫(血)による腰、手足の疼痛。

    当帰、川きゅう、赤芍、地黄 桃仁、紅花  EX、調栄活絡湯
                                    このページのトップへ

呉茱萸

@熱性
 アドレナリンβ様作用
 (糖・脂質代謝促進の結果、熱産生が増加し身体を温める)に基づく。
 主として腹部及び胸部を温める。

A制吐・利尿作用。

 胃部が冷え、胃内に貯留水があって唾液などを吐く寒証の嘔吐に用いる。
 また寒証のしゃっくりにも有効。

        人参、生姜、大棗等と併用      EX、呉茱萸湯
 お腹を温めて幽門の痙攣を除き、蠕動を整えて悪心、嘔吐を止める。

B鎮痛作用

 胃部が冷えて、空えずき・よだれなどを伴う発作性偏頭痛、

 寒冷刺激で四肢の冷えを伴った腹痛、脇痛、月経痛などに用いる。
         当帰、桂枝、細辛等と併用   EX、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
 しもやけにも用いる。

※呉茱萸は
 制吐の半夏、温中散寒の乾姜、利水の茯苓、降気の枳実を兼ねた作用がある。

 ただし胃に充血性炎症が認められるときには黄連を併用。
 黄連の副作用を防止するために配合するときには、黄連の1/5量でも有効。

                                    このページのトップへ

牛蒡子

@抗炎症解熱作用

 風熱感冒で発熱のある者に用いる。

    金銀花、連翹、荊芥、薄荷等と併用  EX、銀翹散

A抗化膿性炎症・排膿作用

 咽頭に発赤、腫脹、疼痛を伴う咽頭炎、扁桃炎、上気道炎などにに用いる。

    荊芥、防風、連翹等と併用      EX、駆風解毒湯
    薄荷、桔梗、甘草等と併用      EX、柴胡清肝湯

B鎮痒作用

 湿疹、蕁麻疹の掻痒に対して用いる。

    防風、蝉退、荊芥等と併用      EX、消風散

                                    このページのトップへ

五味子

@温性。

A鎮咳・去痰作用

 寒証で多量の泡沫状痰を伴う咳嗽に用いる。

      半夏、乾姜、細辛等と併用    EX、小青竜湯

B収斂作用

 発汗過多、寝汗、慢性下痢、遺精などに用いる。

 ○止汗作用

  体が虚して多汗(自汗、盗汗)のものに用いる。

 ○脱水を防いで口渇を止める(生津止渇)
 
  発汗過多等で、脱水して口渇のあるときに用いる(脱水のショック状態)

      人参、麦門冬等と併用       EX、生脈散

 ○腎虚によ遺尿、多尿を治す

      竜骨、牡蛎、附子

 ○滲出性中耳炎‥‥滲出液の分泌を抑制する。

      茯苓、桂枝、甘草等と併用     EX、苓桂味甘湯

                                    このページのトップへ

柴胡

@消炎解熱作用

 感冒やインフルエンザの悪寒、発熱、往来寒熱(悪寒と発熱が交替で現れる)
 弛張熱(38℃以上の発熱が日差1℃以上で上下し、平熱まで降下しない)に。

    高熱症状には、必要十分量を用い黄ごん、などと併用。
                             EX、小柴胡湯
                    
A鎮静、鎮痛作用(疎肝止痛)  視床下部〜脳下垂体上部に働いて鎮静

 精神的ストレスによって緊張感、焦燥感又は不安感をもつ状態となり、
 自立神経系や内分泌系を通して身体に影響を及ぼし、
 食道・噴門部のれん縮によるのどがつかえた感じ、胸苦しさ、
 胸腹部の痛み・張る感じ・苦悶、
 心窩部膨満感、悪心、嘔吐、食欲不振などの症状が認められるときに適用。

 脇痛(胸脇苦満)を除き、月経調整作用がある。
 イライラ、不安、緊張など精神的ストレスを除く。

B筋緊張増強作用(升提作用)

 黄耆、升麻と配合して、
 平滑筋又は骨格筋の緊張が減弱(弛緩)した状態に適用。

 胃下垂、脱肛、子宮脱を治す

    升麻、黄耆、人参 等と併用          EX、補中益気湯
                                    このページのトップへ

細辛

@温性  アドレナリンβ様作用
 (糖・脂質代謝促進の結果、熱産生が増加し身体を温める)に基づく。

 手足の冷えを温め、冷え性を治す。

    当帰、桂枝等と併用         EX、当帰四逆湯

A鎮痛作用

 精油には局所麻酔作用があり、寒冷刺激による比較的表在性の痛みを治す。
 例えば頭痛、舌痛、神経痛、歯痛、咽頭痛、関節痛などに。

 また寒冷と湿気による筋肉の疼痛、痙れん、麻痺にも適用。

B鎮咳・去痰作用

 肺が冷えて痰が多く(大量の希薄な痰)、咳が出るものを治す。

 細辛は温める作用と利水作用があり、寒湿痰を治す。

    乾姜、五味子等と併用        EX、小青竜湯

 くしゃみ、水様性鼻漏、多量の泡沫状痰を伴う寒証の咳嗽に適用。

 空咳や炎症性で粘稠な痰を少量喀出するときは、
 熱証の咳嗽であるから注意。

C弱い発汗解熱作用。

 1)風寒による比較的表在性の寒を温める(抗アレルギー作用)。

   くしゃみ、鼻水、咽痛等で始まるカゼ(上気道炎:寒証型)
   や アレルギー性鼻炎に用いる。

 2)陽虚の体質の外感病(少陰病)に用いる(発汗解表作用)。

    麻黄、附子等と併用          EX、麻黄附子細辛湯
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山帰来

○抗化膿、抗炎症作用
  膿尿または悪臭を伴う帯下などが認められるとき、
  あるいは膿皮症に用いる。
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山査子

@消化促進作用

 肉類による消化不良に用いる。

A高血圧症、冠不全、中心性漿液性脈絡網膜症などに用いる。
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山梔子

@寒性。

A消炎(解熱)作用

 炎症性充血を抑える。
 眼の炎症、肝炎、食道炎、胃炎、腸炎等に用いる。

 湿疹・皮膚炎などの皮膚の充血・熱感などに。

B利胆作用

 肝炎、胆のう炎、肝膿瘍等による湿熱の黄疸を治す。

     茵ちん蒿、黄柏 等と併用        EX、茵ちん蒿湯

C消炎利尿作用

 小便不利し、血淋、渋痛する者に用いる。
 腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、血尿に用いる。

     木通、車前子、滑石 等と併用     EX、五淋散

D止血作用

 血管を収縮して止血
 熱証の結膜充血、鼻出血、喀血、吐血、血尿、性器出血などに用いる。

     黄連、黄ごん 等と併用         EX、黄連解毒湯

E鎮静作用

 怒りや興奮、心煩、不安を鎮める(心胸部の煩熱を除く)。
 不眠症にも適用。
    
                                    このページのトップへ

三七

三七、または参三七・田三七・田七とも呼ばれる。

@温性。

A駆血作用、止血作用(化止血)

  打撲、捻挫による内出血や外傷による出血で?血による腫脹、疼痛に用いる。

  脳出血、喀血、吐血、下血、性器出血など、あらゆる部位の出血に用いる。

    EX、眼底出血、脳出血、性器出血など

B消炎鎮痛作用(化止痛)

 血による腫脹、疼痛に対して消炎鎮痛作用により消脹止痛する。

    EX、関節炎、癌、潰瘍などに用いる。

C慢性肝炎、高脂質血症などに適用。

D品質にかなりのバラツキがあり、
  特に止血効果が認められないものがあるので要注意。
                                    このページのトップへ

山茱萸

@滋養作用

  骨、筋肉、組織などの老化現象に用いる。

A収斂作用

  自然発汗、発汗過多、寝汗や遺尿、多尿、夜尿などに用いる。

                     EX、六味丸、八味丸
                                    このページのトップへ

山椒

@熱性

  主として腹部を温め、寒証の平滑筋のれん縮を緩和するので、
  寒冷刺激による腹痛、嘔吐などに用いる。

                      EX、大建中湯

  一方熱証の平滑筋のれん縮には芍薬を用いる。

A局所麻酔効果。
                                    このページのトップへ

山豆根

@寒性。

A抗化膿性炎症作用
 咽喉の炎症に用いる。

B悪性腫瘍(特に肺癌)に用いることがある。

C胃障害をひき起こしやすいので
 用量に注意(1日量2g程度)。
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酸棗仁

@不眠に用いる(養心安神)

 顕著な効果は認められないが、ストレスにより食欲もなくなり、
 食べても十分消化されず、体力低下し驚きやすく、動悸、不眠などのときに。

 1)熱症の不眠に用いる

    茯苓、川キュウなどと併用        EX、酸棗仁湯

 2)健忘、不安、不眠に用いる

    四君子湯加当帰、竜眼肉、遠志    EX、帰脾湯

A止汗作用(益陰止汗)

 虚弱者の多汗、自然発汗、寝汗に用いる

    五味子、芍薬、人参などと併用
                                    このページのトップへ

山薬

@健胃・整腸効果

  消化機能を促進し、下痢を止め、体を元気にする。

  胃腸が弱く、食欲も少なくて、食べ過ぎるとすぐ下痢をする者に用いる。

  慢性の下痢があり、体がだるくて元気がないときに、

    人参、茯苓、白朮、白扁豆、?苡仁などと併用     EX、参苓白朮散

A咳嗽や呼吸困難に用いる(潤肺止咳)

  少し動くと息が切れて苦しく、咳嗽や汗が出るものに用いる。

B口渇を治す(生津止瀉)

  口渇が甚だしく、いくら水を飲んでも渇きが止まらないときに適用。
  発汗や虚熱により脱水して口渇するものを治す。

     葛根、天花粉、五味子などと併用

C遺精、頻尿に用いる(益腎固精)

   熟地黄、山茱萸などと併用           EX、六味地黄丸
                                   このページのトップへ

三稜

莪朮は三稜と作用が類似しており、両者はよく併用される。

@温性。

A月経異常(月経痛、無月経、月経不順)、

  1)月経異常(月経痛、無月経、月経不順)に用いる。
    月経痛があり、無月経で下腹部に腫瘤を触れるようなものに用いる。
  2)月経痛、胸腹部痛、脇下腹部痛等に使用する(行気止痛)
    気滞血によるものに用いる。

B腹部腫瘤に使用する(破通経)

  腹部腫瘤(肝硬変による肝脾腫大、ガン等)に用いる。
  抗腫瘍作用があるといわれる。
  消化器系及び生殖器系の悪性腫瘍に三稜とともに配合。

C健胃作用(消食化積)

  不消化物の胃腸内残留に用いる。
        反対に胃障害をひき起こすことがあるので用量に注意。
                                   このページのトップへ

紫根
@寒性。消炎解熱作用

A出血性炎症を治す(活血透疹)
  火傷など血熱によるもの、その他血熱による発疹(麻疹、皮膚炎)に用いる。

  抗炎症・肉芽増殖促進効果
    軟膏として局所適用すると創傷治癒を促進。
      外用として  →当帰 などと併用      EX、紫雲膏

B抗化膿性炎症に

C悪性腫瘍(絨毛癌など)に使用することもある
                                   このページのトップへ

紫蘇葉

@発汗解熱作用(散寒解表)
  体を温め、発汗作用がある。 麻黄−桂枝のように強くない。
  紫蘇葉単独では効きが悪いので、
  生姜、防風、荊芥などの辛温解表薬を併用して、体を温めて発汗を促す。

    生姜、陳皮などと併用       EX、香蘇散

A健胃作用(健胃止嘔、行気寛中)
  胃が弱くて食欲のない者がカゼを引いたとき、葛根、麻黄などは胃を障害する。
  紫蘇葉は食欲を増進し、上腹部を楽にしてムカムカを止める。

    半夏、生姜などと併用       EX、半夏厚朴湯

B鎮咳去痰、利水作用(去痰止咳)
  肺や気道の浮腫を除き、鎮咳去痰の作用がある(紫蘇子の方が効果が強い)。

C魚介類の中毒を治す
  魚介類の中毒で、吐瀉、腹痛、蕁麻疹に生姜を配合して30g位水煎する。
                                   このページのトップへ

シツリシ

@鎮痛・鎮痒作用
 湿疹・蕁麻疹の掻痒に適用。

A結膜炎、角膜炎などで充血と流涙が認められるときに。
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芍薬

@鎮痙・鎮痛効果

 筋肉の痙攣を止める。主として平滑筋だが、骨格筋の痙攣にも有効。

 消化管、胆道、子宮、尿管、膀胱など
 中空臓器の痙攣性疼痛や痙攣性便秘に甘草を併用。

    甘草と併用             EX、芍薬甘草湯

 月経痛、妊娠時の腹痛に用いる。

    当帰、白朮などと併用          EX、当帰芍薬散

 冷えによる腹痛には桂皮、乾薑、当帰、炮附子、などと配合。


A収斂効果

 止汗作用  発熱性疾患の発汗過多を抑える目的で配合する。

    桂枝などと併用             EX、桂枝湯

 止血作用  血管を収縮して止血する。

    地黄、阿膠、艾葉などと併用       EX、キュウ帰膠艾湯

 血管収縮などによる止血作用で鼻出血、喀血、下血、性器出血などに適用。

 また桂皮、川キュウ、当帰などの服用による
 血管拡張、出血、頭痛、のぼせ、動揺感、回転性めまいに用いる。

胃液分泌を抑制するので胃酸過多症に適用。

B鎮静効果 向精神病薬として

 自律神経の興奮に対して用いる。
 気分がイライラしてよく腹を立て、気を使って起きる脇痛、腹痛を治す。

    柴胡、枳実などと併用          EX、四逆散 

 動揺感を伴っためまい、あるいは精神的緊張によるめまいに適用。
ただし立ちくらみには不適。

C月経調節効果

 月経不順、不正性器出血を治す(養血調経)

 白芍は補血、鎮痛の作用があり、
 血虚による月経不順、不正性器出血に月経痛、下腹部痛等を伴うものを治す。

    当帰、地黄、川キュウなどと併用       EX、四物湯

Dうっ血除去効果

 打撲によるうっ血、皮下溢血、硬結、疼痛、感覚消失などに適用。
                                   このページのトップへ

車前子

@寒性。

A消炎利尿作用。

 急性尿道炎や膀胱炎などで排尿困難、排尿痛、頻尿等あるものに用いる。

    茯苓、沢瀉、木通、滑石などと併用     EX、五淋散

 うっ血性心不全で水腫を呈するもの

    牛膝、地黄、山茱萸などと併用       EX、牛車腎気丸

 角結膜炎による目の充血、眼痛などの眼疾患を治す(消炎利水作用による)

    黄ごん、決明子、菊花などと併用       EX、洗肝明目湯

 尿不利で下痢するものにも

B鎮咳・去痰作用もある

  粘稠な痰又は膿性痰を喀出する咳嗽に。
                                   このページのトップへ

縮砂

@温性。

A鎮痙効果

 ○食道や胃の過度の緊張を寛解し、食道及び胃の運動をスムーズにする。

   お腹を温めて嘔吐を止める(温胃止嘔)

     香附子、かっ香 などと併用         EX、香砂平胃散

 ○胃部のつかえや心窩部の膨満感などがあるときに適用。

   消化管の運動をスムーズにして痛みを止める(行気止痛)
   消化不良に対して木香を配合して腸蠕動を亢め、
   消化吸収を促進し、ガス停滞による腹痛を止める。

     木香、人参、白朮 などと併用       EX、香砂六君子湯

 ○また腹部を温め、木香と配合すると、下痢などによる腹痛を緩和する。

   お腹を温めて下痢を止める(温脾止瀉)
   寒がる、四肢が冷たい、腹が張る、水様性下痢といった脾陽虚の下痢に対して

     蒼朮、かっ香、厚朴 などと併用        EX、香砂平胃散

B制吐効果

   つわりに用いる。 口中で噛むと悪心が消失する。
                                   このページのトップへ

熟地黄

@潤燥効果

  体内を潤して体内の水分を保ち、脱水を防ぎ、口渇を除く
  胸中・手のひら・足裏のほてり、午後の微熱、寝汗などの症状に。

  また腸管内水分量を保持し、糞便を軟らかくし緩下効果もある。腸燥便秘に用いる

    当帰、桃仁、杏仁、麻子仁などと併用   EX、潤腸湯

A栄養障害改善

  長患いや、老化現象で痩せた筋肉を太らせ、骨を丈夫にし、
  足腰を補強し、視力減退や皮膚の萎縮などを改善。

  また神経の反射機能をよくし、膀胱の機能を良くする。

    山茱萸、山薬などと併用         EX、六味丸

B強心作用

  地黄には弱い強心作用があり、吸気性呼吸困難、肺水腫、うっ血性心不全に用いる。

    沢瀉、茯苓、桂枝、附子などと併用    EX、八味丸

C自立神経系・内分泌系機能の調整

  下垂体―卵巣系のホルモンの失調による月経不順や不正性器出血を治す。

    当帰、川キュウ、白芍などと併用       EX、四物湯

  月経異常、糖尿病、バセドウ病などにも用いる。

D胃障害をひき起こすことがあるが、これを防止するためには黄柏や呉茱萸を併用。
                                   このページのトップへ

小茴香

@温性 お腹を温めて腹痛を治す
  寒冷の飲食物で胃を冷やしたり、寒疝により起こる腹痛を治す
  (空腹時痛が多い、冷えによる腹痛、生理痛にも有効である)

    桂枝、良姜、延胡索、縮砂などと併用    EX、安中散

A健胃作用 
  消化不良を治す
  冷えによる腹部膨満感を消化管内ガス排除によって改善。

    生姜、厚朴などと併用

B鎮痙作用、鎮痛作用
  冷えによる消化管のれん縮性疼痛を軽減
  寒冷にさらされて腰痛又は坐骨神経痛が発症したときに適用。

C白帯下に用いる
  四肢外表の冷えによる寒湿白帯下に用いる。
                                   このページのトップへ

小麦

@鎮静・緩和効果

  甘草、大棗、と配合してヒステリー状態の神経症に。
                  EX、甘麦大棗湯
A制汗効果

  自然発汗、寝汗に適用。
                                   このページのトップへ

升麻

@抗化膿性炎症効果
 口内炎、扁桃炎、咽頭炎など身体上部の化膿性炎症に適用。
    歯痛       EX、立効散 加味清胃散
    副鼻腔炎     EX、辛夷清肺湯
    咽喉痛 
 
A弱い発汗・解熱効果。
 解毒、透疹に用いる。麻疹の初期で発疹が遅いときに。
   葛根などと配合       EX、升麻葛根湯

B鎮痛効果
 頭面部の疼痛で風熱の症状があるときに用いる。

C筋緊張増強効果
 内臓下垂症、脱肛・子宮脱のような臓器ヘルニアなどに
   黄耆、柴胡などと配合。     EX、補中益気湯
                                   このページのトップへ

蜀椒

@熱性
 主に腹部を温め、寒証の腸管の痙攣性疼痛に平滑筋のれん縮を緩和して鎮痛する。
 寒冷刺激による腹痛、嘔吐などに。お腹を温めて腸蠕動の亢進を抑制し腹痛を止める。

     →乾姜、人参、膠飴       EX、大建中湯

 蜀椒は胃粘膜に対する刺激性が強く
 胃液の分泌を亢進させるため、膠飴を入れて緩和する。

 一方熱証の平滑筋のれん縮には芍薬を用いる。

A局所麻酔効果
                                   このページのトップへ

辛夷

@温性。

A鼻閉塞寛解効果
  副鼻腔炎、慢性鼻炎による頭痛、鼻づまり、膿性鼻汁等に効果
  鼻粘膜の浮腫を軽減する。
              EX、葛根湯加辛夷川きゅう
B鎮痛効果
  頭痛に川きゅう、白し、などと配合して適用。
                                   このページのトップへ

地骨皮

@消炎解熱作用
  陰虚の血熱、骨蒸潮熱、盗汗、自汗に用いる。
  結核の末期のように自汗、盗汗のある陰虚の熱に用い、
  発汗を抑えて脱水を防ぐ。

A呼吸器系の炎症に用いる
  気管支炎、肺炎、結核で発熱や咳嗽があり、
  痰が少し粘稠膿性で脱水傾向のある者に用いる。

B体を潤し、脱水を防ぐ
                                  このページのトップへ
 

地竜

@鎮静、鎮痙、解熱作用
  高熱時の痙攣、や四肢の痙攣、脳血管障害による痙攣性麻痺等に用いる。

A気管支拡張作用があり、呼吸困難を治す
  痙攣性咳嗽や気管支喘息に用いる。

B降圧作用

C慢性関節リウマチに用いる
  溶血作用があり、関節や血管内外の凝血塊や血腫を溶解して除く。
                                  このページのトップへ

石膏

@強い寒性。

A消炎解熱作用
  発熱性の感染症で高熱、汗出、口渇、等を呈する者に。
     知母などと併用           EX、白虎湯

B麻黄と配合すると、抗炎症効果とともに利水効果が発現。

  肺熱による咳嗽、呼吸困難、口渇、高熱、気道の炎症に
  充血、腫脹、浮腫を消退させる   例えば越婢加朮湯、麻杏甘石湯など。

    麻黄−石膏は滲出性炎症による浮腫を治す。
       麻黄、杏仁などと併用        EX、麻杏甘石湯

C化膿性炎症を治す

  炎症を抑制して膿を希薄にする。中耳炎、蓄膿症等で膿汁の濃いときに用いる。
     桔梗と併用、    EX、桔梗石膏
          連翹、金銀花等と併用することもある
D胃熱の口渇を治す
  胃熱による歯周炎、歯根炎、口内炎を治す。
    黄連、生地黄、牡丹皮などと併用   EX、清胃散

※ 熱証に適用し、内臓の寒証には用いてはならない。
  少量では無効なので、
  ふつう1日量20〜30g、悪寒がなくて高熱の場合は1日量50〜100g使用。
                                  このページのトップへ

川キュウ

@温性。

A血流量増加・鎮痛効果
 主として上半身に作用するが、特に脳循環を増加させるので、
 血管性頭痛や感染症に伴う頭痛に用いる。
 また寒冷刺激による血液循環減少に起因する
 しびれ、筋拘縮、筋痛、運動麻痺などに用いる。

 1)脳や頭部の血流をよくし、頭痛を止める。

      細辛、キョウ活、防風、白シなどと併用      EX、川キュウ茶調散

 2)四肢の血行をよくし、血行障害による四肢のしびれ、麻痺、疼痛に用いる。

      防風、防已、威霊仙、キョウ活、蒼朮などと併用  EX、疎経活血湯

B冠血管拡張・血栓形成抑制効果
       狭心症や冠不全に適用。

      丹参、赤芍などと併用            EX、冠心U号方

C鎮静・鎮痛効果
 精神的ストレスによる胸脇部の膨満感、疼痛に適用。

D月経異常又は微弱陣痛に用いる。
 無月経、稀発月経に用いる(月経過多や出血の多いものには注意する)

E排膿効果
 膿の形成と軟化を促進。
                                  このページのトップへ

川骨

@寒性。

A駆お血効果。
 出血を止め、血管外に漏出した血液を吸収し、
 血液循環を回復して挫傷した組織を修復するなどの効果が期待される。
                     EX、治打撲一方
 また分娩前後の止血の目的で適用。

B利水効果。
 茯苓、白朮、猪苓、木通などと配合して適用。
                                  このページのトップへ

赤芍
@婦人の閉経を通じる作用(活血調経)
             EX、桂枝茯苓丸  キュウ帰調血飲第一加減

A打撲によるオ血(しこり)の痛みを止める(去オ止痛)
 1)オ血やうっ血、血行障害のため知覚麻痺(しびれ)疼痛等のあるものを治す。
   内出血を吸収する。
             EX、調栄活絡湯、 桃紅四物湯
 2)冠不全の狭心痛
             EX、冠心U号方

B血熱による衂血、吐血、子宮出血等を止める(涼血止血)
             EX、犀角地黄湯
                                  このページのトップへ

青皮

@温性。

A健胃効果。

B鎮痙効果。

C鎮静効果
 精神的ストレスを寛解。
                                  このページのトップへ

蒼朮

@温性。

A止痢効果

 急性の水様便性下痢又は消化不良症に適用。
 白朮は胃腸機能が悪く、食欲がない人の下痢に用いる。
 消化管の水分を小便にとり下痢を止める

 脾胃寒湿、食欲不振、腹脹下痢等ある者に
          厚朴、陳皮などと併用  ex.平胃散

B利水効果。

 四肢、躯幹の筋肉、関節の水分を除いて痛みを止める
 悪寒、水症を伴った遊走性の筋肉痛に適用。

 白朮よりも強いが、消化機能を増強する効果はない。関節水腫などに適用。
 風湿、寒湿によって引き起こされた関節や身体の疼痛を治す。

 あるいは、清熱薬を併せて湿熱により引き起こされた腰膝腫痛、麻痺痿弱等に用いる。
          黄柏、牛膝などと併用  ex.三妙散

C外感風寒で悪寒、頭痛、無汗に用いる。
                                  このページのトップへ

桑白皮

@寒性

A消炎、利水、鎮咳作用
 気道の炎症性の咳嗽、呼吸困難に用いて、
 消炎、利尿作用により、気道の炎症と浮腫を除き、鎮咳する。

 1)気管支炎の炎症に伴う濃痰が多量に出るとき

     黄苓、貝母、桔梗、杏仁などを併用   ex.清肺湯

 2)大葉性肺炎

     麻黄、杏仁、石膏、甘草などを併用   ex.五虎湯

B利水利尿作用
 顔面、眼瞼、四肢などの熱証の浮腫に。
 腎炎、ネフローゼ、心不全の浮腫、アレルギー性の急所性の浮腫などに

     茯苓、大服皮などを併用       ex.五皮湯

 また肺水腫で労作時呼吸困難あるいは
 起坐呼吸があり、呼吸時ゼーゼー又はゴロゴロという音がするとき、
 蘇子、又は蘇葉と併用。
 
                                  このページのトップへ

蘇子

@温性。

A鎮咳・去痰、利水作用

 気道粘膜の浮腫を除き、痰の量を減少させて、
 呼吸困難、喘鳴(呼吸時ゴロゴロ音)を伴った吸気性呼吸困難があるときや
 気管支平滑筋の痙攣による咳嗽を鎮静させる。

      半夏、前胡、厚朴、陳皮     ex.蘇子降気湯

B制吐作用。
                                  このページのトップへ

蘇葉

@解熱効果。

A上咽頭神経反射作用。
             ex.半夏厚朴湯  
B鎮静作用。
             ex.香蘇散
C胃粘膜保護作用  
                                 このページのトップへ

蘇木

@駆お血効果。内出血、月経異常に用いる
 
 桃仁、牡丹皮を用いる場合より、お血の症状が強いとき用いる。

     大黄、紅花、などと併用   ex.通導散

A打撲、捻挫による内出血、皮下溢血の腫脹、疼痛に用いる

 打撲、捻挫の重症のときに用いる。
 打撲による内出血を除き、痛みを止める。     

B止血作用
 お血による出血に用いる。断続的、持続的で一般の止血薬が効かない時に。

     ex.痔出血、食道静瘤からの出血など静脈の出血、産後の出血など。

B妊婦には禁忌。
                                 このページのトップへ

蝉退

@抗炎症解熱作用

 風熱感冒に用いる。

A止痒作用

 湿疹、蕁麻疹に用いる。
      防風、荊芥、牛蒡子などと併用  ex.消風散

B鎮痙、鎮痛作用

 抗痙攣作用があるが弱い。
                                 このページのトップへ

大黄

@寒性。

A瀉下作用
 大黄の瀉下作用は、大腸を刺激して蠕動を亢めて排便させる。
 したがって、小腸性下痢と違って栄養の消化吸収を障害しない。 
1)慢性便秘
   +甘草、芒硝など ex.桃核承気湯

2)老人の腸燥便秘
   +当帰、地黄、桃仁、麻子仁、枳殻など ex.潤腸湯、麻子仁丸

3)熱性疾患の便秘
   +枳実、厚朴  麻痺する腸管を刺激して蠕動を亢め、小腸の通過時間を短縮する。 
           ex.大承気湯

B消炎作用、抗化膿性炎症
 発熱性の炎症性疾患に適用。
 また抗菌作用があるので化膿性炎症にも有効。

C止血効果
 充血を抑制し、毛細血管の透過性を抑える作用があるので、
 頭部、顔面など体上部の充血によるめまい。出血
(脳出血、結膜充血、眼底出血、発狂、鼻出血、歯肉出血など)に適用。

D血液循環障害改善効果
 打撲による皮下溢血、血腫などに適用。
 骨盤内充血を除去するので月経困難症、無月経などにも適用。

  お血を去り月経を通じる(逐お通経)
  お血による無月経、打撲損傷に用いて、腹中の血行をよくし骨盤内に充血を起こす。
     +桃仁、紅花、蘇木など ex.桃核承気湯、通導散

E利胆効果
 急性肝炎、胆石症などによる発熱を伴った黄疸に適用。

F長時間煎出すると瀉下効果が低下する
                                 このページのトップへ

大棗

@温性。

A健胃
 胃腸の働きをよくする
 胃腸虚弱で下痢しやすい者に用いる。

B鎮静効果
 甘草、小麦と配合してヒステリーに用いる。 ex.甘麦大棗湯
 
C緩和効果
 甘草の効果に類似。
 半夏の副作用(強烈な舌のしびれ感、咽喉の刺激感など)を軽減する。
 生姜も同じく半夏の強烈な舌のしびれ感、咽喉の刺激感などを軽減する。

D潤燥効果
 体内水分量を保持し、脱水症を防止。
                                 このページのトップへ

大腹皮

泌尿器系と消化器系とを通して、体内の貯留水の排出を促進。

@消化管の痙攣を止め、蠕動を正常化して停滞した内容物を排出する作用と、
  消化管の余分な水を利尿して下痢を止める。

      +カッ香、厚朴、陳皮、白朮、茯苓などと併用  ex.カッ香正気散

A利尿作用(利水消腫) 小便不利や脚気腫満、腹水等に用いる。

   肝硬変のような静脈系のうっ血を伴う腹水には
   利水の薬の他に活血化オの薬物を配合する。

      +紅花、牡丹皮、当帰などと併用        ex.分消湯血鼓加減
                                 このページのトップへ

沢瀉

@寒性。

A消炎利尿作用。

  熱証による口渇を寛解し、浮腫には顕著な利水効果が認められる。
  消化管の水を尿として排出し下痢を止める。水腫を治す。
         +猪苓、白朮などと併用  ex.五苓散

  また頭に帽子などをかぶったような感じがしてめまいするときに用いる。
         +白朮などと併用     ex.沢瀉湯

B肝脂肪減少効果

  脂肪肝に適用。
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丹参

@冠動脈拡張・血栓形成抑制
  血行をよくし、オ血による痛みを止める。

 1)狭心症に使用する。
   抗凝血作用、冠動脈の拡張作用、冠血流量を増加させる。
    +川キュウ、紅花、赤芍など   ex.冠心U号方

Aオ血による月経障害、月経痛、産後の障害を除く。

B神経症の不眠、頭痛等に用いて鎮静作用がある
    +拍子仁、酸棗仁、遠志、茯神など ex.天王補心丹

C丹参一味で四物湯と同じ作用がある
                                 このページのトップへ

知母

@寒性。

A消炎作用 (清熱化湿) 陽明病、気分証等の高熱、煩渇に用いる。

          石膏などと併用。ex.白虎湯

 湿熱の皮疹に用いる  抗炎症作用として働く。

          苦参、石膏、地黄などと併用。 ex.消風散

B解熱作用(滋陰退熱)

 手足のほてり、盗汗、腰下肢がだるく痛むなど、陰虚火旺の症状を治す。
          黄柏などと併用。 ex.知柏地黄丸

 口渇を治す、脱水を防ぐ(生津止渇)
   熱病による多汗などで脱水して口渇するのを防ぐ作用がある。

 午後になると微熱を示すときに適用。

 肺熱の咳嗽、呼吸困難を治す(潤肺止咳)

C鎮静作用

 神経症、遺精などに適用。

D副作用

 軟便又は下痢便になることがある。
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地楡

@止血作用(涼血止血)
 一般に下半身の出血(消化管潰瘍による下血、痔出血、血尿、不正性器出血など)
 に適用するが、鼻出血、喀血などにも有効。

  熱証の出血、特に血便に用いる。

    ex.痔出血に用いる(消炎止血作用)

          +当帰、防風、黄ゴンなど ex.槐角丸

A収斂作用

 消化管に対し止血・止痢的に作用。熱証にも適用。
                                 このページのトップへ

丁香

@温性

 胃部を温める。

A血液循環促進作用

 脳動脈硬化症、脳梗塞あるいは老年痴呆などで
 著しい健忘症状や情動の異常が認められるとき、
 補中益気湯に木香と共に加味して適用すると脳の血液循環を改善する。

B制吐効果

 寒証の嘔吐、腹痛などに適用。

C鎮痙作用

 消化不良症、急性胃腸炎等で冷えて腹痛するものを治す。
 寒証の嘔吐、吃逆(しゃっくり)、吐乳等を治す。

      +柿蒂、人参、生姜など  ex.丁香柿蒂湯
                                 このページのトップへ

釣藤鈎

@降圧作用 鎮静作用

  高血圧に伴う、頭痛、めまい、ふらつき等を治す。

   +菊花、防風、石膏、半夏、陳皮、茯苓など ex.釣藤散

A鎮静、鎮痙(抗痙攣)作用

  高熱時の痙攣(熱性痙攣)、憤怒痙攣、てんかん、チック症等に使用する。
  鎮静作用により不眠症(イライラして寝付きが悪い者)にも使用される。

   +柴胡、茯苓、半夏、陳皮など ex.抑肝散加陳皮半夏

 ※長時間煎出すると効果が低下するので、他の配合生薬の煎出終了5分前ぐらいに
  煎出液に加えて短時間煎出することが望ましい。
                                 このページのトップへ

猪苓

@利水作用

  胃腸管の水や組織の水腫を尿として排出することにより、下痢を止め水腫を治す。

     +沢瀉、白朮、茯苓など ex.五苓散

A消炎利尿作用

  腎臓結石、尿路結石、膀胱炎等で利尿を必要とするときに用いる。
  湿熱によらず燥熱によらず熱や炎症のある場合尿は少なく濃くなる。
  このとき、尿量を増加させて尿の浸透圧を低下させてやる目的で猪苓を用いる。

     +茯苓、沢瀉、滑石など ex.猪苓湯

   ※ 吐瀉が激しいときには体内の水が消化管に移動して脱水状態となり、
     口渇のためしきりに水を飲むが、吸収されないで嘔吐や下痢する。

  利尿効果は沢瀉、木通に優り、浮腫又は水症に対しては顕著。
                                 このページのトップへ

陳皮

@温性。

A消化管機能障害改善作用

 胃腸の緊張を除き運動をスムーズにし
 胸のつかえ、心窩部圧迫感、腹部膨満感、悪心、げっぷ、放屁
 などの消化不良の症状に枳実、厚朴、木香などと併用。

 血色が悪く、気力や食欲がなくて疲れやすい傾向があるときには、
 黄耆、人参、白朮などと配合。

 また他薬による胃障害の副作用防止のために、しばしば処方で配合される。

     下痢、腹痛を伴う消化不良に
              +蒼朮、厚朴など ex.平胃散

B抗カタル効果  (カタルは粘膜の滲出性炎症)

 胃カタル又は気管支カタルに伴う多量の粘液を除去して、
 悪心、嘔吐を抑制したり、多量の粘稠な白痰の喀出を減少させる。

 半夏、茯苓、生姜と配合して用いる
                     ex.二陳湯、参蘇飲

    半夏が粘液を溶解し、茯苓がこの溶解した粘液を吸収する。

    半夏の鎮咳去痰作用を茯苓、陳皮、生姜が補う。

C弱い発汗効果

 軽症のかぜに適用。
   ※作用は概して緩和であるので、処方の主薬となることはない。
                                 このページのトップへ

冬瓜子

@寒性。

A利尿効果

  尿量減少、浮腫、腹水などに適用。

B抗炎症・排膿効果

  内臓の化膿症に適用。

C弱い去痰効果

  肺又は気道の炎症に適用するが、カロニンの効果に劣る。
                                 このページのトップへ

当帰

@温性。月経異常に用いる

  血虚補充効果。血流をよくして子宮の発育を促す。子宮筋の痙攣や収縮を弛緩させる。

  ex.生理不順、月経痛、閉経等を治す。

          +川キュウ、白芍、地黄など ex.四物湯
A血流量増加効果

 主として下半身及び四肢末梢に作用し血行をよくし、腹部や四肢を温め、疼痛を軽減する。

 例えば子宮あるいは小動脈のれん縮を緩和するので
 閉塞性血栓血管炎、糖尿病性壊疽などの疼痛に適用。

 打撲等により内出血、腫張、疼痛があるとき、
 また、うっ血や内出血があり、胸腹部が膨満して便秘するときに大黄と併用。

 他の活血化オの薬物を配合してオ血を除く。

         +紅花、蘇木、大黄など ex.通導散

B浸透性緩下効果

  当帰は油を多く含むため、腸管内に水分を溜めて大便を軟らかくする。

         +桃仁、杏仁、麻子仁、大黄など ex.潤腸湯

C排膿・肉芽増殖促進効果。  化膿性炎症、潰瘍の治療に用いる

  炎症による血流のウッ滞を除き、排膿を助ける。

         +黄耆、人参、肉桂など ex.千金内托散
                                 このページのトップへ

桃仁

@駆オ血効果。月経困難症、無月経、月経閉止などに適用。

  なんらかの原因によって月経が閉止し、また過少月経となり、そのため生理痛
  (腹痛、腰痛)、自律神経異常のような症状、頭痛、顔面がのぼせて赤柴色となり、
  足腰は冷え、冷えのぼせになったり、不眠やイライラなど更年期障害の症状、
  血の道症といわれるような症状を呈するときに用い、下血させると症状が消失する。

         +当帰、川キュウ、赤芍、地黄、紅花など ex.桃紅四物湯

 また打撲直後の皮下溢血・漿液の漏出または外傷による内出血に用いると、
 漏出した血液を吸収して痛みを緩和する。

         +当帰、赤芍、紅花、大黄など ex.調栄活絡湯

A粘滑性緩下効果。 脂肪油で糞便を軟化し、排出を促進。

  老人の便秘のように水分が少なく、大便が乾燥して便秘するとき。

         +当帰、地黄、麻子仁、大黄など ex.潤腸湯

B抗炎症・排膿効果。   化膿性炎症に適用。

  1)気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫等に急性の感染症が起き、膿痰が出る。
    そして血痰が混ざるとき肺ヨウと呼んだ。これに用いる。

         +芦根、ヨクイニン、冬瓜子など ex.葦茎湯

  2)直腸周囲膿瘍、前立腺炎、骨盤腹膜炎などは腸ヨウと呼んだ。
    桃仁は消炎、駆オ血効果、排膿作用があると考えられ、これに用いる。

         +冬瓜子、牡丹皮、ヨクイニン、大黄、芒硝など ex.大黄牡丹皮湯

C熱病の精神異常に用いる

  少腹が張満し、大便が黒く、小便がよどんでいるときに大黄や芒硝を配合する。

         +桂枝、大黄、芒硝など ex.桃核承気湯

D成人の1日量として10gを越えないようにしたようがよい。妊婦には禁忌。
                                 このページのトップへ

独活

@風湿の水除去・鎮痛効果

  筋肉、関節などの湿証、水滞による疼痛、運動制限、しびれ感、感覚消失などに。

  筋肉は痙攣して重だるく、関節が腫れ痛む、
  特に、項背部の筋肉や下半身の関節の余分な水分を除き痛みやしびれを止める。

  肩こり、肩関節周囲炎や四肢の骨、関節、筋肉などの老化現象、老化による腰痛に。

A発汗解熱作用

  風寒感冒、頭痛、身痛に用いる。
  血管を拡張して血行をよくし、発汗解表、鎮痛作用などがある。

      +荊芥、防風、キョウ活など ex.荊防敗毒散、十味敗毒湯

  ※キョウ活は主として上半身の症状に、独活は主として下半身の症状に用いる。
                                 このページのトップへ

杜仲

@温性。

A筋肉や骨格を補強するために配合し、腰痛症などに適用。
  老化に伴う腰痛に用いる、腰や筋肉を強くする作用がある。

  下肢が軟弱で力がない、めまい、インポテンツ、頻尿等ある者に。
  
        +牛漆、桑寄生、続断、独活、キョウ活など ex.独活寄生湯

B安胎(流産防止)作用

  妊娠中の出血や切迫流産に用いる。

C降圧作用
                                 このページのトップへ

土別甲

@寒性。

A鎮静効果。

B抗潰瘍効果。

C癒着除去効果。

D腫瘤縮小効果。
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人参

@消化吸収機能をよくして元気をつける

疲労回復効果 手足がだるい、過労、衰弱している時などに適用。

 胃腸の働きをよくして消化吸収機能を亢め元気をつける。
 食欲不振を改善し、消化・吸収・同化促進作用

      +白朮、茯苓、甘草など   ex.四君子湯、補中益気湯

 心窩部のつかえ・痛みまたは胸痛などが認められるときに適用。

A元気を補う、大出血後のショック状態に用いる

 大出血、大発汗、吐瀉後のショック状態に用いる
       (脈沈微細、四肢厥冷、自汗等を呈する)

      +附子など         ex.独参湯、参附湯

B肺気を補い息切れがして苦しく動けなくなり、よく自汗が出るという者に用いる。

      +白朮、茯苓、甘草、蘇子、桑白皮など ex.喘四君子湯

C体内の水分を保ち、口渇を防ぐ

 体内に水分が少なくなり、口が渇くときに用いる(脈が細く触れにくいとき)

 ・・・・熱性疾患で脱水したとき等。

      +麦門冬、五味子など    ex.生脈散

D精神の安定を図る

 体が衰弱して不安、不眠、心悸亢進して脱力感等あるときに用いる。

      +酸棗仁、遠志など     ex.加味帰脾湯

E貧血症に用いる 造血促進効果
                                 このページのトップへ

貝母

@寒性。肺気道の炎症による痰を除く。 抗炎症性鎮咳・去痰効果

 痰の量が少なく粘い、乾咳で痰が切れにくいものに用いる。

 熱のため体の水分が減少して痰が粘くなったものに用いる。

 燥熱痰に用いる。痰の分量を増やし切れやすくする。

  ex.肺結核、慢性気管支炎、気管支拡張症

    +桔梗、甘草、紫苑など        ex.四順湯

A粘痰があり喀出困難で咳に苦しむ者に用いる

 熱を下し、体の水分を保ち、気道を潤して痰を出やすくして咳を止める。

    +連翹、山梔子、知母など       ex.二母散

 気道に炎症のある陰虚体質の者に用いる。
                                 このページのトップへ

麦門冬

@乾性咳嗽に用いる
 
 乾咳と稠痰が出、咽や舌が乾燥するときに気道粘膜の分泌を促進して、
切れにくい粘稠な痰を軟化して喀出しやすくする。

 半夏の鎮咳作用を用いるときは、
 半夏の燥性を予防する意味で麦門冬、人参、粳米など体を潤す薬物を加える。

   半夏、人参、粳米などと併用      EX、麦門冬湯

A脱水を防いで体を潤す
 
 熱病や異化作用亢進で体内の水分(津液)が消耗して脱水し、口渇があり、
 舌や口が乾燥するときに、体内水分量を保持して改善。

 生地黄、玄参などの清熱涼血薬を配合して用いる。

   生地黄、玄参などと併用        EX、増液湯

B強心作用

 熱性疾患等で発汗過多により頻脈、血圧低下等のショック症状があるときに用いる。

   人参、五味子などと併用        EX、生脈散

C腸燥便秘に用いる

   生地黄、玄参、大黄などと併用 
                                 このページのトップへ

薄荷

@弱い発汗・解熱効果。

  熱感があって発熱、頭痛、目の充血、咽痛などがある者に用いる。

      +防風、桔梗、甘草などと併用 ex.清涼散

A鎮痛・鎮痒効果

  頭痛、皮膚の掻痒などに適用。湿疹、蕁麻疹に用いる。

B抗炎症効果

  清涼感があって血管を収縮し、充血を除き、腫脹を引かせる。
  炎症性の咽頭部の疼痛、腫脹、頭痛、目の充血に用いる。

      +荊芥、防風、桔梗、甘草、連翹、金銀花などと併用  ex.銀翹散

C鎮静効果

  緊張感、いらいらなどに適用。柴胡の効果に類似。

      +柴胡、芍薬などと併用 ex.逍遥散
                                 このページのトップへ

半夏

@温性。

A鎮咳効果

半夏は中枢性の鎮咳作用(リン酸コデイン類似作用)と、
粘液を溶解する作用があり、気道の喀痰を溶解して痰の喀出を容易にする。

咽頭などからの刺激による反射性咳嗽に適用。

  1)鎮咳作用

   麻黄、五味子などと併用    ex.小青竜湯
    麻黄は痙攣性の咳嗽を止める作用。
   
  2)去痰作用

   陳皮、茯苓などと併用     ex.二陳湯、半夏厚朴湯
湿痰の多い咳嗽を止める作用があり併用。

B鎮嘔制吐作用

中枢性の鎮嘔作用、吃逆を止める作用。
カタル性の悪心・嘔吐、つわりなどに適用。

  1)胃寒、痰飲嘔吐に
   生姜、茯苓などと併用     ex.小半夏加茯苓湯
 
  2)慢性胃炎・・・・胃カタルを治す
   陳皮、茯苓、人参、白朮などと併用  ex.六君子湯

C副作用

 単独で使用すると、舌のしびれ感、咽喉の刺激感などがある。
 これらは乾生姜を配合して煎出することによって防止できる。
                                 このページのトップへ

白し

@温性。

A発汗解熱作用、鎮痛作用

 1)感冒頭痛に使用する。

    きょう活、防風、川きゅう      EX、川きゅう茶調散

 2)風湿による関節痛、筋肉痛を治す。

    防風、きゅう活、威霊仙     EX、疎経活血湯

B膿の水分や組織の浮腫を除き燥かす作用

 膿を軟化、排膿する
 腐肉を排出し、肉芽を増殖して治癒させる作用がある。

    黄耆、当帰、川きゅう、肉桂   EX、千金内托散

C鎮痛・鎮痒効果

 頭痛、顔面痛、歯痛又は皮膚の掻痒などに。
                                 このページのトップへ

白朮

@温性。

A胃腸の働きをよくし、食欲を増進し、消化をよくし、健胃薬となる。

    人参、茯苓、甘草 などと併用     EX、四君子湯

B急性吐瀉、胃カタルを治す

 嘔吐、下痢、腹痛、胃の粘液性炎症(カタル)を治す。

    人参、乾姜、甘草 などと併用     EX、人参湯

C利尿作用(利尿消腫)

 茯苓と配合して組織や消化管内の貯留水を除き、
 循環血液中への移動を促進する、浮腫、胃部浸水音、慢性下痢に適用。

    茯苓、猪苓、沢瀉 などと併用     EX、五苓散

D表虚の自汗を止める(固表止汗)

 疲労やわずかな動作での発汗や、寝汗をかきやすいときに黄耆と併用。

    黄耆、防已 などと併用        EX、防已黄耆湯

    黄耆、防風 などと併用        EX、玉屏風散

E安胎の効がある

 妊娠中の水腫、流産の予防に用いる。

    当帰、川きゅう などと併用      EX、当帰芍薬散
                                 このページのトップへ

檳榔子

@温性。

A利尿、瀉下作用

 瀉下と同時に体内、腹水、関節内の水を排出する。

 浮腫の強い脚気や衝心に用いる。

    大黄などと配合        EX、九味檳椰湯

B大腸の運動機能異常(ジスキネジー)を治す。

 便秘するとき、便通がないため、腹が張り、腸内容が停滞するときに用いる。
 また、排便後の後重するものを治す。

 悪心、嘔吐、胃腸のれん縮痛、しぶり腹などには、
 枳実、厚朴、陳皮、木香などと配合する。

C駆虫効果

 条虫症などに。
                                 このページのトップへ

茯苓

@利水作用

 白朮と合わせて用いられることが多く、貯留した間質液、
 関節腔内の滲出液、消化管内の水などを循環血液中へ移動させる。
 利尿効果は沢瀉、猪苓、木通に劣る。

 1)尿量が少なく、水分が体内や消化管内に滞り、
   浮腫、胃内停水、嘔吐、下痢等がみられるとき使用する。

      白朮、猪苓、沢瀉などと併用      EX、五苓散

 2)頭眩、めまい、身体動揺感等に用いる。

      白朮、桂枝、甘草などと併用      EX、苓桂朮甘湯

 3)筋肉内の水を除く、またピクピク動くのを止める。

      防已、黄耆などと併用         EX、防已茯苓湯

A消化管内の水を除き、胃腸の働きをよくする。

 胃内停水や腸の水を血中に引き込んで
 下痢を止めるとともに、胃腸の働きをよくする。

      人参、白朮、陳皮などと併用      EX、参苓白朮散

B鎮静、精神安定作用、心悸亢進を治す

 動悸を伴う浮腫のある者に用いる。桂枝−甘草に強心利尿作用があり、
 茯苓、牡蛎に鎮静作用があり、これらを併せて心悸亢進や不整脈を治す。

      桂枝、甘草、牡蛎などと併用    EX、苓桂朮甘湯、
                         柴胡加竜骨牡蛎湯
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炮附子

@熱性
 アドレナリンβ様作用
 (糖・脂質代謝促進の結果、熱産生が増加し、身体を温める)に基づく。
 主として四肢などの末梢を温めるが、腹部も温める。

A強心利尿作用

 身体機能が衰弱して水分代謝が低下している者に用いる。

 1)うっ血性心不全による浮腫を治す。

      茯苓、沢瀉、肉桂などと併用     EX、八味丸

 2)冷えて、下痢、腹痛して尿量少ない者や
   皮下に水が溜まって浮腫のある者を治す。

      白朮、茯苓などと併用        EX、真武湯

B手足の末梢を温め、痛みを止める

 新陳代謝機能の衰退による著しい寒証や、寒冷のため極度に冷えて、
 四肢の筋肉が痛むとき、または冷えて神経痛や腹痛が認められるときに
 新陳代謝を盛んにして熱を産生し、
 更に血管を拡張し血行をよくして四肢の冷えを温め痛みを止める。

      桂枝、甘草、白朮などと併用     EX、桂枝加朮附湯

C近年は使われないが、昔はショック状態に用いられた。

 附子は強心作用があり、大汗、大出血、大吐瀉、失血などの後の
 顔面蒼白、呼吸微弱、脈微弱、血圧低下、冷汗があり、
 チアノーゼ、四肢厥冷等を呈する、急性循環不全に用いる。

      乾姜、甘草などと併用        EX、四逆湯

D副作用

 微量のアコニチン系アルカロイドに感受性があって、服用後四肢のしびれ、
 めまい、心悸亢進、胸内苦悶などが認められるときには、
 苓桂朮甘湯加香附子、牡蠣。
 なお、本生薬の購入時、アコニチン系アルカロイドの残存量を
 購入先から確認しておく必要がある。
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防已

@寒性。

A利水作用(利尿消腫)
  
  1)浮腫や関節水腫に用いる。特に下半身に浮腫の強い者で、
    膝関節の水腫、しびれ、腓腹筋の握痛
    および身体が重いものに用いる。漢防已か木防已を用いる。
    
    +黄耆、茯苓 などと併用  ex.防已茯苓湯

  2)心不全で肺水腫の者

    +人参、桂枝、石膏などと併用  ex.木防已湯

B風湿による関節痛に用いる
  
  風湿で脈浮、悪風のある者、湿の者(水太り)が風邪を引いたとき、
  あるいは関節炎、リウマチ、筋肉痛のある者に用いる。

   +朮、黄耆 などと併用  ex.防已黄耆湯

※鎮痛、抗炎症作用には清風藤を用いる。(エキス剤の防已は清風藤) 
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防風

@温性。

A弱い発汗解熱作用

  外感病に用いて発汗して表証を除く。
  辛温解表薬なので風寒の表証に用いるが、
  風熱、風湿の表証にも用いられる。
  
    荊芥などと併用 ex.荊防敗毒散

B鎮痛・鎮痒効果

  頭痛、四肢関節の疼痛・腫脹又はや化膿症の初期などに適用。
  
  1)風湿による筋肉や関節の痛みを治す。

      蒼朮、ヨクイニン などと併用 ex.桂枝芍薬知母湯、疎経活血湯

  2)頭痛に用いる。

      川キュウ、白シなどと併用  ex.川キュウ茶調散

C皮膚の掻痒や化膿症の初期などに適用。止痒作用

  湿疹、蕁麻疹のソウ痒を治す。

      荊芥、薄荷などと併用  ex.消風散

D止瀉作用。下痢、腹痛を止める。

      白朮、芍薬などと併用  ex.痛瀉要方
                                  このページのトップへ

樸そく

鎮痛・鎮痒・抗炎症作用
 
  打撲などによる骨や筋肉の疼痛、
  または湿疹・皮膚炎に適用。
                                  このページのトップへ

蒲公英

@寒性。

A抗化膿性炎症作用。

  1.  疔、ヨウ、乳腺炎、肺ヨウ、腸ヨウ等化膿性炎症に用いる。

      金銀花、連翹などと併用    ex.五味消毒飲

  2.目の炎症に用いる

B乳汁分泌促進作用。
                                  このページのトップへ

牡丹皮

@消炎解熱作用(清熱涼血)

  抗炎症作用があるため、発熱や局所の炎症にも用いる。

  1)陰虚の発熱や異化作用亢進による発熱に用いる。

       地黄、山茱萸 などと併用 ex.六味丸

  2)肝経の欝火による月経不順、月経痛、めまい、
    脇痛やオ血による手掌、足蹠の灼熱、口唇の乾燥等に用いる。

       柴胡、山梔子などと併用 ex.加味逍遥散

A閉経、打撲、捻挫に用いる

  打撲による皮下溢血・腫脹やオ血による月経閉止などに適用。

  閉経、打撲、捻挫による内出血、うっ血や痛みを治す。
  炎症性の腫張を冷やして腫れ痛みを引かせる。
  動脈を収縮して充血を抑える。

     桃仁、赤芍、桂枝などと併用 ex.桂枝茯苓丸

B抗化膿性炎症

  虫垂炎(腸ヨウ)や皮膚化膿症に用いる。

     桃仁、ヨクイニン、大黄などと併用 ex.大黄牡丹皮湯

C消炎止血作用

  炎症性の出血、熱病の出血斑、吐血、衂血等に用いる。
                                 このページのトップへ

牡蛎

@止汗作用。 自汗、盗汗を止める。

    +黄耆、麻黄根などと併用

A鎮静作用、抗不安作用

  鎮静作用があり、動悸、不安感、不眠等の症状を鎮め、落ち着かせる。
  このため不安神経症、心臓神経症等に用いられる。

  +桂枝、甘草、茯苓などと併用 ex. 柴胡加竜骨牡蛎湯 or 柴胡桂枝乾姜湯

B鎮静、鎮痙作用

  熱病のため体が衰弱して、めまい、ふらつき、筋の痙攣などを呈する者を治す。
  また、高血圧症で頭痛、めまい、ふらつき、耳鳴り、不眠等ある者に用いる。

  +竜骨、石決明、牛膝、釣藤鈎などと併用

C腫瘤を軟化させる(軟堅散結)

  頚部腫瘤(頚部リンパ腺炎、甲状腺腫)、腹部腫瘤(肝脾腫大)等に用いられる。

  +鼈甲、芍薬 などと併用 ex.緩ゲン湯(=柴胡桂枝乾姜湯加鼈甲芍薬)

D夢精、不正性器出血、帯下等に用いる。

  +竜骨、桂枝などと併用 ex.桂枝加竜骨牡蛎湯

E制酸作用。胃酸過多症、胃潰瘍などに

  +良姜、延胡索、小茴香、縮砂 などと併用 ex.安中散
                                 このページのトップへ

麻黄

@温性 熱産生促進。

A発汗解表作用  体を温めて発汗を促す。

  桂枝など、皮膚の血行をよくして体を温める薬と
  合わせて用いると発汗作用が強くなる。  ex.葛根湯、麻黄湯

  主に表寒実証
  (発熱、悪寒、脈浮緊、頭痛、肩こり、関節痛等ある者)に用いる。

B利水作用(利水消腫)

  利水作用によって体の過剰な水分を除く作用がある。

  麻黄−石膏で消炎利水作用があり、滲出性炎症による水腫を治す。
                    ex.麻杏甘石湯、越婢加朮湯

  そのほか、身体の浮腫や関節の水腫、気道粘膜の浮腫を除く。
  胸膜炎の胸水、心膜炎の心膜水腫、関節水腫などに適用。
 
C気管支拡張作用(宣肺平喘)

  気管支平滑筋の痙攣(呼吸困難)に対して
  気管支を拡張するエフェドリン類似作用がある。
  気管支喘息や痙攣性の咳に用いられる。
         甘草などと併用 ex.甘草麻黄湯、麻杏甘石湯

D副作用
 1)発汗作用があるため、
   汗の出やすい人や暑い時期に用いると発汗過多を起こすことがある。
 2)エフェドリン等興奮性の物質を含むため、
   心悸亢進、不眠等を起こすことがある、ときに排尿困難。
 3)胃を障害して食欲をなくすことがある。

  芍薬甘草湯などの服用あるいは合方によって防止又は軽減できる。
                                 このページのトップへ

麻子仁

@瀉下作用(潤腸通便)

  腸の蠕動運動が低下して
  腸管の水分が減少したために起きる老人の腸燥便秘に用いる。

   杏仁、枳実、大黄などと併用  ex.麻子仁丸

   当帰、地黄、桃仁、枳殻、大黄などと併用  ex.潤腸湯
                                 このページのトップへ

木通

@寒性。

A消炎利尿作用

  尿道炎、膀胱炎などで、排尿困難、排尿痛、頻尿等伴うものに用いる。
  
       茯苓、沢瀉、車前子、滑石などと併用 ex.五淋散

B浮腫を治す

  筋肉、四肢、関節内などの貯留水を除去し、
  筋肉の痙れん、四肢及び関節の痛、麻痺感、運動麻痺などを寛解。

       猪苓、沢瀉、桑白皮などと併用

C乳汁分泌促進効果。
                                 このページのトップへ

木防已

@寒性。

A利尿効果

  うっ血性心不全に適用。

B抗炎症・利尿効果

  リウマチ性関節炎、変形性関節症に伴う炎症性関節水腫に適用。
                                 このページのトップへ

木瓜

@温性。

A風湿による下肢の筋肉痛を治す。利水・抗痙れん効果。

  組織の水分を血中に吸収して風湿による下肢の筋肉痛(こむらがえり)や関節痛を治す。

  1)慢性関節リウマチ

    独活、秦ギョウ、威霊仙などと併用   ex.舒筋立安散

  2)こむらがえり(腓腹筋の痙攣)による下肢痛(舒筋止痙)

    檳ロウ子               ex.九味檳ロウ湯加木瓜

B霍乱の嘔吐、下痢に用いる

  腹中を温め、消化管の水分を血中に吸収して下痢、嘔吐を止める。

    附子、白朮、茯苓などと併用      ex.実脾飲
                                 このページのトップへ

木香

@温性。

A鎮痙効果

 寒冷刺激又は精神的ストレスによる
 胃腸の過度の緊張、機能異常などに基づく腹痛に。

  平滑筋の痙攣を緩め腹満、腹痛を止める。
  胃腸が寒冷の刺激を受けて、蠕動亢進、分泌促進のある場合、
  これを温めて痙攣性の痛みを止める。
  胃腸の弱いものがお腹をこわして嘔吐、下痢、腹痛する場合、
  木香は腹痛、下痢を止める。
  
     人参、白朮、茯苓、甘草、カッ香などと併用 ex.銭氏白朮散

B健胃・整腸効果 心窩部の膨満感又は蠕動を抑制するのでしぶりなどに。

細菌性下痢の腹痛、裏急後重を治す

  大腸性下痢(大腸カタル)に用いる。
  消炎作用のある黄連、黄ゴン、黄柏と、
  腹痛を治す木香、芍薬、甘草、厚朴、ビンロウ子、枳殻などとを組み合わせる。
  黄連、黄ゴン、大黄、ビンロウ子、芍薬、甘草などと併用 ex.行和芍薬散

胃の働きをよくする

  消化不良、食欲不振に用いる。
  人参、白朮、茯苓、半夏、陳皮、縮砂などと併用 ex.香砂六君子湯

C血管を拡張して血行をよくする

  冠状動脈硬化症による狭心症や脳血管障害の後遺症等に用いる。
                                 このページのトップへ

益母草

@子宮収縮と止血作用(妊婦には禁忌)

  血滞による月経不順、月経前に少腹張痛し月経量の少ない者に用いる。

  当帰、赤芍、川キュウなどと併用 ex.キュウ帰調血飲

              月経困難症、月経不順、無月経などに適用。

A産後血滞腹痛、外傷後オ血をなして痛む者を治す

  産褥期又は産褥後の各種障害、静脈瘤性症候群、

  当帰、白芍、香附子などと併用

B利水作用、血圧降下作用(利尿消腫)

  腎炎の浮腫、血尿、高血圧に使用する。
                                  このページのトップへ

ヨクイニン

@利水作用(利尿消腫)

A関節炎による疼痛、浮腫を治す
  
  筋肉リウマチ、リウマチ性関節炎等に用いて浮腫、疼痛を緩解する。

  麻黄、甘草、杏仁などと併用 ex.麻杏ヨク甘湯

B抗炎症排膿作用 化膿症で膿汁が希薄で多量のときに。水いぼに適用。

  1)肺ヨウ(肺化膿症、気管支拡張症)・・・・・・嘔吐、膿痰。

    芦根、冬瓜子、桃仁などと併用   ex.葦茎湯

  2)腸ヨウ(虫垂炎、直腸肛門周囲膿瘍)

    牡丹皮、敗醤などと併用  

C皮膚の角化抑制効果

    炎症性又は角化症、限局性又は汎発性強皮症、疣贅などに適用。

D腸管内貯留水の排泄を促進するので下痢を抑制する。

    人参、白朮、茯苓などと併用   ex.参苓白朮散
                                  このページのトップへ             

竜骨

@鎮静効果     牡蛎と同じように用いる。

  めまい、不眠、耳鳴り、臍下の心悸亢進(動悸)などに適用。
                                  このページのトップへ             

竜胆

@寒性。消炎解熱作用

A抗炎症・利胆作用

  肝炎、胆嚢炎並びに泌尿器、生殖器などの炎症、
  膀胱炎、尿道炎、急性結膜炎(肝胆実火)等に用いる。

  目の充血、腫張、口が苦い、難聴、脇痛等あり、
  イライラ怒りっぽい等肝火の症状を治す。

      山梔子、柴胡、黄ゴンなどと併用   ex.竜胆シャ肝湯

  黄疸を治す    インチンコウ、黄柏などと併用

B化膿性炎症に。淋濁、帯下(黄色)に用いる。

C健胃作用。
                                  このページのトップへ             

連翹

@化膿性炎症に効果    皮膚化膿症など化膿性炎症に用いる。

  金銀花、蒲公英などと併用

A解熱作用      発熱性疾患、膿皮症などに適用。

  発熱、熱感、頭痛、咽喉通等を伴う感冒などの風熱表証の解表に用いられる。

  荊芥、金銀花などと併用    ex.銀翹散
                                   このページのトップへ             

漢方処方解説



  より良い治療法を求めて、漢方治療に関心をもつ医師や薬剤師は少なくない。

  しかし、現在日常の診療に従事されていて、
  いまさら、基本的勉強が大切だから「傷寒論」だ「金匱要略」だ「中医学」だといっても
  日暮れて道遠しの感をもたれる医師や薬剤師も多いと思われる。

  本当に知りたいのは、日常の自分の診療体系のなかの不得意な部分を、
  漢方製剤をどう使って、どうカバーするかということなのでしょう。

  そして、
  漢方や中医学専門でなくても、また、「漢方の証」や「腹証」や「中医学」などを知らなくても
  だからといって漢方方剤が使えないとは思われない。

  もちろん、ある程度の基礎知識は必要です。

  必要な基礎知識というのは従来の日本漢方や中医学ではなく、
  できるだけ正確な疾病の認識と病態生理を知り、
  そして個々の生薬の薬効と生薬の組み合わせにより生まれる薬効を知り、
  病態にあった漢方処方を知る、 ということです。



  厳密には同一の病人は二人とはいない。
  しかし、群を対象とするときには、処方を固定しなければならない。

  オーダーメイドの個人に合わせた漢方処方がタクシーで自宅まで送りとどけるようなものなら
  レディースメイドの固定された漢方製剤は、鉄道やバスで自宅の近くまで送るようなものです。

  処方を固定した場合には、合方や加減法は非常に大切です。

  葛根湯は辛温解表剤ですが、
  石膏を加えると辛涼解表剤となり、傷寒から温病まで広範囲に使える。

  辛夷と川を加えると、葛根湯加辛夷川となり
  蓄膿症(副鼻腔炎)に使われます。
  辛夷は鼻粘膜の浮腫を治し、川は頭痛を止めます。

  鼻炎や蓄膿症のため鼻粘膜が腫れ、
  ポリープができたり、鼻閉があり、嗅覚がなくなったりするときに用います。

  もし膿性鼻汁が多いとき、炎症症状が強いときは石膏や桔梗を加えます。
  
  桔梗には排膿作用があり、石膏は消炎作用が強い。
  
  大黄を加えると抗炎症作用が強くなる。
  濃い膿には石膏を、薄い膿にはヨクイニンを使います。

  五十肩には独活や地黄を加え、
  関節炎の水腫には蒼朮やヨクイニンを加えます。
  
  茯苓や朮、附子を加えて神経痛やリウマチに使うこともあります。

  葛根湯も成分の7つの生薬に固定すると、その応用範囲は非常にせまいものになります。

  この意味では加減の出来ない処方は、交換レンズのない一眼レフのようなものです。
  たとえエキス製剤をつくっても、加減のできるようにしておきたい。

  単なるエキス製剤では売薬と同じで、使える範囲はせまい。
  これを拡大して使うには、現状では、うまく合方していかなければならない。

  ベストではないにしても、エキス漢方にはそれなりのやり方が必要になる。

  現在のエキス処方は製薬会社主導のもので、
  定まった方針がなく無定見につくられたとしか思えない。

  エキス製剤として処方を固定化し、新しい漢方を作るのであれば、
  「エキス漢方にはエキス漢方の道がある」 といいたい。

  ある基本的処方と、これに加えられる単味または複合のエキス剤を
  つくれるように方針をきめた製剤化が大切になります。

  つまり、固定化された漢方エキスには減法をおこなえない欠点があるので、
  合方と加減で組み立てられるような方式をつくるほうがいのです。



  古来、幾星霜を経てなお光を放つ名方は、
  永い間に淘汰され、その中で実証された有効性の高い処方であります。

  既存の処方を中心に加減するか、個々に処方をつくるかは、
  セット旅行と個人旅行のようなもので、いずれにも長短がある。

  はじめは、既存処方を中心にして加減していくのが堅実でしょう。

  この場合、運用する処方の数を多くするか、
  代表的な少数の処方を用いて運用範囲を広くするか、またはその中間か、になります。

  処方を学ぶときには、はじめから数多くを使うことよりも、
  ひとつの処方を十分に使いこなせるまで頻繁に使用し、
  その処方を愛し十分に自分のものにすることが大切だと思う。




安中散

[適応症」
1.胃酸過多に伴う胃の痛み(上腹痛)
  胸やけ、酸水を吐す。
  
  過酸性の胃炎で
  胃、十二指腸潰瘍に伴う胃の痛み、胸やけ、酸水、ゲップや胃液が上がってくる時。

2.冷えて起こる腹痛、腰痛(下腹部から腰に連なって痛む)、冷えによる生理痛、胃痛。

[解説]
 安中散には次の二つの処方がある。
 ・和剤局方
  甘草、延胡索、良姜、乾姜、茴香、肉桂、牡蠣
 ・もう一方
  乾姜を除き、縮砂を加えたもの
 
  乾姜は体を温める。ことにお腹(裏)、内臓を温める薬。
  縮砂はお腹を温める作用もあるが、主な作用は悪心、嘔吐を止める作用である。

[方意]
 延胡索、良姜、甘草、茴香、肉桂・・・・・鎮痛作用があり胃の痛み、胃痛に配合している。
 縮砂、茴香          ・・・・・悪心や嘔吐を止める作用がある。
 牡蠣             ・・・・・制酸作用があるがエキス剤や煎液ではその作用は弱い。
                   牡蠣は末が良い。
 乾姜、良姜、肉桂      ・・・・・温める作用、ことにお腹、内臓を温める。

 従って本方は鎮痛と温裏(お腹を温める)、制酸の作用がある。

[応用]
1.胃の薬として
 a、胃酸過多による胃痛、胸やけ酸水、ゲップ、・・・・・胃酸過多、胃、十二指腸潰瘍
   悪心、嘔吐を伴えば縮砂の入った処方が良い。
 b、胃が冷えて例えば冷たい飲料水、冷たい食べ物をたべて、
   胃が痛む時には
   乾姜の入った処方が良い。

2.お腹の冷えを温める薬(温裏薬)として
  お腹が冷えるのは冷たい飲食物ばかりでなく、
  下肢が冷えると、下肢で冷えた血液が腹に帰って腹部を冷やす。
  下腹部から腰にかけて痛む。
  ガスが腸にたまり、腹痛、腹満、下痢・・・・・、女性では生理痛・・・・・などがおきる。

[注意]
 一般に安中散は、胃酸過多の胃痛、胸やけの処方であると言われる。
 しかし、やせ型で腹部筋肉が弛緩する傾向にあり、・・・・とありますがこれはオカシイ。

 太っていようが痩せていようがそんなことは関係ありません。
 このようなヘンテコリンなことが、日本漢方にはよくありますので注意されたい。
 これは和剤局方に「面黄肌痩、四肢倦怠」と書いてあるからなのかもしれません。
 また、遠年日近とあるように、慢性でも急性でも用いる。
 
 長年悪いと痩せることもありますが、急性では太っていてもかまわない。
 太っているとか痩せているとかではなく、筋肉が弛緩しているとかいないとかでもない。
 
 また、胃酸の多い者は、食欲が減退することは少なく、むしろよく食べる。
 貧血があると面(顔面)は血色がなくなり、黄色人種では面黄(顔面が黄色)になる。
 また冷えた時も面黄となる。
 
 また、神経質であるとか、神経性胃炎を適応症にあげている。
 しかし、これも関係ありません。
 
 浅田宗伯は
 「世の中では幽門狭窄、胃拡張の主薬といっているけれども、
 吐水、嘔吐の進んだものには安中散は効果はなく、
 腹の痛いものを目標に使いなさい」「反胃に用ゆるにも腹痛を目的とすべし。
 また婦人血気刺痛に効あり」と言っている。
 
 日本では昔、乾姜の代わりに縮砂を用いて嘔吐に用いてきた。
 
 胃は食べ物が肛側に向かってスムーズに送られる作用があり、
 嘔吐は胃の働きに反して上にあがってきて起こる。
 
 反胃は嘔吐するものを言う。胃に逆らうもの、胃に反するものの意味です。
 縮砂を加えて嘔吐を抑えるようにしていますが、
 胃拡張や幽門狭窄の吐水、嘔吐の進んだものには効果がない。


胃酸過多の診断と治療

 胃酸過多の人は食欲が平素からある。痛くても食べられる。
 
 夏季、暑いと一般には食欲が低下する。
 胃酸の分泌の多い人は、暑くても食欲はあることが多い。
 
 秋になり一般には食欲が進む。天高く馬肥ゆる時は胃が悪くなる。
 悪くなる前は、無性にお腹が減っていくらでも食べられる。
 
 今食べたのにすぐお腹が減ってこんなに食べてよいのかと思う。

 空腹時に痛みを感じるようになり、少し食べると痛みが治まる。
 胸やけ、酸水が上がってくる。
 
 これらの症状には、
 安中散や、重曹など制酸剤、Hブロッカーなどを与えるとよくなる。

 しかし安中散は散として使わなければ制酸作用は弱い。
 胃酸を押さえるだけなら、Hブロッカーの方がよく効く。
 
 安中散はお腹が冷えて起こす腹痛、胃の痛みに用いる。
 胃酸過多にはその効果は弱い。温裏(お腹を温める)の薬です。
 
 胃酸過多には黄連が一番良く効く。
 胃酸を押さえるばかりでなく、抗菌作用もある。  

 Hブロッカーは服用するとよいが効果が持続しない。
 服用を止めると、胃酸はまたもとの状態に戻る。
 
 黄連は服用を中止しても、胃酸は増加しなくなる。値打ちがありますよね。
 黄連湯、半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、などが良く用いられる。
 
 しかし黄連は腹を冷やす。だから乾姜、肉桂、呉茱萸を加えて温める。
 
 後世方では五積散加黄連、山梔子を用いる。

 胃、十二指腸潰瘍に用いると、胃酸を押さえるばかりでなく再発しにくくなる。
 胃、十二指腸潰瘍の痛みには、解労散、または延年半夏湯が良い。

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葦茎湯
 
 [組成]
 蘆根、桃仁、冬瓜子、ヨク苡仁

 気管支拡張症及び慢性気管支炎などで
 慢性に膿性痰 あるいは血痰を喀出するときに適用。

 四順湯と合方し、去痰、排膿作用を増強する。
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茵陳蒿湯

 [組成]
 茵陳蒿、山梔子、大黄。

 抗炎症性利胆剤。

1)肝胆疾患に応用
 @急性肝炎の黄疸症状に小柴胡湯、又は大柴胡湯を併用
 A劇症肝炎に小柴胡湯、黄連解毒湯を併用
 B肝膿瘍に大柴胡湯併用
 C急性胆嚢炎・胆管炎に小柴胡湯、又は大柴胡湯、黄連解毒湯を併用

2)皮膚疾患に応用
 @自家感作性皮膚炎で膿疱を形成したときに十味敗毒湯、黄連解毒湯を併用
 A食事性蕁麻疹に小柴胡湯、又は大柴胡湯を併用
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烏薬順気散
 
 [組成]
 烏薬、枳実、陳皮、白シ、麻黄、白キョウ蚕、川キュウ、桔梗、乾生姜、大棗、甘草。

 扇風機やクーラーの風など外因によるしびれ
 又は運動麻痺、脳血管障害やパーキンソン症候群の筋固縮、

 痙性運動麻痺又は言語障害、
 あるいは授乳時の腕枕による肘のしびれなどに適用。
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越婢加朮湯

[作用]
 本剤は利水剤であり、とくに炎症性の滲出液に用いる。

[組成]
 麻黄・石膏・甘草・大棗・生姜・白朮
 1)麻黄−石膏・・・・・利尿作用、抗炎症解熱作用。
 2)麻黄−甘草−白朮・・・・・利尿作用
 3)生姜−大棗−甘草・・・・・健胃作用。

金匱要略に「裏水には越婢加朮湯之を主る。甘草麻黄湯之を主る。」とある。
すなわち、甘草麻黄湯、越婢加朮湯ともに麻黄・甘草の利尿薬を含んでいる。

越婢加朮湯は石膏を含んでいるから、炎症性の浮腫、水腫によい。
裏水は一身面目浮腫とあって全身性の浮腫の方剤です。

石膏があっても、必ずしも炎症がなくても使用できる。
また、蒼朮が入っていると利尿効果が増強される。

茯苓、附子を加えると、
茯苓は朮と共に水を利し、附子は水も利すが、痛みにもよく効く。

関節炎やRAの関節水腫、疼痛にも用いる。
炎症性水腫をよくするが、RAが治るわけではなく
RAを治すためには他の漢方処方が必要になる。

[適応症]
 1.滲出性胸膜炎・・・・・炎症と胸水を除く。
 2.関節の浮腫・・・・・関節炎の貯留した水を除く。
 3.ネフローゼ、腎炎の浮腫、水腫。
 4.蕁麻疹・・・・・湿疹の水泡、滲出液に。
 5.緑内障・・・・・前房水を除いて眼圧を下げる。
   開放性隅角緑内障、閉塞性隅角緑内障を問わず眼圧を下げる。

[運用の実際]
1.浮腫
(1)急性腎炎・ネフローゼ型腎炎
  急性腎炎の浮腫・乏尿、とくに皮膚化膿症・扁桃炎などによる腎炎によい。
  
  ネフローゼ型腎炎では、低たんぱく血症・アルブミン低下
  α2グロブリン増加・βリポタンパクやコレステロール増加を呈するもの、
  ステロイドに反応するタイプによい。
  
  妊娠浮腫や習慣性流産にはよくないといわれている。
(2)炎症性の浮腫
  局所の炎症の初期で、発赤・熱感とともに、周辺の浮腫(腫脹)を伴うものに用いる。
  増殖性を呈する炎症には効果がなく、その場合には他の漢方処方が必要になる。
  
  急性結膜炎で眼瞼の浮腫がみられるときや、関節炎の腫脹・関節内水腫に効果がある。
  
  関節炎では熱感(自、他覚的)発赤・腫脹・水腫などを呈する急性期や再燃のときによく、
  
  関節リウマチ・結核性関節炎などに使用してもよい。
  ただし、石膏の量が重要で、炎症が強いときには非常に多量を要することもある。
  それゆえ、エキス剤では無理なことが多い。
  
  なお、やや慢性化した関節炎には続命湯を用いる。
  続命湯は麻黄・石膏・乾姜・甘草に当帰・人参・桂枝・川弓・杏仁を加えたもので、
  関節周囲の筋肉・組織の萎縮や削痩が生じた場合に適し、
  当帰・桂枝・川弓で循環を促進し、杏仁は浮腫を軽減する。
(3)胸水
  湿性肋膜炎の胸水に、小青竜湯加石膏と同様に加える。
  
2.湿疹・皮膚炎など
  越婢加朮湯は消炎・抗化膿と利水の効果があるところから、
  炎症性の充血・発赤と浸出液が多い皮膚病変に効果がある。
  
  湿疹は、炎症性の浸潤が基礎にあり、漿液性丘疹・海綿状態が特徴です。
  
  貨幣状湿疹も発赤・湿潤・ビランした局面を呈し、
  初発に半米粒大の湿潤のつよい丘疹から湿潤した局面をつくる。
  
  このような状態や自家感作性の皮膚炎で同様の状態を呈するものに有効です。
  
  汗疱状白癬の水疱・膿疱・滲出液の多いビラン面や、化膿性炎症にも用いてよい。
  
  石膏が化膿性炎症に効果があるためですが、
  抗化膿の金銀花・連翹を加えることも多い。
  
  ただし、湿疹・皮膚炎などの反応性皮膚疾患や白癬症・真菌症も、
  以上のような状態だけでなく複雑な病態を示すので、すべてに有効なわけではない。
  
  一般に、反応性皮膚疾患には消風散を基本にするとよい。

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黄連解毒湯

[組成]
 黄連・黄ごん・黄柏・山梔子

[適応症]
 表層性胃炎
 出血
 精神不安
 全身性の感染症による目・舌・口内・歯牙・歯周あるいは頭部の炎症
 皮膚の炎症
 黄疸をともなう炎症
 化膿性炎症
     以上に対し、消炎・止血目的として単独であるいは合方して応用する。

[応用]
1.急性感染症(インフルエンザ・日本脳炎・流行性脳脊髄膜炎・敗血症など)
  皮膚化膿症などで、熱盛を呈するもの。

2.各種の炎症性出血や発疹
  急性肝炎・急性胃腸炎・細菌性下痢・尿路感染症・
  急性胆のう炎などで、湿熱を呈するもの。
 
3.自律神経失調症・更年期障害・神経症・不眠症・高血圧症・
  口内炎・歯痛・神経性胃炎などで、心火旺・肝胆火旺・胃熱を呈するもの。

[使用上の注意]
 本方は苦寒性がつよいので熱証以外には用いない。
 
 また、熱邪は陰液を消耗しやすいので脱水症状に注意し、
 陰液を保護するようにつとめたい。
 
 止血薬として用いる場合にも熱証である事を確かめる必要がある。
 
 気虚(気不摂血・脾不統血)や血おの出血には用いるべきではない。

[運用の実際]
 黄連解毒湯・三黄瀉心湯は、一般に以下の状況に用いる。
 
 1)表層性胃炎
  胃粘膜が充血して、びらん・出血・カタールをともなう場合に応用する。
  
  暴飲・暴食・濃度の高いアルコールなどによる急性・慢性の表層性胃炎に適している。
  ただし、このような状況に対しては、原南陽の中正湯がもっともよい。

中正湯は三黄瀉心湯・平胃散・半夏瀉心湯の合方と考えられるもので、
半夏瀉心湯や黄連湯を用いる状況よりも炎症がつよい場合に応用する。
ふつうは山梔子を配合して用いると、食道炎ともなうものにも適している。
  (※中正湯:半夏・陳皮・厚朴・木香・甘草・白朮・乾姜・大黄・黄連・黄ごん)
  
方中の黄連・黄ごん・大黄は、充血・炎症を抑制し出血を止める。 
また、大黄はタンパク凝固によりびらん面に対する収斂作用をあらわす。
   (したがって、食道・胃粘膜などにびらんがあるときには、
       三黄瀉心湯あるいは黄連解毒湯加大黄を用いるとよい)
厚朴・白朮・陳皮は平胃散で、木香は胃の働きをよくし陳皮と同じく食欲を増し
胃のつかえやもたれを改善する。
  
半夏・厚朴・生姜は悪心・嘔吐を止め胃部膨満感をのぞく。
以上のような配合になっている。

エキス剤では、三黄瀉心湯・平胃散・半夏瀉心湯の
合方、あるいは三黄瀉心湯・半夏厚朴湯・二陳湯の合方を代用すればよい。
  
また、この場合の三黄瀉心湯は少量でよい。

  慢性化したものや軽症なら、五積散と黄連解毒湯の合方(五積散加黄連山梔子)
  あるいは半夏瀉心湯・黄連湯などを用いればよい。

 2)出血
  黄連解毒湯・三黄瀉心湯にはともに止血作用がある。
  ただし、適応する出血状態は、
  鮮紅色・大量で勢いよくでるもので、動脈性の出血と考えられる。
  
  また、出血はしても貧血を呈することは少なく脈も力がある。
  怒ったり興奮していることも多く、飲酒による出血もこの状況を呈することが多い。

  三黄瀉心湯は吐血・鼻出血など上部の出血に、
  黄連解毒湯は下血・血尿など下部の出血に用いる習慣がある
  (山梔子の有無の違いであろうか)。  いずれも冷やして服用させる。

 3)精神不安
  いらいら、怒りっぽい・興奮・眼の充血・顔色が紅い・のぼせ、甚だしければ
  狂躁状態などを呈するものに用いる。
  脳の充血や高血圧などにともなう上記症状に有効。

 4)炎症
 1.全身性の感染症
   高熱・顔面紅潮・精神不安・不眠・いらいら・意識障害・うわごとなどの症状に
   吐血・鼻出血などの出血をともなう炎症。
 2.身体上部の炎症
   目・舌・口内・歯牙・歯周あるいは頭部の炎症・
 3.皮膚の炎症
   日光皮膚炎・化膿性炎症・火傷など。
 4.黄疸をともなう炎症
 5.化膿性炎症

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乙字湯

[組成]
 柴胡・升麻・黄ごん・甘草・大黄・当帰

 (1)柴胡・黄ごん、(升麻、大黄)…消炎解熱作用。
 (2)当帰…血流をよくする作用(活血作用)
 (3)柴胡・升麻…脱出した痔核を肛門内に引き上げる(升提作用)
 (4)大黄…瀉下作用、消炎作用、駆血作用(痔静脈のうっ血を除く)

[適応症]
 (1)痔核…内痔核、外痔核、内痔核脱出等に用いる。
 (2)外陰部掻痒症、肛門掻痒症に用いる

[解説]
 本方は、原南陽がつくった方剤で、
 もとは生姜と大棗があり当帰はなかったが,のちに浅田宗伯が当帰を入れた。

 当帰は血液の流れを良くする最も有効な薬物です。
 痔疾に色々の種類がありますが、本方は主に痔核に用いる。

 痔核は痔静脈の静脈瘤症候群であり、直腸静脈の流れが悪いのが原因です。
 痔静脈にうっ血をおこさせることがよくない。
 
 便秘は野菜の摂取量が少ないことも原因で、便秘すれば、血液の粘度が上昇し、
 血が粘くなって、うっ血がおきる。・・・・と考えている。

 従って、大黄を上手に使うこと。上手く排便し当帰で血流をよくする、
 または桂枝茯苓丸のような駆血剤を合方すれば、痔核疾患はよくなる。

 柴胡・升麻は東垣以来、升提といって、脱出した痔核を肛門内へ引きあげる、
 といって南陽も加えている。

 しかし浅田宗伯は、濕熱清解の功に取るがよし。 としている。
 浮腫や滲出性の炎症に効くということで、どちらも正しいのではないかと思う。

 黄ごんは、柴胡、升麻に加えて、抗炎症、解熱の作用がある。

 痔核の脱出カントンしてものすごく痛み、どうにもならないときは、麻杏甘石湯がよく効く。

 升麻には止血作用がある。
 しかし出血量の多いとき
 静脈血なら、帰艾膠湯を併用し、
 動脈血の出血なら、三黄瀉心湯、黄連解毒湯を併用する。
 
 槐花散、槐角丸など止血の薬物もある。
 若し、当帰が足りなければ、当帰芍薬散を加える。

 いずれにしても、便通に個人差が大きいので
 できれば、大黄抜きのエキスをつくり、桃核承気湯、大甘丸などと
 その人に応じて配合したい。
 

 処方を固定すると、適応の範囲が狭くなり、乙字湯のエキス剤も効かすのに工夫がいる。
 
 効かないのは処方が悪いのではなくて、処方を充分に使いこなせないからです。

 〇〇〇〇の何番では仕方がない

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五苓散

[組成]    
  沢瀉・猪苓・茯苓・朮・桂枝      《傷寒論》《金匱要略》

[効能]    
  利水作用(利尿作用)

[適応症]   
  水逆の嘔吐(ロタウィルス感染症の吐瀉)下痢。
         
  浮腫、水腫。
         
  緑内障。
 
[解説]
本方は利水作用の薬物で構成された利水剤であり、
浮腫、水腫や緑内障などに用いる。その応用は広い。
 
茯苓、朮は組織間や胃腸内、眼球内の水を血中に吸収する作用があり
胃中や腸管内の水を吸収して嘔吐や下痢を止め、眼圧を低下させると考えている。
 
桂枝は腎血流量をよくし、沢瀉は血中の水分を腎臓で尿として排出すると考えている。

出典は、《傷寒論》で、熱病の傷寒に用いるため組まれた方剤と思われるが、
熱病だけではなく一種の利尿剤と考えれば、浮腫をはじめ種々の病に用いられる。


(1)熱病の場合 (熱病の場合は脉が浮で微熱がある)

熱病で、汗が多量に出ると脱水となるため、口が渇いて水を飲みたくなり
苦しくて眠られず、少し水を飲ませると直に消化管から吸収されて脱水は治り、口渇も止む。
 
ところが、“消渇”という病態がある。 これは、いくら水を飲んでも渇きが治らず
咽が渇いて水を欲しがる。しかも、小便が少量しか出ない。

これは、飲んだ水が胃腸にはいっても
血中には吸収されないため、脱水は治らず、渇がよくならない状態です。
 
胃部をたたいてみると、チャプン、と振水音がして、胃内には多量の水が貯まり
いくら水を飲んで胃に入っても血中に吸収されないため、口渇が治らない。
 
普通の水ならコップ一杯が胃に停滞する時間は30〜40分。
滲透圧を等張につくれば3〜5分で吸収されるというが、
五苓散を服用すれば、この胃中の水が血中に吸収される。

夏期に五苓散の証は多い。

さらにもっと激しいものに“水逆”の嘔吐がある。

水逆と名づけられる嘔吐とは、
血中の水分が胃や腸に逆に出て、そのために、胃中の水分を嘔吐する事を言う。

普通の嘔吐とは違っていて悪心がない。血中の水分が不足して口渇が甚だしくなる。
半夏の類で、嘔気があり、ゲェゲェ言って少ししか出ない嘔吐とは全く異なる。

水を飲むと、その水は血中に吸収されず、血中から胃に出てきた水と併せ大量の水を吐く。
噴き出すように、投げ出すように、ごぼっと出る。
 
出るとまたのどが渇いて水を飲み飲むとまた吐く。
ロタウィルス感染症の場合にも見られる。
脱水しているから、口渇、尿不利で、口は渇き小便は出ない。下痢をすることもある。

五苓散も煎剤では、のむとすぐに嘔吐するため薬が効かないことがある。
五苓散末を葛湯で練って与えると、おさまる。 服用して15分嘔吐しなければ治る。
もし15分以内に嘔吐すれば、もう一度同じように与える。

葛湯、片栗、重湯のようなねんばりとした液を猪口に少し入れて、
その中に五苓散エキス散や末を入れて練り、口に入れる。
 
すると、嘔吐や下痢が止まり、口渇がなくなり、尿が大量に出る。
熱があるときは、発汗して熱が下がる。
水を飲まないのに一服か二服で見事に効いてしまう。それも30分以内に。

同じような病態の小児仮性コレラの水逆の嘔吐に対しても、一服で効果をあらわす。

この水逆の嘔吐は、血中の水分が、胃腸に逆流し、体内は脱水だが、
消化管内はダブダブに水がある。五苓散は、消化管の水を血液中へ吸収させ、利尿する。
 
すなわち、茯苓と朮は腎臓に作用して利尿作用があるというよりは、
消化管内の水分や血管外の水を血中に吸収させるような働きがあるように思われる。
 
これ等については今後の研究にまたなければならない。
 
五苓散には消炎、解熱の薬物が入っていないため、
炎症性浮腫(水腫)にはそれだけでは、使えない。

桂枝は熱病の場合、ことに悪寒のあるときには発汗して熱がさがる。
 
猪苓、沢瀉はどちらかといえば、血中の水分が過剰になると
利尿する作用があるのではないかと考えている。
 
それは、方剤から逆に考えるのです。
したがって苓姜朮甘湯のように、小便自利しているときは沢瀉や猪苓は入れてはいない。

 
(2)雑病の場合

五苓散は熱病以外にも用いられる。
 
例えば、古来から小児の陰嚢水腫の水を除くとき、陰茎の包皮が水腫様に腫れているとき、
すなわち限局性の浮腫の治療に応用している。
 
腎炎、ネフローゼなどの全身性の浮腫を除く。
 
下痢のとき腸管の水をとる。
 
水によるめまい、頭痛に用いられる。
 
例えば偏頭痛のときなどにも応用される。

桂枝は、熱病でなく雑病のときは発汗作用よりも末梢の血管を拡張し血行をよくして、
浮腫を除く力を増強し、また腎血管を拡張して強心利尿作用があると考えている。
 
どの方剤についても言えることですが、
《傷寒論》の条文が示す病態は熱病についてのものです。
 
これを雑病に用いるときには熱病と同じではない、
ということを常に誤らないようにしていただきたい。
 
「悪寒がある」というのは熱病について言うときであって、
雑病には悪寒もなく、四苓散でよいという人もあるが、
桂枝のはいった処方が上記の理由で四苓散よりも良い場合も多いと考えている。
 
「悪寒のないときには桂枝を除け」というのは、
傷寒すなわち熱病について言うことなのです。
 
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猪苓湯

[組成]
猪苓、茯苓、沢瀉、滑石、阿膠。    《傷寒論》

[効能]
利尿作用、消炎、止血作用。

[適応症]
尿道炎、膀胱炎、尿管結石の排尿困難、排尿痛、血尿、下痢。

[解説]
熱病では、
初期に(太陽病)悪寒がして発汗せず、
桂枝で温めて発汗すれば治るものに五苓散を用いる。

咽燥、口苦している場合は、
桂枝でさらに温めて発汗すると脱水をおこすため五苓散はよくない。
このようなときや悪熱し、発汗しているものに猪苓湯を用いる。

渇して水を飲まんと欲して、小便は出ない。これは体内に水分が不足している状態です。

水の不足なら水を飲めばよいはずですが、
五苓散の病態と同じように、いくら水を飲んでも消化管から血中に吸収されないため、
茯苓と滑石でもって消化器官内の水を血中に吸収させる。

五苓散を用いる者は熱病初期のため、
まだ体内の脱水があっても熱毒(中毒症)にはなっていない(傷津)。
だから茯苓と朮で水を消化管から血中に吸収すればよい。

猪苓湯の病態は、悪熱し、発汗し、脱水のみならず、
中毒症(消化不良性中毒症)のように燥と熱毒のため舌質も紅から絳になる(傷陰)。

茯苓と滑石で消化管内の水を血中に吸収すると同時に、滑石でその熱毒を制し治す。
血中は水で潤い、熱が下がり、口渇も咽燥もよくなる。

五苓散は“傷津”、猪苓湯は“傷陰”と考えて鑑別をすればよい。

滑石は、消化管(ことに腸内)の水を取り、血中の水を利尿する作用も強いため、
脱水しない配慮として阿膠を加えている。

猪苓湯は少陰病でなく、陽明病です。
しかも体内の脱水と熱毒(これを中国では“傷陰”という)のため、煩して不眠の状態で
熱と下痢、嘔のため、脱水と熱毒により煩して眠れない。

水を飲んでも嘔吐するか下痢となって体内に水が吸収されない。
この水を滑石と茯苓で血中に吸収させて脱水を治す。滑石で熱を制する。

阿膠には止血作用があり、血尿などにも用いられる。



雑病では
いつの時代からか、頻尿、排尿痛、排尿困難などに用いられるようになり、
現代では膀胱炎、尿道炎、尿路結石に応用されている。

したがって、本方を浮腫のないときや消化管内に水が少ない場合に用いるときは、
脱水しないように、水を多量に服用していただきたい。

これは前記の病態とは異なります。
脱水とか、不眠などとは全く関係がなくてよく、飲めば水は容易に血中に吸収される。

暑淋といって、夏季、発汗多量で、尿量は減少し、
尿は濃厚になり、排尿時に灼熱間があり、少量淋瀝する。

このように、水を飲んでも発汗が多くて尿量が増加しないときにも猪苓湯は用いられる。
排尿する尿量を増加させ、熱をとるため暑淋は治る。

脱水を防ぐため阿膠がある。

猪苓湯は、
猪苓、茯苓、沢瀉、の利尿薬、
滑石の消炎、利尿作用、
阿膠の止血作用、
        などを配合してつくられた方剤です。

しかし猪苓湯のままでは、一種の利尿剤で、あまり効果はなく
血尿など出血には、 四物湯を合方し、
膀胱炎、尿道炎の消炎には、 山梔子、黄ごんなどの入った五淋散、八正散などがよい。
黄連解毒や竜胆瀉肝湯などの併用が必要なときがある。
結石には排石湯がよい。
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桂枝湯
  
[組成]
  桂皮・芍薬・大棗・甘草・生姜

桂枝湯の出典は『傷寒論』で、麻黄湯と共に発汗(解表)剤の代表です。
(桂枝湯は発汗作用が弱く『傷寒論』では解肌と言っている)。

メーカーは、桂枝湯の適応症、使用目標を次のように記している。

[適応症]
体力が衰えた時の風邪の初期

[使用目標]
1.体力の衰えている人。
2.頭痛、発熱などがあり、発汗傾向がある場合の風邪の初期。


はたして、上記の適応症、使用目標は正しいのだろうか。

[適応症]に記載されている「体力が衰えた時の風邪の初期」・・・

[使用目標]にも「体力の衰えている人」と記載されている。

このような適応症、使用目標になってしまっているのは
日本では、桂枝湯は虚証に用いる方剤、とされ
虚証とは体力の衰え、体力・闘病力が弱いと考えているからです。



原典の『傷寒論』では桂枝湯の適応症は、
「太陽病、頭痛、発熱、汗出、悪風者」となっている。

太陽病とは・・・「太陽の病たる。脉浮、頭項強痛して、悪寒す」と定義されている。

急性熱病(感染病)の初期は太陽病で始まることが多い。
そして太陽病は、病の軽重によって中風と傷寒に分けている。

「太陽病、発熱、汗出で、悪風、脉緩者。名づけて中風となす」・・・・と定義している。


太陽病の症状は、
@脉浮 A悪寒(さむけ) B頭痛、項痛・・・などの表証があって、裏証はない。

太陽病で、発熱・汗出で、悪風(脉浮)のものは中風です。
従って、桂枝湯の証(適応症)は太陽病の中風です。

そして中風とは軽症の熱病であり、脉も浮脉で緩。悪寒(さむけ)も強くない悪風です。

悪風と言うのは、温かくしている時、例えば布団を覆っていると悪寒はなく、
体は温かくなり、ひとりでに少し汗が滲み出る。布団から外に出て、
すきま風にあたったり、便所に行くため廊下に出てすこし寒い空気にあたるとゾクッと寒い。

即ち悪寒のなかで、ごく軽い悪寒を区別して悪風としている。
これはほんの少し体を温めてやると汗が出て治る。  即ち軽症の熱病です。

桂枝湯は発汗作用の弱い発汗剤です。 この場合の虚は、病邪が虚、即ち病邪が弱い。
病が軽いので、体が衰えているのではない。

従って、メーカーのいう桂枝湯の適応症、使用目標は根本的に誤った適応症だと思う。

◆桂枝湯

[組成]
   桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草

[方意と薬能]
   本方は桂枝という体を温める薬物を主とし、生姜にも体を温める作用がある。
   この二味は、熱病の初期に起こる悪風・自汗の時期に与えると、
   発汗し、汗が出て熱は下がり病が治る。

   しかし、発汗が少ないから治らない。だから、少し温めてもっと汗を出すと治る。
   しかし、汗がダラダラと流れるように出るのは脱汗で、出すぎては治らない。
   
   芍薬は止汗作用があり、汗の出すぎるのを制する。
   桂枝湯は、芍薬を加えて発汗にブレーキをかけている方剤です。

即ち桂枝湯は、
桂枝・芍薬が主薬で、生姜・大棗・甘草は矯味緩和のための薬物と考えてもよい。

後世の方剤なども処方中に記載してなくても、煎じるときは生姜・大棗を加えるものです。

ただ生姜は健胃作用がある。また血行をよくし、体を温める作用もあるから、
軽い発汗作用もあり桂枝を助ける。民間では、生姜をあめ湯に入れてかぜ薬に用いる。

◆方剤の薬用量と服用の注意

『傷寒論』では桂枝湯の服用法に注意事項を記載している。

   「水七升でとろ火で煮て、三升に煮詰め、滓を去って、温かいのを一升服用し、
   服用後は更に粥一升余りを啜り、(体を温めることで)薬効を高める。

   布団を覆ってしばらく温める。体中から汗がジットリ出て汗ばむくらいがよい。
   流れるほど発汗させてはよくならない。病を除くことができないからです。

   もし一服で汗が出て病気がよくなると、一服だけでもうそれでよい。
   一日分全部を飲む必要はない。しかし、汗が出なければ前と同じような要領で服用し、
   汗のない時は服用間隔を短くし、約半日で三服を服み、
   もし病が重い者は一日一夜を通して服用させ、常によく病状を観察し、
   1日分を服み終わっても病症がまだある者には、更にもう1剤をつくって服用させ、
   汗が出ないと2、3剤を服用させる」


このような注意は桂枝湯のみならず、どの方剤にも必要です。

酒飲みにも、お猪口酒と一升酒の差があるように、
人体の薬物に対する反応は同じではないからです。

また、病にも強弱があり、薬物も生薬を使用すれば薬効にはバラツキが大きい。
そのため、あらかじめ薬物の量を定めることは難しい。
方剤に記された生薬の分量はあくまで参考です。

桂枝湯について述べると、桂枝は皮、即ち桂皮を用いているが、
最もよく効くのは太さ2〜5cmの桂枝で、5mmくらい以下になるとあまり効はない。

また、太い木の幹の皮も効きが悪い。
そして品種によっても、産地によっても効果は異なる。
だから桂枝三両とあっても、どれを用いるかによって決して同じ効ではない。

二千年も昔に用いていた桂枝と今のが同じかどうか。
有効成分も明確でない現在では、分量を固定することは難しいのです。

従って上記の注意のように、
少し服用させて発汗状態をみて有効量を定めなければならない。

師の経験では、エキス剤の桂枝湯には発汗作用がほとんどなく、無効であるという。

これはおそらく、製造過程で桂枝の有効成分が飛んでしまっているからだと思う。

今のエキス剤の桂枝湯は主役の桂枝の有効成分を含まない桂枝去桂枝湯と同じだと思う。
しかしこれも少し工夫すれば解決はつきます。

桂枝湯エキス剤の薬効を評価する場合は
発汗療法を行なう前に、現在の桂枝湯のエキス剤には太陽病の中風に対して
発汗作用があるかどうか、を証明してもらわないと困る。

桂枝湯に発汗作用がなければ、
瀉下作用のない薬剤で下法を行なっているのと同じで意味はないのです。
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桂枝加芍薬湯
  
[組成]
 桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草
[効能]
 主として腹部内臓、平滑筋の痙攣性疼痛を止める。
[解説]
 主薬は芍薬で、芍薬には平滑筋の鎮痙作用があり、痙攣性の疼痛に用いる。
 ブスコパンを使うようなものです。

 痙攣性の疼痛は、痛みに波があり
 強く痛むときと、痛まないときが交互にくる。

 芍薬の作用を助けるのが甘草で、
 芍薬は蜀椒と反対に少し冷やす作用があり、炎症性の腹痛によい。
 お腹を冷やさないために、桂枝と生姜を加えている。

 芍薬甘草湯に、生姜・桂枝を加えて
 体や内臓を冷やさないようにした方剤が桂枝加芍薬湯、とも考えられる。

 腸内に排出させねばならない物があるときや便秘の時に大黄を加える。
 これが桂枝加大黄湯です。

[適応症]
 腹痛、痛みに波がある痙攣性の疼痛、反覆性臍疝痛。

[類方]

 <小建中湯>
  本方に飴を加えた処方に小建中湯がある。
  反覆性臍疝痛、痙攣性便秘、嘔吐などおこし易い小児に
  平素から与えておくとよい。

 <黄耆建中湯>
  さらに黄耆を加えた処方で、疲れ易い、
  自汗といって汗の出やすい子供は元気がなく、息切れなどもおこす。

  漢方では表が虚しているといって、小建中湯に更に黄耆を加えて用いる。

 <当帰建中湯>
  小建中湯に当帰を加えた方剤で、当帰は足、手を温め、
  生理痛、月経困難、子宮筋腫の下腹痛、腰痛を兼ねる者に用いる。

 <帰耆建中湯>
  化膿性皮膚疾患、カリエス、慢性骨髄炎など難治性の炎症性疾患で
  体力低下を補うのに用いるため、当帰、黄耆を配合した。

芍薬甘草湯、芍薬附子湯などは急性、突発性の痛みに、
桂枝加芍薬湯は主に腹痛に、
建中湯の類は、平素から服用しておく方剤です。
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葛根湯
  
[組成]   葛根・大棗・芍薬・生姜・桂皮・麻黄・甘草

製薬メーカーは、適応症、使用目標、注意事項を下記のように記載している。

[適応症]
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症
感冒、鼻かぜ、熱性炎症の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、
乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。

[使用上の注意]
@次の患者には投与しないこと。
 1.食欲減退、悪心、嘔吐のある人。
 2.発汗傾向の著しい人。
A次の患者には慎重に投与すること。
 病後の衰弱期、著しく体力の衰えている人。

[使用目標]
1.比較的体力のある人。
2.うなじより背筋にかけて凝り、自然に汗の出ない場合。
3.頭痛、発熱、さむけのある感冒などの熱性疾患の初期。
4.顔面及び頭痛の炎症性諸疾患。



しかし製薬メーカーの記載した適応症はよく分からない。
それは全く異なった病態を混ぜ合わせて記載しているからです。

急性熱病(感染症)と肩こり、上半身の神経痛とはお互いに全く異なった病態です。

悪寒・発熱・頭痛・無汗というのは、急性熱病(感染症)の初期で、発汗療法をする時の条件(証)です。
肩こり、上半身の神経痛のときは関係のないことで、これを同じに記載すること自体誤りです。


発熱・悪寒のあるのは、熱病(炎症性疾患)の場合であり
肩凝り・神経痛は、必ずしも熱病の場合だけとは限らない。
全く異なった病態を同じにしてはいけない。

a.自然発汗がない。
  自然発汗がないというのは、熱病に発汗療法を行なう時の条件です。
  夏の暑い時、スポーツや仕事をしたときに自然発汗がある。
  それでも肩こりに葛根湯が使えないことはない。
  単なる肩凝りだけの治療には自然発汗があって使えるのです。

b.比較的体力のあるもの。
  これも体力があるのではなく。病邪が表に実して、
  強く発汗して病邪を追い出さなければならない状態です。
  桂枝湯のような発汗力の弱い方剤では発汗させられないため麻黄剤を使う。
  即ち、体力の実ではなく病邪の実です。

c.悪心、嘔吐のある人。
  『傷寒論』では、悪心・嘔吐のある人に葛根湯を与える場合には、
  半夏を加えて葛根湯加半夏湯を用いる。
  それが証に随って方を処すことではないのだろうか。

 半夏は中枢性にも末梢性の嘔吐も抑制する作用があり、生姜も健胃・止嘔作用がある。
 葛根・麻黄は胃炎や胃潰瘍、胃の弱い人には注意する必要がある。

 陳皮・枳穀などを加えるのもよい。また半夏には鎮咳作用もあり、
 葛根湯加半夏湯をカゼ薬とすれば葛根湯よりその応用範囲が広い。

 それに桔梗・枳実を加えると、更に去痰作用も加わる。頭痛を伴う場合は、
 川弓・白シ・細辛などを加えた方剤がよい。葛根湯も上記の基本処方では、
 項背強を伴う熱病の発汗剤だけで、いかにも適応の範囲が狭い。

d.発汗傾向の著しい人。
  熱病の発汗方剤であるから、太陽病で自汗のある人には用いる方剤ではない。
  
  しかし、熱病でない単なる肩凝りだけの人は、夏汗が出ていても使用する。
  発汗とはあまり関係がない。葛根湯は(麻黄湯も)熱病でない人が服用しても、
  一般に普通の使用量では汗は出ない。

※注意 麻黄は量が多い時、また麻黄に敏感な人は脱汗することがある。
     また、不眠・心悸亢進を訴えることがある。麻黄は新しいものはよくない。

     古い品物がよい。麻黄は先ず水で煮るとアブクが多く出てくる。
     これを取り除いてから他の薬を入れて煮るように、麻黄の入った方剤は指示している。

     新しい麻黄はアブクが多い。古くなるとあまり出なくなる。
     煮てもアブクが出なくなるとその必要はない。

e.葛根湯と桂枝加葛根湯
  太陽病、項背強几几、反汗出悪風者。桂枝加葛根湯主之。
  太陽病、項背強几几、無汗悪風。葛根湯主之。

即ち、桂枝湯を与える病人(太陽の中風)で項背強る者に
葛根を加えて桂枝加葛根湯を与え、
太陽病の傷寒で脉浮緊・無汗・悪風・発熱の症状を呈し、
麻黄湯を与える場合で項背強る者には、麻黄加葛根湯にせず葛根湯をつくっている。

項背強に葛根はよく効く薬物であるが、芍薬も筋肉の拘攣によく効く。
そこで、桂枝湯に麻黄と葛根を加えている。

熱病でなく、肩こりだけなら麻黄は必要でない。
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麻黄湯
  
[組成]   麻黄・桂枝・杏仁・甘草


製薬メーカーの記載した適応症が分かりにくいのは
全く異なった病態を混ぜ合わせて記載しているからです。

以下が製薬メーカーの記載です。

[適応症]
悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症
感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難

[使用上の注意]
次の患者には投与しないこと。
1.発汗作用が著しく、或いは、既に強く発汗し脈の弱い人。
2.著しく体力の衰えている人。

[使用目標]
1.比較的体力のある人。
2.関節痛、および筋肉痛があり、自然に汗の出ない場合。
3.感冒など発熱性疾患の初期。
4.頭痛、喘息、せきなどを伴う場合。



◆麻黄湯の適応症

急性熱病(感染症)と  乳児の鼻閉塞で哺乳困難や喘息とは
お互いに全く異なった病態です。

悪寒・発熱・頭痛・無汗は急性熱病(感染症)の初期で、発汗療法の条件(証)です。
喘息・鼻閉塞のときは関係のないことで、これを同じに記載すること自体誤りです。

また[使用上の注意]に、著しく体力の衰えている人には投与しないこと。
そして[使用目標]に、比較的体力のある人。        をあげている。

麻黄湯は発汗作用が強く、
表(皮膚の近く)にある病邪を発汗によって追い出す強い方剤です。

熱病の初期、発熱し、悪寒が強く、布団や衣類を重ねても悪寒はとれず、
発汗力の弱い方剤、例えば桂枝湯などでは汗が出ないような時、
麻黄と桂枝を併せて発汗作用を強くした方剤です。

脱汗や心悸亢進を起こしやすいため、その使用には注意を要します。
そして脱汗は正気の実している人でも起きることがある。

日本の漢方家は、
実証とは体力の充実した人とし、麻黄湯は実証の方剤、としている。
だが、本方は病邪が表に実しているのであって、体力の(正気の)実ではない。

日本漢方は病邪の虚実を正気の虚実と誤っているとしか考えられない。

桂枝湯は、
発汗作用のある桂枝に止汗作用のある芍薬を配合し、発汗の行き過ぎを防いでいる。

麻黄湯では、桂枝に更に強力な発汗作用のある麻黄を主薬として加え、
しかも芍薬のような止汗作用のある薬物を除いている。

麻黄は、熱病で発熱して悪寒が強く、汗の出ないとき用いると発汗する。
しかし熱病でない時は発汗しない・・・のが普通です。

甘草麻黄湯・越婢加朮湯・大小青竜湯も熱病でない時はむしろ利尿作用がある。
そこで浮腫に用いられる。そして発汗作用はない。
しかし無熱の人でも麻黄剤で脱汗する人もある。

従って、熱病の発汗作用に用いるときは脉浮緊で
悪寒が強く、無汗であることが大切な条件です。

主治の条文に悪風となっている。 が、ほとんどは悪寒です。

それどころか悪寒戦慄で鳥肌が立つこともある。
桂枝湯などで少しぐらい温めても汗は出ない。



麻黄湯、葛根湯は病邪の実に対する方剤であり、
決して体力の実した正気の強いものだけに対する方剤ではなく

そして、桂枝湯は病邪の虚に対する方剤であり、
決して体力の衰えた正気の弱いものだけに対する方剤ではないのです。



生薬は一味の薬物にも数多くの成分があり、いろいろな薬理作用がある。

麻黄湯も決して発汗作用だけではない。
熱病でなく、浮腫や喘息にも用いることができる。

杏仁は利尿作用があり、体内の過剰な水分を除く。
麻黄・甘草に杏仁を配合すると、この利尿作用は強化される。
浮腫の治療に用いられ、骨節疼痛、身疼腰痛を除く。

また麻黄には気管支の痙攣をゆるめ、痙攣性咳嗽に効があり、
気管支喘息、喘鳴にも用いられる。
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参蘇飲

参蘇飲−−−紫蘇葉、前胡、葛根、半夏、桔梗、枳穀、木香、
         陳皮、茯